自営業者やフリーランスにとって、老後資金の準備は会社員以上に重要な課題です。
会社員であれば厚生年金という上乗せ年金がありますが、自営業者の公的年金は原則として国民年金だけです。そのため、自ら老後資金を準備する必要があります。
その代表的な制度が「国民年金基金」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。
どちらも税制上の優遇を受けられる制度ですが、仕組みは大きく異なります。
今回は、それぞれの特徴と、自分に合った使い分けについて考えてみます。
国民年金基金とは何か
国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど第1号被保険者が加入できる公的な年金制度です。
最大の特徴は、将来受け取る年金額が加入時点でほぼ決まっていることです。
毎月一定額を積み立て、その内容に応じた年金を老後に受け取ります。
運用成績によって受取額が変わることは基本的になく、安定した老後収入を確保したい人に向いています。
「年金を自分で増やす制度」と考えると分かりやすいでしょう。
iDeCoとは何か
一方、iDeCoは自分で運用商品を選びながら老後資金を積み立てる制度です。
投資信託や定期預金などから商品を選択し、運用成果によって将来受け取る金額が変わります。
運用が順調なら資産は大きく増える可能性がありますが、市場環境によっては元本を下回ることもあります。
つまり、国民年金基金が「確定給付型」に近い考え方であるのに対し、iDeCoは「自己責任による資産運用」の要素が強い制度です。
共通する大きなメリット
両制度とも非常に大きな税制優遇があります。
毎月支払う掛金は所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減できます。
さらに運用期間中の利益には原則として課税されません。
受け取る際にも一定の税制優遇が設けられています。
現役時代・運用中・受取時という三つの場面で税制メリットがあることは、大きな魅力です。
安定を重視するなら国民年金基金
将来の年金額をある程度確定させたい人には国民年金基金が向いています。
自営業では収入が不安定になることもあります。
そのため、老後には毎月決まった収入を受け取れる安心感は大きな価値があります。
市場環境に左右されず、堅実な老後設計を考える人には適した制度といえるでしょう。
資産を増やしたいならiDeCo
長期間運用できる人や、資産形成を積極的に行いたい人にはiDeCoが魅力的です。
20年以上の長期運用であれば、世界株式などへの分散投資によって資産を大きく増やせる可能性があります。
一時的な価格変動に惑わされず、長期・積立・分散を基本に運用することが成功のポイントになります。
運用リスクを理解したうえで活用すれば、老後資金を効率よく準備できる制度です。
両方を組み合わせるという考え方
実は、国民年金基金とiDeCoは、一定の範囲内で併用することもできます。
安定収入を確保する部分は国民年金基金で準備し、資産を増やす部分はiDeCoで運用するという組み合わせも有効です。
これは資産運用でいう「分散投資」と同じ考え方です。
一つの制度だけに頼るよりも、それぞれの長所を生かすことができます。
制度選びより大切なのは早く始めること
どちらの制度にも共通している最大の味方は時間です。
30歳から始める人と50歳から始める人では、積立期間が大きく異なります。
長期間積み立てるほど、税制優遇も複利効果も大きくなります。
制度の違いを細かく比較することも大切ですが、それ以上に「早く始めること」が老後資産形成では重要になります。
結論
国民年金基金とiDeCoは、どちらが優れているという制度ではありません。それぞれ役割が異なります。
安定した年金収入を重視するなら国民年金基金、長期運用による資産成長を目指すならiDeCoが向いています。そして、両制度を組み合わせることで、安定性と成長性の両方を取り入れた資産形成も可能です。
人生100年時代では、自営業者は会社員以上に自ら老後資金を準備する必要があります。制度の違いを理解し、自分の働き方やリスク許容度に合った活用方法を選ぶことが、将来の安心につながるでしょう。
参考
全国国民年金基金「国民年金基金制度の概要」
国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の概要」
厚生労働省「公的年金制度の仕組み」