国債の想定金利とは何か 実際の市場金利が決まる前に利払い費を予算へ入れられる理由編

政策

国の予算には、国債の利払い費が計上されています。

ところが、ここには一つ疑問があります。

2027年度に発行する国債の実際の金利は、国債を発行するときの市場環境によって決まります。

2026年の夏に2027年度予算をつくっている段階では、2027年度の市場金利が何パーセントになるのか正確には分かりません。

それでも政府は、翌年度に必要になる国債費をあらかじめ予算へ計上しなければなりません。

そこで使われるのが想定金利です。

将来の金利を完全に予測するのではなく、一定の金利を仮定して、国債の利払いにどれだけのお金が必要になるのかを見積もります。

金利上昇局面では、この想定金利が国の予算を左右する重要な数字になります。

想定金利とは何か

想定金利とは、国債費を予算に計上するために、政府があらかじめ置く金利の前提です。

国債には利子があります。

したがって翌年度の予算をつくるには、

どれだけの国債が残っているのか

どれだけの国債が満期を迎えるのか

どれだけ借り換えるのか

どれだけ新しい国債を発行するのか

それらにどの程度の金利がかかるのか

を考えなければなりません。

しかし将来の市場金利は確定していません。

そこで一定の金利水準を仮定して、必要になる利払い費を計算します。

この計算上の前提となる金利が想定金利です。

なぜ実際の金利が分からないのに予算をつくれるのか

国の予算編成には時間がかかります。

2027年度予算であれば、各省庁が2026年夏に概算要求を提出し、その後に財務省との査定や政府内の調整が進みます。

年末には政府予算案をまとめ、国会で審議します。

しかし実際に2027年度が始まるのは2027年4月です。

その後も1年間にわたって国債が発行されます。

つまり予算をつくる時点と、実際に国債を発行する時点には時間差があります。

2027年春や夏、2028年初めの市場金利を2026年夏に正確に知ることはできません。

だからといって、

金利が分からないので利払い費を予算に入れません

というわけにはいきません。

国債の利子は支払う必要があるからです。

そこで一定の金利を仮定して予算を組みます。

市場金利と想定金利は違う

想定金利と市場金利は同じものではありません。

市場金利は、実際の国債市場で形成される金利です。

国債の需要と供給だけでなく、

日本銀行の金融政策

物価上昇率

景気

賃金

海外の金利

政府の財政運営

投資家の見通し

など、さまざまな要因によって変動します。

例えば新発10年物国債の利回りが2.9パーセントになったとすれば、それはその時点の市場で形成された金利です。

一方、想定金利は予算上の計算に使う前提です。

実際の市場金利そのものではありません。

想定金利は金利予想そのものではない

想定金利を見ると、

政府は来年度の金利がこの水準になると予想している

と考えたくなるかもしれません。

しかし、単純な金利予想として見るのは適切ではありません。

予算には、必要な支出を不足なく計上する必要があります。

もし楽観的に低すぎる金利を置き、実際の利払い費が予算を大幅に上回れば、予算管理が難しくなります。

そのため国債費を見積もる際には、実際に必要となる金額を確保できるよう一定の余裕も考慮する必要があります。

想定金利は、

来年度の市場金利を当てるための数字

というより、

将来の金利がまだ分からない段階で国債費を計算するための予算上の前提

と理解する方が分かりやすいでしょう。

国債費はどう見積もるのか

国債費を見積もるときには、単純に政府債務全体へ想定金利を掛けるわけではありません。

すでに発行されている国債については、発行時に決められた条件があります。

例えば過去に低い利率で発行した固定利付国債について、市場金利が上昇したからといって、その利率が突然変わるわけではありません。

一方、翌年度には満期を迎える国債があります。

それを借り換える場合、新しく発行する国債にはその時点の金利環境が影響します。

さらに財政赤字を賄うため、新規国債を発行する場合もあります。

つまり、

既存国債の利払い

借り換える国債の利払い

新規発行する国債の利払い

などを考えながら国債費を見積もります。

その中で将来の金利が必要になる部分について、想定金利という前提を置くわけです。

金利上昇局面では想定金利も重要になる

超低金利が長く続いているときには、国債の利払い費を比較的低く抑えることができます。

しかし市場金利が上昇すると、予算編成にも影響が出ます。

低い金利を前提に国債費を見積もることが難しくなるからです。

想定金利を引き上げれば、予算上の利払い費も大きくなります。

その結果、国債費全体の要求額が増えます。

2027年度の財務省所管の概算要求では、国債費が36兆6386億円となり、2026年度当初予算から5兆3628億円増えています。

金利のある世界への変化は、国の予算にも徐々に表れてくることになります。

金利が高くなると予算の余裕が減る

想定金利の上昇によって利払い費の予算を増やせば、その分だけ一般会計の歳出も大きくなります。

例えば国債費が3兆円増えたとします。

その3兆円は、

子育て支援

教育

科学技術

防衛

公共事業

社会保障

などに直接使うお金ではありません。

過去に発行した国債などに関係して必要になる支出です。

税収が同じままで国債費だけが増えれば、政府は他の歳出を見直すか、別の財源を確保する必要があります。

金利上昇は金融市場だけの問題ではありません。

政府が政策に使えるお金にも影響するのです。

想定より市場金利が低ければどうなるのか

では、実際の市場金利が想定金利より低くなったらどうなるのでしょうか。

想定より低い金利で国債を発行できれば、実際に必要となる利払い費は予算上の見積もりより少なくなる可能性があります。

例えば予算では高めの金利を前提に1000億円の利払い費を見込んでいたとします。

しかし実際には低い金利で国債を発行でき、800億円しか必要なかったとします。

単純化すれば200億円分の差が生じます。

つまり想定金利は、実際の支払額を確定する数字ではありません。

あくまで予算を組むための見積もりです。

実際の金利によって最終的な支出は変わります。

想定より市場金利が上がったらどうなるのか

反対に、市場金利が想定より高くなることもあります。

例えば想定では2パーセント程度の金利を前提としていたのに、実際の国債発行時には3パーセント程度まで上昇していたとします。

その場合、新しく発行する国債や借換債の利払い負担が想定より大きくなる可能性があります。

ただし金利が上昇した瞬間に、政府債務全体の利払い費が一斉に増えるわけではありません。

既発国債には過去の発行条件が残っているからです。

新規発行や借り換えを通じて、想定以上の金利が徐々に政府の利払い費へ反映されます。

金利上昇が長期間続くほど影響は大きくなります。

金利上昇の影響は何年も続く

国債の特徴は、発行した後も長期間にわたって財政へ影響することです。

例えば10年国債を高い金利で発行すれば、その国債については長期間にわたって利子を支払うことになります。

つまり、ある年度の金利上昇はその年度だけの問題ではありません。

将来年度の国債費にも影響します。

さらに毎年新しい国債を発行し、古い国債を借り換えていけば、高い金利の国債が徐々に積み上がります。

そのため財政運営では、

今年の国債費はいくらか

だけではなく、

数年後の国債費がどこまで増える可能性があるか

も考える必要があります。

長期金利が注目される理由

2027年度概算要求が締め切られた8月31日には、新発10年物国債の利回りが一時2.950パーセントまで上昇しました。

約30年ぶりの高い水準です。

長期金利は政府の財政だけで決まるものではありません。

物価や日本銀行の金融政策、景気、海外金利などさまざまな要因が影響します。

それでも長期金利が上昇すれば、政府の資金調達環境も変化します。

新しい国債を発行するときの金利が高くなる可能性があるからです。

そのため予算編成でも、

将来どの程度の金利を前提に国債費を見積もるのか

がこれまで以上に重要になります。

財政拡張と想定金利はつながっている

2027年度予算では、成長投資や危機管理投資を積極的に行う方針が示されています。

こうした支出によって経済成長率が高まり、税収が増えれば、財政にもプラスになる可能性があります。

一方、歳出増の多くを国債発行で賄えば、政府債務が増えます。

さらに市場が財政拡張を警戒して国債金利が上昇すれば、将来の利払い費も増える可能性があります。

つまり、

歳出を増やす

国債発行が増える

金利が上昇する

利払い費が増える

という経路にも注意する必要があります。

だからこそ政府は積極財政を進める一方で、市場の信認を維持する必要があります。

想定金利を見ると国債費の前提が分かる

予算を見るときには、国債費の金額だけを見るのではなく、その計算の前提にも注目すると理解が深まります。

国債費が前年より大幅に増えた場合、

国債残高が増えたからなのか

借り換える国債が多いからなのか

想定金利が上がったからなのか

といった要因があります。

特に金利上昇局面では、想定金利が変わるだけでも将来の利払い費の見積額が変わります。

国債費36兆円という大きな数字の裏側には、政府がどのような金利環境を前提に予算を組んでいるのかという問題があるのです。

結論

国債の想定金利とは、将来の市場金利がまだ確定していない段階で、政府が国債の利払い費を予算へ計上するために置く金利の前提です。

国の予算は年度が始まる前につくられます。

一方、国債は年度を通じて発行されるため、実際に何パーセントの金利で資金調達できるのかを予算編成時点で正確に知ることはできません。

そこで一定の金利を想定し、既存国債、新規発行する国債、借り換える国債などを考慮しながら国債費を見積もります。

想定金利は、政府が市場金利を正確に予言するための数字ではありません。

将来の金利が分からなくても、必要な利払い費をあらかじめ予算へ組み込むための計算上の前提です。

実際の市場金利が想定より低ければ、利払い費が見積もりより少なくなる可能性があります。

反対に想定以上の金利上昇が続けば、新規発行や借り換えを通じて政府の利払い負担は徐々に増えていきます。

政府債務が巨額になっている日本では、わずかな金利差でも長期間積み重なると大きな財政負担になります。

金利のある世界では、予算を見るときに歳出総額や国債発行額だけを見るのでは不十分です。

政府がどの程度の金利を前提として将来の利払い費を見積もっているのか。

想定金利は、その財政リスクを読み解くための重要な数字なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求、143兆円前後 「天井」廃止で過去最大

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求最大「143兆円」、市場警戒解かず

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 上限撤廃、強まる官邸裁量

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