債券価格と金利はなぜ逆に動くのか 金利が上がると保有している国債の価格が下がる仕組み編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

債券投資を理解するとき、最も重要な基本原則の一つが「金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がる」という関係です。

初めて聞くと不思議に感じるかもしれません。

金利が上がるなら、国債の価値も上がりそうに思えるからです。

しかし、すでに発行されている国債の利率は変わりません。

市場金利が上昇すると、より高い利子を受け取れる新しい国債が発行されるため、以前の低い金利の国債は魅力が低下します。

そこで古い国債を売るためには価格を下げる必要があります。

この仕組みが分かると、なぜ金利上昇局面で長期債の価格が下落するのか、そして個人向け国債の中途換金制度がなぜ特殊なのかも理解しやすくなります。

債券価格とは何か

債券とは、国や企業などがお金を借りるために発行する有価証券です。

国が発行すれば国債、企業が発行すれば社債になります。

例えば国が額面100万円、年2パーセント、満期10年という国債を発行したとします。

投資家は国にお金を貸し、その対価として利子を受け取ります。

満期まで保有すれば、原則として額面100万円が償還されます。

ここで重要なのは「額面」と「市場価格」は同じとは限らないことです。

額面は満期に返済される基準となる金額です。

一方、市場価格は、その債券を途中で売買するときの値段です。

国債は発行されたあとも市場で取引されるため、その価格は日々変動します。

既発債と新発債は何が違うのか

すでに発行され、市場で取引されている債券を既発債といいます。

これに対して、新しく発行される債券を新発債といいます。

この違いが、金利と債券価格の関係を理解するポイントです。

例えば1年前に年1パーセントの固定金利国債が発行されたとします。

額面100万円なら、単純化すると1年間に受け取る利子は1万円です。

この国債をA国債とします。

その後、市場金利が上昇して、新しく年3パーセントの国債が発行されたとします。

こちらをB国債とします。

B国債を100万円購入すれば、単純化すると年間3万円の利子を受け取れます。

A国債は年間1万円です。

同じ100万円を払うのであれば、多くの人はB国債を選ぶでしょう。

そこでA国債を市場で売却するには、価格を下げる必要が出てきます。

金利が上がると古い債券の魅力が低下する

例えば額面100万円で年1万円の利子を受け取れる既発債があるとします。

市場では新しく年3万円の利子を受け取れる国債が発行されています。

既発債を100万円で買う人はなかなか現れません。

そこで既発債の市場価格が下がります。

例えば95万円、90万円というように価格が下がれば、購入者にとって魅力が高まります。

なぜなら、安い価格で購入しても満期には額面で償還されるからです。

利子だけでなく、購入価格と償還額との差も収益になります。

こうして既発債の価格が下落し、新しく発行される債券との利回りの差が縮まっていきます。

これが「金利上昇で債券価格が下落する」基本的な仕組みです。

金利が下がると反対のことが起こる

市場金利が低下した場合は、反対の現象が起こります。

例えば年3パーセントの固定金利国債を持っているとします。

その後、市場金利が低下し、新しく発行される国債の金利が年1パーセントになったとします。

新しい国債からは100万円につき年間1万円しか利子を受け取れません。

一方、以前発行された国債なら年間3万円を受け取れます。

当然、年3パーセントの既発債の方が魅力的になります。

そのため「100万円より高くても買いたい」という投資家が現れます。

結果として既発債の市場価格は上昇します。

つまり、

金利上昇なら債券価格下落

金利低下なら債券価格上昇

という逆方向の関係が生まれるのです。

債券価格は利回りを調整する役割を持つ

債券市場では、同程度の信用力や残存期間を持つ債券の利回りが大きく違ったままにはなりにくいという特徴があります。

高い利回りの債券に買いが集まり、低い利回りの債券は売られるからです。

その調整役になるのが債券価格です。

すでに発行された固定金利の債券は、表面上の利率を変更できません。

年1パーセントで発行された国債を途中から年3パーセントに変更することはできません。

そこで価格の方が動きます。

価格が下がれば、同じ利子を受け取るとしても購入者から見た利回りは上昇します。

価格が上がれば利回りは低下します。

債券市場では価格が動くことで、市場金利とのバランスが取られているのです。

満期まで保有する場合と途中売却では意味が違う

ここで重要なのが、債券を満期まで持つのか、途中で売却するのかという違いです。

例えば額面100万円の国債を購入し、その後市場価格が90万円まで下落したとします。

価格だけを見ると10万円損したように見えます。

しかし満期まで保有し、発行体が約束通り償還すれば額面100万円が返ってきます。

途中の市場価格が90万円になっていても、その時点で売らなければ価格下落による損失が確定するわけではありません。

一方、途中で資金が必要になり90万円で売却すれば、価格下落による損失が実現します。

そのため一般的な債券投資では、購入時に満期まで保有できる資金なのかを確認することが重要になります。

長期債ほど金利変動の影響が大きい

債券価格はすべて同じ幅で動くわけではありません。

一般的には、満期までの期間が長い債券ほど金利変動による価格変化が大きくなります。

例えば残存期間が1年しかない債券と、残存期間が20年ある債券を比べてみます。

残存期間1年の債券であれば、低い金利を受け取る期間はあと1年だけです。

間もなく満期になり、元本が返ってきます。

そのため市場金利が上昇しても価格への影響は比較的小さくなります。

一方、残存期間20年の債券では、現在の低い金利が長期間続きます。

市場ではもっと高い金利の商品が買えるのに、低い金利の債券を20年間保有することになります。

そのため市場価格を大きく下げなければ、新しい高金利の債券と競争できません。

これが長期債ほど金利変動に敏感になる理由です。

残存期間だけでなく利率も影響する

債券価格の動きには、満期までの期間だけでなく、もともとの利率も関係します。

一般的には、表面利率が低い債券ほど市場金利の変化による価格変動が大きくなりやすくなります。

受け取る利子が少ないため、投資家が得る価値のうち満期時の元本償還が占める割合が大きくなるからです。

その元本を受け取る時期が遠いほど、金利変化の影響を強く受けます。

このように債券価格は、単に「国債だから安定している」と考えるだけでは理解できません。

信用リスクが小さくても、金利変動によって市場価格は大きく動くことがあります。

国債なら価格が下がらないわけではない

国債は一般的に安全性の高い金融商品とされています。

しかし、この安全性と価格変動リスクは別の問題です。

国債の安全性という場合、多くは国が元本や利子を約束通り支払う信用力を意味します。

一方、市場で取引される国債の価格は毎日動いています。

日本国債であっても、市場金利が上昇すれば価格は下落します。

したがって、

国債は安全だから途中で売っても損をしない

という理解は正しくありません。

一般的な市場性国債を途中で売却すれば、購入価格を下回ることがあります。

個人向け国債はこのルールに例外的な仕組みを持つ

ここで個人向け国債の特徴が見えてきます。

個人向け国債も国債ですが、一般的な市場性国債とは中途換金の仕組みが異なります。

個人向け国債では、発行から1年経過すれば原則として国による中途換金制度を利用できます。

そのとき市場で債券を売却するわけではありません。

そのため市場金利が上昇し、一般的な国債価格が下落していたとしても、その市場価格で売却する必要がありません。

一定の中途換金調整額は差し引かれますが、市場価格の下落によって額面100万円の国債を90万円で売らなければならないという仕組みではありません。

この点が、個人向け国債の大きな特徴です。

金利上昇局面では債券の種類が重要になる

金利が上昇しているときには、「債券ならどれでも同じ」と考えることはできません。

長期の固定金利債を購入すると、その後さらに金利が上昇した場合、保有している債券の市場価格が下落する可能性があります。

満期まで保有できれば途中の価格変動を気にする必要性は小さくなります。

しかし途中売却する可能性がある場合には、価格下落が問題になります。

一方、個人向け国債には独自の中途換金制度があります。

さらに変動10年なら半年ごとに適用利率も見直されます。

同じ国債でも商品設計によって金利上昇への強さが大きく違うのです。

結論

債券価格と金利が逆に動くのは、すでに発行された固定金利の債券と、新しく発行される債券との利回りを市場価格によって調整するためです。

市場金利が上昇すると、新しく発行される債券の利率が高くなります。

すると以前の低い金利の債券は魅力が低下するため、価格を下げなければ買い手が現れにくくなります。

反対に市場金利が低下すると、以前発行された高い金利の債券の魅力が高まり、市場価格は上昇します。

そして一般的には、満期までの期間が長い債券ほど金利変動による価格への影響が大きくなります。

「国債は安全」ということと「国債価格は下がらない」ということは同じではありません。

国の信用力が高くても、市場金利が動けば国債価格は変動します。

だからこそ債券投資では、表面利率だけではなく、満期までの期間と途中売却の可能性を考えることが重要です。

この基本原則を理解すると、なぜ個人向け国債に市場価格で売却しなくてよい特別な中途換金制度が設けられているのか、そのメリットも理解しやすくなります。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 <ステップアップ>「変動10年」金利上昇に強く 中途売却でも元本確保

タイトルとURLをコピーしました