個人向け国債の金利が大きく上昇しています。
2026年9月募集分では、固定5年の金利が年2.24%となっています。大手銀行の一般的な5年物定期預金の金利を大きく上回る水準です。
長く超低金利が続いてきた日本では、元本割れを避けながら2%を超える金利を得られる金融商品は珍しい存在でした。
では、なぜ個人向け国債の固定5年はこれほど金利が高くなっているのでしょうか。
ポイントになるのが、日銀の利上げと市場で取引される5年物国債の利回りです。
個人向け国債とは何か
個人向け国債とは、国が個人投資家向けに発行する国債です。
国にお金を貸し、その対価として利子を受け取る金融商品と考えると分かりやすいでしょう。
個人向け国債には、固定3年、固定5年、変動10年の3種類があります。
固定3年と固定5年は、購入した時点の金利が満期まで変わりません。
一方、変動10年は半年ごとに適用金利が見直されます。
さらに個人向け国債には年0.05%の最低金利が設定されています。
発行から1年が経過すれば原則として中途換金することもできます。ただし、中途換金すると直前2回分の利子相当額が差し引かれる仕組みになっています。
固定5年の金利はどうやって決まるのか
固定5年の金利は、政府が自由に決めているわけではありません。
市場で取引されている5年物国債の利回りをもとに決まります。
基本的には、市場実勢をもとに計算した基準金利から0.05%を差し引いた水準が個人向け国債の固定5年の適用金利になります。
つまり、
5年物国債の利回りが上昇する
固定5年の個人向け国債の金利も上昇する
という関係があります。
2026年9月8日の新発5年物国債の利回りは一時2.240%まで上昇しました。
こうした市場金利の上昇が、個人向け国債の高い金利につながっています。
5年物国債の金利はなぜ上昇するのか
ここで重要になるのが日銀の金融政策です。
5年程度の国債利回りは、将来の政策金利がどの程度になると市場が予想しているかの影響を強く受けます。
例えば、現在の政策金利が1%だったとしても、市場参加者が、
今後1.5%になる
さらに1.75%になる
最終的には2%になる
と予想していれば、5年間ずっと現在の低い金利が続くとは考えません。
将来の高い政策金利を織り込む形で、5年物国債の利回りも上昇していきます。
そのため、日銀が実際に利上げをする前から国債市場の金利が上昇することがあります。
日銀の利上げゴールが重要になる
固定5年の個人向け国債を考えるうえでは、日銀が最終的にどこまで政策金利を引き上げるのかが重要になります。
市場では、利上げの最終到達点として1.75%から2%程度を想定する見方があります。
一方、さらに高い2.5%程度まで上昇する可能性を想定する見方もあります。
もし日銀の利上げが今後も続くのであれば、5年物国債の利回りもさらに上昇する可能性があります。
その結果、将来募集される個人向け国債の固定5年の金利が現在の2.24%より高くなる可能性もあります。
これが、今すぐ固定5年を買うべきか、それとも待つべきかという問題につながります。
国債入札が低調だと金利が上がる理由
5年物国債の金利を見るときには、国債入札にも注目する必要があります。
国は国債を発行するとき、金融機関などの投資家から購入希望を募ります。
投資家が、
今の金利では買いたくない
もっと金利が高くならないと魅力がない
と考えれば、国債への需要は弱くなります。
国債は価格が下がると利回りが上昇する関係にあります。
そのため入札が低調になると、国債価格が下落し、利回りが上昇しやすくなります。
2026年9月8日に実施された5年物国債の入札では、応札倍率が前回の4.15倍から3.42倍へ低下しました。
日銀の利上げがさらに進むのではないかという見方があり、現在の価格で積極的に5年債を購入する投資家が少なかったことが背景にあります。
なぜ銀行の定期預金より金利が高いのか
2026年9月時点では、個人向け国債の固定5年の金利は2.24%です。
一方、大手銀行の一般的な5年物定期預金では1%程度の例があります。
なぜこれほど差があるのでしょうか。
理由の一つは、金利が決まる仕組みが違うからです。
個人向け国債の固定5年は、市場の5年物国債利回りを直接反映する仕組みになっています。
市場は将来の日銀の利上げを先回りして織り込みます。
一方、銀行の預金金利は銀行自身が決めます。
市場金利が上昇したからといって、同じ幅、同じ速度で預金金利が上昇するとは限りません。
この違いによって、金利上昇局面では個人向け国債の金利が銀行預金より高くなることがあります。
今買うか待つかという問題
固定5年には大きな特徴があります。
購入時の金利が5年間固定されることです。
例えば年2.24%で購入すれば、その後市場金利が低下しても満期まで同じ金利を受け取れます。
これはメリットです。
しかし反対のケースもあります。
購入した半年後に新しい固定5年の金利が2.5%になったとしても、すでに購入した国債の金利は2.24%のままです。
金利上昇局面では、
今の高い金利を確保するか
さらに高くなる可能性を考えて待つか
という判断が必要になります。
ただし、金利のピークを正確に当てることは簡単ではありません。
ピークを待っている間にも、本来受け取れたはずの利子を失うからです。
変動10年という選択肢もある
金利上昇を期待するのであれば、変動10年という考え方もあります。
変動10年は半年ごとに金利が見直されます。
そのため市場金利が上昇すれば、購入後でも受取金利が上昇する可能性があります。
2026年9月募集分では、変動10年の金利は1.95%で、固定5年の2.24%より低くなっています。
固定5年は現在の高い金利を固定できることがメリットです。
変動10年は今後の金利上昇をある程度取り込めることがメリットです。
どちらが有利になるかは、今後の日銀の金融政策や市場金利によって変わります。
金利上昇時代は日銀を見ることが重要になる
長い超低金利時代には、個人が日銀の政策金利を細かく意識する必要性はそれほど高くありませんでした。
しかし金利が動く時代になると状況は変わります。
日銀がどこまで利上げするのか。
市場は次の利上げをいつと予想しているのか。
5年物国債の利回りはいくらなのか。
こうした情報が、個人向け国債や定期預金の金利にもつながってきます。
個人の資産運用でも、株価だけではなく金利を見る重要性が高まっているのです。
結論
個人向け国債の固定5年の金利が2%を超える水準まで上昇している背景には、日銀の利上げと、それを先回りして織り込む国債市場があります。
固定5年の金利は、市場の5年物国債利回りをもとに決まります。
そして5年物国債の利回りは、日銀の政策金利が将来どこまで上昇するのかという市場予想の影響を強く受けます。
そのため、日銀の利上げが続くと予想されれば、実際の利上げより先に5年債利回りが上昇し、個人向け国債の金利も上がる可能性があります。
ただし、金利のピークを正確に予測することはできません。
現在の高い金利を固定するのか、さらなる上昇を待つのか、それとも変動10年で金利上昇を取り込むのか。
金利のある世界では、こうした選択が個人の資産形成でも重要になります。
そして、その判断材料として欠かせないのが、日銀の金融政策と国債市場の金利なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊「ポジション 固定5年金利、いつピーク」
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊「5年債入札『やや低調』」