人材不足が深刻化する中、多くの中小企業が「求人を出しても応募が来ない」という悩みを抱えています。
一方で、同じ地域、同じ業種でも人材を確保し続けている企業があります。
その違いは、必ずしも給与水準だけではありません。
近年は、福利厚生や働きやすさを重視して就職先を選ぶ人が増えています。
これからの採用競争では、「どれだけ給与を上げられるか」ではなく、「どれだけ安心して働ける会社か」が重要な評価基準になっていくでしょう。
求職者が会社選びで重視するものが変わってきた
以前は、給与や賞与の額が就職先を選ぶ最大の要素でした。
しかし現在では、働く価値観が大きく変化しています。
仕事と家庭を両立できること。
有給休暇を取得しやすいこと。
健康を大切にできること。
子育てや介護への理解があること。
長く安心して働けること。
こうした要素が、求職者にとって重要な判断材料になっています。
特に若い世代は、働きやすい職場環境を重視する傾向が強まっています。
中小企業だからこそできる福利厚生がある
福利厚生は、大企業だけのものではありません。
むしろ中小企業だからこそ、柔軟で実情に合った制度を導入できます。
例えば、
食事補助制度の充実
資格取得費用の支援
誕生日休暇や記念日休暇
時間単位で取得できる休暇制度
健康診断や人間ドックの補助
育児や介護との両立支援
社員同士が相談しやすい職場づくり
必ずしも多額の費用をかける必要はありません。
社員一人ひとりを大切にする姿勢が伝わる制度こそ、大きな魅力になります。
福利厚生は採用より定着に効果がある
福利厚生の本当の価値は、採用だけではありません。
社員が長く働き続ける環境を整えることにあります。
一人採用するためには、多くの広告費や教育費が必要になります。
しかし、一人辞めることによる損失は、それ以上に大きなものです。
経験や技術、人間関係、顧客との信頼まで失われる可能性があります。
福利厚生を充実させることで離職率が下がれば、結果として採用コストも抑えられます。
定着率の向上は、企業の利益改善にも直結します。
福利厚生は企業ブランドをつくる
インターネットやSNSの普及により、会社の評判はすぐに広がる時代になりました。
「休暇が取りやすい会社」
「子育てに理解がある会社」
「社員を大切にする会社」
こうした評価は採用活動にも大きな影響を与えます。
福利厚生は社内制度であると同時に、企業ブランドを形成する重要な要素でもあります。
求職者から「この会社で働いてみたい」と思われる企業は、人への投資を惜しまない企業なのです。
税理士ができる採用戦略への支援
税理士は、福利厚生を単なる経費ではなく、経営戦略として経営者へ提案できます。
例えば、
福利厚生費の適正な活用方法
税制上有利な制度設計
食事補助制度や健康支援制度の活用
採用費と離職コストの比較分析
人的資本への投資効果の見える化
毎月の試算表を見ながら、採用費や人件費、福利厚生費の推移を確認することで、経営者へ具体的な改善提案ができます。
税理士は数字を説明するだけでなく、数字を経営に生かす伴走者として大きな役割を果たすことができます。
結論
人材不足が続く時代には、「採用できる会社」よりも「選ばれる会社」が成長します。
そのためには、給与だけではなく、安心して長く働ける環境を整えることが欠かせません。
福利厚生はコストではなく、人材への投資であり、企業の未来への投資でもあります。
中小企業だからこそ、一人ひとりの社員に寄り添った柔軟な制度を整えることができます。
税理士もまた、福利厚生や税制を踏まえた経営支援を通じて、顧問先が「選ばれる会社」になるためのパートナーとして、その役割をますます発揮していくことが期待されるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年6月28日 朝刊
国家公務員に「無給休暇」 理由問わず、時間単位可能 私生活と両立で離職防ぐ