一般会計とは何か 143兆円という数字に国のすべてのお金が入っているわけではない理由編

政策

2027年度予算の概算要求総額は143兆円前後と報じられました。

ここで注意したいのが、この143兆円は一般会計の概算要求額だということです。

国には一般会計だけでなく、特定の事業や資金の流れを管理する特別会計もあります。

例えば年金、国債、外国為替など、国には非常に大きなお金の流れがあります。

そのすべてが一般会計143兆円の中に単純に入っているわけではありません。

ニュースでは一般会計の予算規模が国の予算として大きく報じられるため、一般会計が国のお金のすべてのように見えることがあります。

しかし国の財政を理解するためには、一般会計と特別会計を分けて考える必要があります。

今回は、一般会計とは何なのか、143兆円という数字をどのように見ればよいのかを整理します。

一般会計とは何か

一般会計とは、国の基本的な行政活動に必要なお金をまとめて管理する会計です。

国はさまざまな行政サービスを行っています。

例えば、

社会保障

防衛

教育

科学技術

公共事業

地方自治体への財政移転

国債の元利払い

などです。

こうした国の基本的な政策に必要なお金を管理する中心的な会計が一般会計です。

私たちがニュースで、

国の予算が過去最大になった

社会保障費が増えた

防衛費が増えた

国債費が増えた

と聞く場合、多くは一般会計を中心にした話です。

一般会計には歳入と歳出がある

一般会計には、入ってくるお金と出ていくお金があります。

入ってくるお金が歳入です。

出ていくお金が歳出です。

家計に例えるなら、

給料などの収入が歳入

生活費などの支出が歳出

に相当します。

ただし国の財政は家計よりはるかに複雑です。

一般会計の歳入には税収だけでなく、税外収入や国債発行によって調達するお金も含まれます。

歳出には社会保障などの政策経費だけでなく、過去に発行した国債に関係する支出も含まれます。

この歳入と歳出を組み合わせて、国の基本的な予算がつくられています。

歳入の中心は税金

一般会計の歳入で中心になるのが税収です。

代表的なものには、

所得税

法人税

消費税

があります。

所得税は個人の所得などに対して課されます。

法人税は企業の所得に対して課されます。

消費税は商品の販売やサービスの提供などに対して課されます。

このほかにも相続税、酒税、たばこ税、関税など、さまざまな税があります。

景気がよくなって企業利益や賃金が増えれば、税収が増えることがあります。

物価上昇によって名目の消費額が増えれば、消費税収などが増えることもあります。

税収は国が政策を実施するための重要な財源です。

税収だけで足りなければ国債を発行する

問題は、一般会計の歳出を税収だけで賄えるとは限らないことです。

例えば国が年間140兆円を支出するとしても、税収などの収入が140兆円あるとは限りません。

不足する場合があります。

そこで政府が国債を発行して資金を調達します。

国債は、政府による借金と考えると分かりやすいでしょう。

金融機関や機関投資家、個人などが国債を購入し、政府に資金を提供します。

政府はその資金を歳出の財源として使います。

その代わり、将来は国債を償還し、利子を支払う必要があります。

一般会計を見るときには、

歳出はいくらか

税収はいくらか

国債をいくら発行するのか

をセットで見ることが重要です。

歳出では社会保障が大きい

一般会計の歳出で大きな割合を占めるのが社会保障関係費です。

年金、医療、介護、子育て支援などには巨額の国費が使われます。

日本では高齢化が進んでいるため、社会保障費は財政を考えるうえで特に重要です。

高齢者が増えれば、年金や医療、介護などの支出が増えやすくなります。

一方、社会保障は国民生活に直接関係するため、簡単に大幅削減できる支出ではありません。

一般会計の歳出を抑えようとしても、大きな部分を占める社会保障費が増え続ければ、全体の歳出も膨らみやすくなります。

国債費も一般会計から支出する

もう一つ重要なのが国債費です。

国債を発行して資金を調達すると、将来は元本を返し、利子を支払わなければなりません。

この国債に関係する支出も一般会計に計上されます。

2027年度の財務省所管の概算要求では、国債費が36兆6386億円に達しています。

国債費には、国債の償還に充てるお金や利払い費などが含まれます。

金利が上昇すると、国債の利払い費が増えていく可能性があります。

すると一般会計の中で国債費が占める割合も大きくなります。

社会保障や防衛だけでなく、過去の借金に関係する支出も一般会計の重要な部分なのです。

特別会計とは何か

国には一般会計とは別に特別会計があります。

特別会計とは、特定の事業や特定の資金について、一般会計とは区分して管理するための会計です。

国のすべてのお金を一つの会計に入れてしまうと、

どの事業にいくら入ってきたのか

どの事業にいくら使ったのか

が分かりにくくなる場合があります。

そこで特定の事業について、お金の流れを別に管理します。

これが特別会計です。

一般会計が国の基本的な財布だとすれば、特別会計は特定の目的ごとに分けた財布と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ特別会計が必要なのか

例えば年金を考えてみます。

年金には保険料収入があります。

現役世代などが社会保険料を支払い、そのお金が年金給付などに使われます。

一般的な税金だけで運営されているわけではありません。

このように特定の収入と特定の支出が結びついている事業については、一般会計とは分けて管理した方がお金の流れを把握しやすくなります。

国債についても巨額の借り換えなどがあります。

外国為替についても、政府が保有する外貨資産や為替介入など独特の資金の流れがあります。

こうしたものを一般会計とは別に管理することで、それぞれの事業の財政状況を把握しやすくしています。

一般会計と特別会計は完全に別ではない

ただし、一般会計と特別会計は完全に切り離されているわけではありません。

一般会計から特別会計へお金を繰り入れることがあります。

逆に特別会計から一般会計へお金が移ることもあります。

例えば社会保障では、保険料だけですべての給付を賄っているわけではありません。

税金を財源とする国庫負担もあります。

そのため一般会計から社会保障関係の特別会計などへ資金が移ります。

このような会計間の資金移動があるため、一般会計と特別会計の金額を単純に足し算すると、同じお金を二重に数える場合があります。

国の財政全体を見るときに注意が必要な理由です。

特別会計の金額を単純に足せない理由

例えば一般会計から10兆円を特別会計へ繰り入れたとします。

一般会計では10兆円の歳出になります。

特別会計では10兆円の収入になります。

その特別会計が10兆円を給付などに使えば、特別会計では10兆円の歳出になります。

ここで、

一般会計の10兆円

特別会計の10兆円

を足して20兆円使ったと考えると、実態を正確に表しません。

もともとは同じ10兆円が会計間を移動した後、最終的な支出に使われているからです。

国の財政全体を見る場合には、こうした会計間の重複を除いて考える必要があります。

単純に一般会計と特別会計の予算額を合計すればよいわけではないのです。

143兆円には国のすべてのお金が入っているわけではない

2027年度概算要求143兆円前後は一般会計の数字です。

したがって、

日本政府が動かすお金の総額が143兆円

という意味ではありません。

特別会計にも巨額の資金の流れがあります。

ただし、

一般会計143兆円

特別会計の歳出

をそのまま足して国の総予算を計算することもできません。

会計間の資金移動があるからです。

143兆円という数字は、

国の基本的な政策を管理する一般会計について、各省庁からどの程度の概算要求が出されたのか

を示す数字として理解する必要があります。

経済産業省の要求を見ると違いが分かる

今回の記事でも、一般会計と特別会計の違いが表れています。

経済産業省は2027年度について、特別会計も含めて7兆7859億円を要求しました。

一方、概算要求総額143兆円前後という数字は一般会計です。

同じ概算要求の記事の中でも、

一般会計だけの数字

一般会計と特別会計を含む数字

が使われることがあります。

そのため省庁ごとの要求額を比較するときにも、

一般会計だけなのか

特別会計も含んでいるのか

を確認する必要があります。

数字の対象範囲が違えば、単純比較はできません。

国の予算を見るときの注意点

国の予算を見るときには、数字の前提を確認することが重要です。

まず、

概算要求なのか

政府予算案なのか

成立した予算なのか

を確認します。

次に、

当初予算なのか

補正予算も含むのか

を確認します。

さらに、

一般会計なのか

特別会計を含むのか

も確認します。

同じ143兆円や100兆円という数字でも、何を対象にしているかによって意味が変わります。

予算のニュースでは大きな数字に目が向きやすいのですが、その数字が何を集計したものなのかを見ることが大切です。

一般会計だけでも年度間比較には意味がある

一般会計が国のお金のすべてではないからといって、一般会計の数字に意味がないわけではありません。

むしろ国の基本的な政策や財政運営を見るうえで非常に重要です。

同じ一般会計という範囲で年度間を比較すれば、

社会保障費がどれだけ増えたのか

防衛費がどれだけ増えたのか

国債費がどれだけ増えたのか

税収がどれだけ増えたのか

新規国債発行額がどう変わったのか

などを見ることができます。

重要なのは比較条件をそろえることです。

一般会計と一般会計を比較する。

当初予算と当初予算を比較する。

概算要求と概算要求を比較する。

こうすることで数字の変化を正しく捉えやすくなります。

2027年度は比較が特に難しい

2027年度予算については、さらに注意が必要です。

これまで補正予算で追加していた経費についても、必要性があらかじめ分かっているものは当初予算から要求する方向に変わっているからです。

そのため2027年度概算要求143兆円前後を、2026年度の概算要求122.4兆円とだけ比較すると、20兆円以上急増したように見えます。

一方、2025年度補正予算と2026年度当初予算を合わせた140.6兆円と比較すると、増加幅は2兆円から3兆円程度になります。

つまり、

一般会計か特別会計か

だけでなく、

当初予算だけなのか

補正予算も合わせているのか

という比較範囲にも注意する必要があります。

国の予算は、数字の定義をそろえなければ正確に比較できないのです。

結論

一般会計とは、社会保障、防衛、教育、公共事業、地方自治体への財政移転、国債費など、国の基本的な行政活動に必要なお金を管理する中心的な会計です。

2027年度概算要求143兆円前後という数字も、この一般会計について各省庁から提出された要求額を集計したものです。

しかし国には一般会計だけでなく、特定の事業や資金を管理する特別会計があります。

そのため143兆円という数字に、日本政府が動かすすべてのお金が入っているわけではありません。

一方、一般会計と特別会計の金額を単純に足せば国の総予算になるわけでもありません。

一般会計から特別会計への繰り入れなど、会計間で同じお金が移動するため、単純に合計すると二重計上になる場合があるからです。

国の予算を見るときには、金額の大きさだけではなく、

一般会計なのか特別会計なのか

当初予算なのか補正予算なのか

概算要求なのか成立した予算なのか

という数字の範囲と段階を確認することが重要です。

143兆円という数字も、日本政府のお金すべてを示す数字ではありません。

国の基本的な財布である一般会計について、2027年度の予算編成の出発点となる要求額を示した数字だと考えると分かりやすいでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求、143兆円前後 「天井」廃止で過去最大

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求最大「143兆円」、市場警戒解かず

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求 財務省との議論本格化

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