日本では、体調が悪くなったとき、自分で病院や診療所を選んで受診することができます。
風邪なら近所のクリニック、大きな病院で診てもらいたければ総合病院を受診することもできます。基本的には、どの医療機関を受診するかを患者自身が自由に決められます。
この仕組みは「フリーアクセス」と呼ばれ、日本の医療制度を特徴づける制度の一つです。
海外では当たり前ではないこの制度は、多くのメリットがある一方で、さまざまな課題も抱えています。
今回は、フリーアクセスとは何か、その利点と課題について考えてみます。
フリーアクセスとは何か
フリーアクセスとは、患者が医療機関を自由に選び、原則として紹介状がなくても受診できる仕組みです。
どの病院へ行くかを行政や保険会社が指定することはありません。
患者自身が症状や希望に応じて受診先を決められるため、医療へのアクセスが非常に良いことが日本の特徴となっています。
これは国民皆保険制度と並び、日本の医療制度を支える重要な仕組みです。
海外では一般的ではない
海外では、日本のようなフリーアクセスを採用していない国も少なくありません。
例えば、イギリスでは、まず家庭医を受診し、専門医や大病院での診療が必要と判断された場合に紹介を受ける仕組みが採られています。
ドイツやフランスでも、かかりつけ医を中心とした医療提供体制が整備されています。
こうした制度では、患者が自由に専門病院を受診することは難しい場合があります。
一方、日本では患者自身が受診先を選択できるため、利便性の高さが評価されています。
患者にとってのメリット
フリーアクセスの最大の利点は、必要だと感じたときに速やかに医療機関を受診できることです。
紹介状を待つ必要がなく、自分が信頼する医師や専門病院を選ぶこともできます。
また、引っ越しや旅行先でも保険証を利用して受診できるため、生活環境が変わっても安心して医療を受けられます。
患者の選択権が尊重されている点は、日本の医療制度の大きな特徴です。
大病院への患者集中という課題
一方で、フリーアクセスには課題もあります。
軽い症状でも大病院を受診する患者が多くなると、本来、高度な医療を必要とする患者への対応が難しくなることがあります。
待ち時間が長くなり、医師や看護師の負担も増加します。
そのため現在では、一定規模以上の病院を紹介状なしで受診した場合には特別料金が必要となる制度が設けられています。
これはフリーアクセスを維持しながらも、地域の診療所と大病院の役割分担を進めるための仕組みです。
かかりつけ医の重要性
近年、国は「かかりつけ医」の普及を進めています。
日頃から健康状態を把握している医師がいれば、必要に応じて適切な専門医を紹介してもらうことができます。
慢性疾患の管理や健康相談、予防医療にも役立ちます。
フリーアクセスがあるからといって、その都度異なる医療機関を受診するよりも、一人の医師が継続的に診ることで、より質の高い医療につながる場合も少なくありません。
フリーアクセスと医療費
フリーアクセスは医療費にも影響します。
自由に受診できることで、早期発見や早期治療につながるという利点があります。
一方で、必要以上の受診や重複受診が増えると、医療費全体を押し上げる要因にもなります。
また、同じ検査を複数の医療機関で受けるなど、医療資源が効率的に使われないケースもあります。
医療DXによる情報共有が進めば、こうした課題の改善も期待されています。
制度は見直しの時代へ
日本では高齢化が進み、医療需要は今後も増加すると予想されています。
そのため、フリーアクセスを維持しながら、医療資源を効率的に活用する仕組みづくりが重要になっています。
紹介受診重点医療機関の整備や、地域医療連携の強化、かかりつけ医機能の充実など、さまざまな改革が進められています。
目指しているのはフリーアクセスをなくすことではなく、患者が必要な医療をより適切に受けられる体制を整えることです。
結論
フリーアクセスとは、患者が医療機関を自由に選び、原則として紹介状なしで受診できる日本の医療制度の特徴です。
患者にとって利便性が高く、必要な医療を受けやすいという大きなメリットがあります。
一方で、大病院への患者集中や医療費の増加、医療従事者の負担といった課題も抱えています。
これからは、フリーアクセスという長所を生かしながら、かかりつけ医との連携や地域医療の役割分担を進めることで、持続可能な医療制度を築いていくことが求められるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年7月21日 朝刊
病院の窓口業務コスト、医療保険の適用外に 財務省、効率化向け提起