国土交通省が、長期固定金利型住宅ローンのフラット35について、子育て世帯が中古住宅を購入する場合の金利優遇を拡充する方針です。
背景には、新築住宅の価格上昇と住宅ローン金利の上昇があります。特に都市部では新築マンションが一般の子育て世帯には手が届きにくい水準となっており、政策の重点を良質な中古住宅にも広げようとしています。
フラット35とは何か
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する住宅ローンです。
最大の特徴は、借入時に決まった金利が最長35年間変わらないことです。
変動金利型の住宅ローンでは市場金利が上昇すると返済負担が増える可能性がありますが、フラット35では借入後に市場金利が上昇しても適用金利は変わりません。
そのため、長期間の返済額をあらかじめ見通しやすいというメリットがあります。
一方で、長期金利の上昇は新たにフラット35を借りる人の金利には影響します。
2026年9月のフラット35の金利は、返済期間35年、融資率9割以下の場合で年3.46%となり、現行制度下で過去最高を更新しました。
子育て世帯にはすでに金利優遇がある
フラット35には、一定の条件を満たすと当初の借入金利を引き下げる制度があります。
条件ごとにポイントが設定され、その合計ポイントによって金利の引き下げ幅や期間が決まります。
1ポイントにつき年0.25%の金利引き下げとなります。
最初の5年間については4ポイント分、つまり年1%の引き下げが上限です。
ポイントが余った場合には、その分を次の5年間の金利引き下げに利用できます。
現在も子どもの人数などに応じてポイントが付く子育てプラスや、一定の中古住宅を購入する場合にポイントが付く中古プラスなどがあります。
中古住宅を買う子育て世帯への優遇をさらに拡充
国土交通省は2027年度にも、子育て世帯が中古住宅を購入する場合の新たな金利引き下げメニューを設ける方針です。
2027年度予算の概算要求には、金利引き下げの原資として290億円が盛り込まれました。
具体的な対象要件や金利の引き下げ幅については、2026年末にかけて検討される予定です。
注目したいのは、新しい優遇措置を既存の子育てプラスや中古プラスなどと組み合わせられる方向で検討していることです。
ただし、最初の5年間に適用される年1%という引き下げ幅の上限自体は変更しない方針です。
なぜ中古住宅なのか
背景にあるのが新築住宅価格の急激な上昇です。
不動産経済研究所によると、東京23区の2026年1月から6月の新築分譲マンションの平均価格は1億4249万円でした。
前年同期から9%上昇し、過去最高となっています。
子育て世帯は単身者や夫婦だけの世帯と比べて広い住宅を必要とするケースが多くなります。
ところが住宅価格が上昇すると、必要な広さを確保しながら新築住宅を購入することが難しくなります。
そこで政策的に中古住宅を選びやすくする意味が出てきます。
中古住宅であれば、新築住宅より購入価格を抑えられる可能性があります。
さらに一定の品質を満たす中古住宅の取得を金利面から支援すれば、子育て世帯の住宅取得支援と中古住宅市場の活性化を同時に進められます。
金利上昇で住宅選びも変わる
もう一つ重要なのが住宅ローン金利の上昇です。
国内の長期金利は約30年ぶりに3%台へ上昇しました。
これまでの日本では非常に低い住宅ローン金利が続いてきたため、住宅を購入するときには物件価格に注目が集まりがちでした。
しかし金利が上昇すれば、同じ価格の住宅を購入しても毎月の返済額や総返済額は増えます。
これからの住宅購入では、物件価格だけでなく、借入額、金利、返済期間、自己資金を一体として考える必要があります。
新築か中古かという選択も、その中で考えることになります。
新築偏重から中古住宅活用へ
今回のフラット35の優遇拡充には、単なる子育て支援以上の意味があります。
日本にはすでに大量の住宅ストックがあります。
人口が減少する一方で新築住宅を供給し続ければ、空き家の増加という問題も深刻になります。
良質な中古住宅を適切に評価し、リフォームなどを行いながら長期間利用する市場を育てることは、住宅政策全体にとって重要です。
新築住宅価格が大きく上昇した現在は、中古住宅を消極的な選択肢ではなく、住宅取得の有力な選択肢として位置付け直す時期に来ているのかもしれません。
結論
フラット35では2027年度にも、子育て世帯が中古住宅を購入する際の金利優遇が拡充される見通しです。
背景には、新築住宅価格と住宅ローン金利という二つの上昇があります。
特に都市部では、新築住宅だけにこだわると子育て世帯が必要な広さを確保することが難しくなっています。
これからの住宅購入では、新築か中古かという単純な比較ではなく、住宅の品質、購入価格、住宅ローン金利、将来の修繕費まで含めた総コストで判断することが重要になります。
住宅価格が上がり、金利も上がる時代だからこそ、良質な中古住宅を上手に活用するという選択肢の重要性は一段と高まりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日朝刊 「フラット35」、子育て世帯の優遇拡充 中古住宅購入の金利下げ