ゴルフ会員権の価格がじわじわと上昇しています。
関東の主要150コースを対象にした2026年7月のゴルフ会員権の平均価格は305万2000円となり、前月から0.9%上昇しました。値上がりは5カ月連続です。
しかも、価格上昇は一部の名門ゴルフ場だけに限られません。500万円を超える高価格帯だけでなく、70万円前後の比較的購入しやすい会員権にも需要が広がっています。
足元の会員権価格は、単純比較では2009年11月以来、およそ16年半ぶりの高値圏です。
なぜ今、ゴルフ会員権が買われているのでしょうか。
ゴルフ会員権とは何か
ゴルフ会員権とは、特定のゴルフ場の会員としてプレーするための権利です。
一般の利用者でも予約してプレーできるゴルフ場はありますが、会員になると会員料金でプレーできたり、予約を取りやすくなったり、クラブ競技に参加できたりする場合があります。
そして大きな特徴が、会員権そのものが売買されることです。
例えば、あるゴルフ場の会員権を100万円で購入し、その後150万円に値上がりすれば、理論上は売却によって値上がり益を得られる可能性があります。
このためゴルフ会員権には、ゴルフを楽しむための利用価値と、売買される資産としての価値という二つの側面があります。
会員権価格は需要と供給で決まる
ゴルフ会員権には株式市場のような全国統一の取引所があるわけではありません。
一般的には会員権取引業者などを通じて売買されます。
売りたい人が多ければ価格は下がりやすく、買いたい人が多ければ価格は上がりやすくなります。
今回の記事で興味深いのが買い倍率です。
買い倍率とは、買い注文件数を売り注文件数で割った数字です。
例えば買い注文が114件、売り注文が100件なら、買い倍率は1.14倍になります。
1倍を超えていれば、単純には売り注文より買い注文の方が多い状態です。
2026年7月には、500万円以上1000万円未満の価格帯で買い倍率が1.14倍となりました。前月は0.65倍だったため、買い需要がかなり強くなったことが分かります。
1000万円以上の価格帯でも1.04倍となっています。
名門ゴルフ場を中心に会員権を買いたい人が増えていることが、価格を押し上げています。
なぜ名門ゴルフ場の会員権は高いのか
ゴルフ場であれば、どこの会員権でも同じ価値があるわけではありません。
特に重要なのが立地です。
首都圏では、東京都心から短時間でアクセスできるゴルフ場ほど人気が高くなりやすい傾向があります。
今回も神奈川県の名門コースの値上がりが目立っています。
ゴルフではプレー時間だけでなく、往復の移動時間も大きな負担になります。
例えばプレーに5時間かかったとしても、往復に4時間かかればほぼ一日仕事です。
一方、都心から比較的短時間で行けるゴルフ場なら移動負担を減らせます。
特に働きながらゴルフを楽しむ人にとって、時間そのものが大きな価値を持っています。
そのため会員権価格には、コースの質だけでなく都心からの距離や高速道路からのアクセス、渋滞の影響なども反映されます。
低価格帯にも買いが広がっている
今回の相場で注目したいのは、名門コースだけが値上がりしているわけではないことです。
これまで比較的動きが弱かった70万円前後の低価格帯でも引き合いが強くなっています。
背景には、近年のゴルフ人気があります。
会員権価格だけでなく名義変更料などの入会諸費用を合わせても、総額100万円程度から会員になれるゴルフ場があります。
1000万円を超える名門コースと比べれば、かなり参加しやすい価格帯です。
ゴルフを継続的に楽しむ人にとっては、毎回ビジター料金を払うより会員になった方が便利だと考える場合もあります。
つまり現在の会員権市場では、富裕層による名門コース需要と、一般のゴルファーによる比較的低価格な会員権需要が同時に発生していると考えられます。
猛暑もゴルフ場選びを変えている
もう一つ面白い変化が気温です。
日本では夏の猛暑が厳しくなっています。
ゴルフは数時間にわたり屋外でプレーするスポーツですから、気温はゴルフ場選びに大きく影響します。
そこで注目されているのが、山梨県や静岡県など比較的涼しい地域のゴルフ場です。
標高の高いゴルフ場では、都市部より気温が低い場合があります。
以前であれば、都心から近いことが最大のメリットだったゴルフ場選びに、夏でも比較的快適にプレーできるという価値が加わってきたわけです。
気候変動がゴルフ会員権の価格にも影響する時代になっているともいえます。
305万円という平均価格には注意が必要
2026年7月の平均価格は305万2000円ですが、すべてのゴルフ会員権が300万円程度という意味ではありません。
ゴルフ会員権市場には、数十万円で購入できるものから1000万円を超えるものまであります。
高額な名門コースの価格が上昇すれば、平均価格も押し上げられます。
そのため平均価格だけを見るのではなく、どの価格帯に買いが入っているのかを見ることが重要です。
今回の特徴は、高価格帯だけではなく低価格帯にも需要が広がっていることです。
これは会員権相場全体の裾野が広がっている可能性を示しています。
会員権価格だけでは総費用は分からない
ゴルフ会員権を考えるときには、会員権価格だけを見ると実際の負担を見誤ります。
例えば会員権が70万円だったとしても、それだけで会員になれるとは限りません。
名義変更料や入会預託金、取引手数料、年会費などが必要になる場合があります。
会員権70万円に諸費用30万円が必要なら、実際の入会費用は100万円です。
さらに会員になった後も年会費やプレー料金などがかかります。
住宅を購入するときに物件価格だけではなく諸費用や管理費まで考える必要があるのと似ています。
ゴルフ会員権でも、購入価格ではなく総額で考えることが重要です。
ゴルフ会員権は投資商品なのか
価格が上昇していると、投資対象としてゴルフ会員権を見る人もいるかもしれません。
ただし、株式や投資信託とは性質がかなり違います。
会員権価格は景気やゴルフ人気、ゴルフ場の経営状態、アクセス、会員数などによって変動します。
買いたいときにすぐ買える、売りたいときにすぐ売れるとも限りません。
さらに名義変更料などの取引コストもあります。
そのため単純に値上がり益だけを狙う金融商品として考えるより、実際にゴルフ場を利用する価値と資産価値を合わせて考える方が実態に近いでしょう。
何年間利用するのか、年間何回プレーするのか、ビジター利用と比べてどれくらいメリットがあるのかまで考える必要があります。
秋のゴルフシーズンも相場を支える可能性
ゴルフは春と秋が人気シーズンです。
夏の猛暑が終わればプレーしやすくなり、ゴルフ場を利用する人も増えてきます。
そのため秋のシーズンを前に会員権を購入したい人が増えれば、買い需要が相場を支える可能性があります。
一方で、現在の価格が将来も上昇し続けるとは限りません。
景気後退やゴルフ人口の減少、ゴルフ場の経営悪化などが起きれば会員権価格が下落する可能性もあります。
16年半ぶりの高値圏という言葉だけを見て購入を判断するのではなく、自分が実際に利用する価値まで含めて考える必要があります。
結論
2026年7月の関東主要150コースのゴルフ会員権平均価格は305万2000円となり、5カ月連続で上昇しました。
足元では2009年11月以来、およそ16年半ぶりの高値圏です。
特徴的なのは、1000万円を超える名門コースだけではなく、70万円前後の比較的低価格な会員権にも需要が広がっていることです。
背景にはゴルフ人気に加えて、都心からのアクセスの良さ、時間を節約できる価値、猛暑による涼しい地域への需要などがあります。
ゴルフ会員権は単なるゴルフ場の利用資格ではありません。
利用価値と資産価値の両方を持ち、その価格には景気や人口動態だけでなく、交通事情や気候まで反映されます。
一方、購入するときには会員権価格だけではなく、名義変更料や年会費などを含めた総費用を見る必要があります。
ゴルフ会員権市場が16年半ぶりの高値圏にあるというニュースは、単なるゴルフ人気の話ではなく、人々がお金と時間をどこに使おうとしているのかを映す動きとして見ると興味深いのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年8月27日 朝刊 ゴルフ会員権値上がり 5カ月連続 低価格帯も人気