所有不動産記録証明制度とは何か ― 相続実務はどう変わるのか

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

2024年から相続登記の義務化が始まり、日本の不動産制度は大きな転換点を迎えました。相続人は、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を行う義務を負うことになりました。

しかし、実務の現場では以前から一つの問題が指摘されてきました。それは、亡くなった人がどこにどの不動産を所有しているのかを把握することが難しい場合があるという点です。

この問題に対応するために創設された制度の一つが所有不動産記録証明制度です。2026年2月から制度が始まり、不動産の所有状況を確認する新しい仕組みとして注目されています。

本稿では、所有不動産記録証明制度の概要と導入の背景、そして相続実務への影響について整理します。


所有不動産記録証明制度の概要

所有不動産記録証明制度とは、特定の個人が所有している不動産の登記情報を一覧として確認できる制度です。

不動産の権利関係は法務局が管理する登記簿に記録されています。しかし従来の登記制度では、ある個人が所有している不動産をまとめて確認する仕組みは十分に整備されていませんでした。

そのため相続が発生した場合、相続人は被相続人がどの不動産を所有していたのかを調査する必要がありました。この調査は必ずしも容易ではなく、相続手続の初期段階で大きな負担となることもありました。

所有不動産記録証明制度では、法務局が保有する登記情報をもとに、特定の人が所有している不動産を一覧として確認することができます。これにより、相続人や関係者が不動産の所在を把握しやすくなることが期待されています。


従来の不動産調査の方法

これまで相続の場面で不動産を調査する場合、主に次のような方法が用いられてきました。

・固定資産税の課税明細書の確認
・市区町村の名寄帳の取得
・登記簿の個別調査

固定資産税の課税明細書には、その自治体に所在する土地や建物の情報が記載されています。しかしこの方法では、他の自治体に所在する不動産を把握することはできません。

名寄帳も同様に、市区町村ごとの情報に限られます。そのため複数の自治体に不動産を所有している場合には、それぞれの自治体で調査を行う必要があります。

登記簿の調査はより正確な情報を得ることができますが、不動産の所在地が分からなければ調査を行うことができません。

このように、不動産の所在を把握すること自体が難しい場合があることが、相続実務の課題とされてきました。


制度導入の背景

所有不動産記録証明制度の背景には、所有者不明土地問題があります。

日本では、相続登記が行われないまま土地が長期間放置されるケースが増えてきました。土地の所有者が亡くなった後に相続登記が行われないと、登記簿の情報と実際の所有者が一致しなくなることがあります。

また、人口移動や土地利用の変化により、地方の土地が相続されたまま利用されないケースも増えています。こうした土地は相続のたびに権利関係が複雑になり、管理が困難になることがあります。

所有者不明土地は公共事業や防災対策にも影響を与えるため、社会的な問題として認識されるようになりました。

このような背景から、不動産制度の見直しが進められ、その一環として所有不動産記録証明制度が導入されました。


電子戸籍との関係

所有不動産記録証明制度は、電子戸籍の仕組みと連携することも想定されています。

電子戸籍とは、行政機関の間で電子的に戸籍情報をやり取りする仕組みです。電子戸籍が利用できる行政手続では、紙の戸籍証明書に代えて電子戸籍パスという番号を使用することができます。

不動産情報の確認と戸籍情報の確認が電子的に連携すれば、相続手続の効率化につながる可能性があります。

このように、行政手続のデジタル化は個別の制度だけではなく、複数の制度が連携することで進んでいくと考えられます。


相続実務への影響

所有不動産記録証明制度が普及すれば、相続実務にも一定の変化が生じる可能性があります。

第一に、不動産調査の効率化です。相続人が被相続人の不動産を把握しやすくなれば、相続手続の初期段階で行う財産調査の負担が軽減される可能性があります。

第二に、相続登記の促進です。不動産の所在が明確になれば、相続登記の手続も進めやすくなります。

第三に、専門家の実務の変化です。税理士や司法書士などの専門家が行う財産調査の方法も、制度の普及に伴い変化する可能性があります。

もっとも、この制度だけで不動産の情報を完全に把握できるわけではありません。制度の運用や対象となる情報の範囲については、今後の実務の中で検証されていくことになります。


結論

所有不動産記録証明制度は、不動産の所有状況を把握するための新しい仕組みです。相続登記義務化や所有者不明土地問題への対応の一環として導入されました。

従来の制度では、不動産の所在を把握すること自体が難しい場合がありましたが、この制度により情報確認の効率化が期待されています。

また、電子戸籍などの行政DXの取り組みと連携することで、相続手続のデジタル化が進む可能性もあります。今後の制度運用によって、相続実務のあり方にも一定の変化が生じると考えられます。


参考

税のしるべ
所有不動産記録証明制度は電子戸籍の利用可
2026年3月2日

法務省
所有不動産記録証明制度に関する資料

タイトルとURLをコピーしました