日本では高齢期まで働くことが次第に当たり前になりつつあります。
日本経済新聞社の世論調査では、70歳以降も働く意向を持つ人が4割を超え、平均回答年齢は68歳となりました。政府も高年齢者雇用安定法を通じて、70歳までの就業機会確保を企業の努力義務としています。
こうした変化は、単に「働く年齢が延びた」という問題ではありません。
むしろ、人生のキャリア設計そのものを見直す必要があることを意味しています。
本稿では、70歳就労時代においてどのようなキャリア設計が求められるのかを整理します。
従来のキャリアモデルの限界
これまでの日本社会では、次のようなキャリアモデルが一般的でした。
- 20代:就職
- 30〜50代:企業で働く
- 60歳:定年
- 60代前半:再雇用
- 65歳以降:引退
このモデルは「60歳引退」を前提に設計されていました。
しかし現在では平均寿命が80歳を超え、健康寿命も延びています。
その結果、
- 65歳以降も働く人が増える
- 70歳まで働くことが現実的になる
という状況が生まれています。
つまり、従来のキャリアモデルでは
「働く期間が長すぎる」
という問題が生じているのです。
40年キャリアから50年キャリアへ
人生100年時代と言われる現在、働く期間は次のように変わりつつあります。
従来
22歳就職 → 60歳引退
約38年間
現在
22歳就職 → 70歳就労
約48年間
働く期間は約10年延びる可能性があります。
これはキャリア設計において大きな意味を持ちます。
なぜなら、同じ働き方を50年続けることは現実的ではないからです。
したがって今後は、
- キャリアを複数の段階に分ける
- 途中で役割を変える
という考え方が重要になります。
キャリアを三段階で考える
長期化する職業人生では、キャリアを三段階で考えると理解しやすくなります。
第一段階(20〜40代)
専門性を形成する時期
この時期は
- スキルの獲得
- 専門分野の確立
- キャリアの基盤作り
が中心になります。
企業の中で経験を積み、自分の強みを作る時期です。
第二段階(40〜60代)
経験を価値に変える時期
この段階では、
- マネジメント
- 専門知識の高度化
- 人脈の形成
などが重要になります。
企業の中で責任ある立場を担う人も多くなりますが、同時に
- 独立
- 副業
- 社会活動
など、キャリアの多様化が始まる時期でもあります。
第三段階(60〜70代以降)
役割を再設計する時期
60歳を超えると、働き方は大きく変わります。
- フルタイムから短時間へ
- 組織の中心から支援役へ
- 経験を活かす仕事へ
といった形で、役割が変化することが一般的です。
この段階では、
「どのような形で社会と関わるか」
が重要なテーマになります。
高齢期就労で重要になる三つの要素
70歳就労時代のキャリア設計では、特に次の三つの要素が重要になります。
専門性
長く働くためには、代替されにくいスキルが必要になります。
例えば
- 専門資格
- 高度な経験
- 特定分野の知識
などです。
単純業務は技術の進歩によって代替されやすいため、専門性の重要性は今後さらに高まると考えられます。
健康
70歳まで働く社会では、健康管理がキャリアの前提になります。
体力や健康状態は、働き方に大きな影響を与えます。
したがって
- 運動習慣
- 生活習慣
- 医療との付き合い方
なども、長期的なキャリア設計の一部と言えます。
柔軟な働き方
高齢期の働き方は多様化しています。
例えば
- 再雇用
- 嘱託勤務
- フリーランス
- 起業
- 社会活動
などです。
企業の正社員として働き続ける以外にも、さまざまな形で社会と関わる可能性があります。
高齢期就労は社会構造を変える
70歳まで働く社会は、個人だけでなく社会全体にも影響を与えます。
例えば
- 年金制度
- 労働市場
- 社会保障
- 企業の人事制度
など、多くの制度が見直されつつあります。
特に人手不足が続く日本では、高齢者の労働参加は重要なテーマになっています。
今後は
高齢期就労が社会の標準
になる可能性もあります。
結論
70歳就労時代は、すでに現実になりつつあります。
その意味は単に「長く働く」ということではありません。
むしろ重要なのは、
- 長期のキャリアをどう設計するか
- 役割をどう変えていくか
という点です。
これからのキャリアは、
- 一つの会社で完結するものではなく
- 人生全体で再設計されるもの
になっていくでしょう。
70歳まで働く社会では、キャリアは一度決めて終わりではありません。
むしろ、何度も作り直していくものになると言えるでしょう。
参考
日本経済新聞「70歳以降も働く」初の4割 郵政世論調査(2026年3月12日朝刊)
