ふるさと納税の特例控除に上限193万円 ― 高所得者向け制度の見直し

税理士
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ふるさと納税制度は、地方自治体への寄附を促進する仕組みとして2008年度に創設され、その利用は年々拡大してきました。総務省によれば、令和6年度の寄附受入額は約1兆2800億円に達しており、制度は広く定着しています。

一方で、制度の拡大に伴い、高額な返礼品やポータルサイトのポイント競争など、制度本来の趣旨から逸脱しているのではないかという議論も続いてきました。こうした状況を受け、令和8年度税制改正では、ふるさと納税の控除制度の一部見直しが行われることとなりました。

今回の改正では、特に高所得者に対する控除額の上限設定と、自治体が寄附金を活用できる割合の引き上げが柱となっています。


特例控除額に193万円の上限を設定

ふるさと納税による税控除は、大きく分けて次の三つの要素で構成されています。

・所得税の寄附金控除
・住民税の基本控除(寄附金の10%)
・住民税の特例控除

このうち、実質的に「自己負担2000円」で寄附ができる仕組みを支えているのが、住民税の特例控除です。従来、この特例控除には明確な上限額が設けられていませんでした。

令和8年度税制改正では、この 住民税の特例控除額に193万円の定額上限 が新たに設けられることとなりました。

この改正は 2027年(令和9年)の寄附分から適用 される予定です。

例えば、給与収入が1億円程度の高所得者の場合、ふるさと納税の控除額がこの上限に達する可能性があります。従来は所得が増えるほど寄附可能額も大きくなっていましたが、今回の改正によって一定の歯止めがかかることになります。

なお、今回の上限設定は 特例控除部分のみ に適用されるものです。寄附金額の10%相当である住民税の基本控除には上限が設けられていません。


高所得者向け返礼品が議論の背景

今回の見直しの背景には、高所得者向けの高額返礼品の存在があります。

与党の税制改正議論では、例えば次のような返礼品が取り上げられました。

・純金製小判(寄附額530万円)
・高級スーツ仕立券(寄附額3700万円)

さらに、富裕層に対して最適な返礼品を提案する コンシェルジュサービス の存在も指摘されました。

ふるさと納税は本来、地方自治体を応援する寄附制度として創設されたものですが、制度の拡大とともに返礼品競争が激化し、「実質的な通販サイトのようになっている」との批判もあります。

これまでも、次のような見直しが段階的に行われてきました。

・返礼品の調達費用は寄附額の3割以下
・寄附募集に要する費用は寄附額の5割以下
・ポータルサイトのポイント付与の事実上の禁止

今回の特例控除上限の設定は、こうした制度是正の流れの延長に位置づけられます。


寄附金活用可能額の引き上げ

もう一つの重要な見直しが、自治体が寄附金を実際に活用できる割合の引き上げです。

現行制度では、寄附金の募集に要する費用を 寄附額の5割以下 に抑えることが求められています。

令和8年度改正では、自治体が実際に使える金額、いわゆる 寄附金活用可能額 を引き上げ、最終的に 寄附額の6割以上 とすることが求められます。

この制度は段階的に導入される予定です。

・2026年10月~2027年9月 52.5%以上
・2027年10月~2028年9月 55%以上
・2028年10月~2029年9月 57.5%以上
・2029年10月以降    60%以上

この改正の狙いは、ポータルサイト運営事業者など外部事業者への手数料を抑え、寄附金をより多く自治体の政策に活用できるようにすることにあります。


返礼品の内容が縮小する可能性

もっとも、外部事業者への手数料を大幅に削減できない自治体も少なくないとみられています。

その場合、基準を満たすためには次の費用を削減する必要が出てきます。

・返礼品の調達費用
・配送費用
・事務費用

特に影響を受けやすいのが返礼品です。

返礼品の調達費用が削減されれば、寄附額に対する返礼品の内容や品質がこれまでより下がる可能性があります。結果として、ふるさと納税の魅力がやや低下する可能性も指摘されています。


結論

令和8年度税制改正では、ふるさと納税制度に対して二つの重要な見直しが行われました。

第一に、高所得者による過度な利用を抑えるため、住民税の特例控除に193万円の上限が設けられました。
第二に、寄附金を自治体の政策により多く活用するため、寄附金活用可能額を最終的に6割以上へ引き上げる制度が導入されます。

ふるさと納税は地方財源の確保という重要な役割を担っていますが、その一方で制度の公平性や本来の趣旨との関係も常に議論されています。今回の改正は、制度の拡大の中で生じてきた歪みを調整する試みといえるでしょう。

今後は、返礼品競争のあり方やポータルサイトの役割なども含め、制度の持続可能性が引き続き問われていくことになりそうです。


参考

税のしるべ
2026年3月2日号
「ふるさと納税の特例控除に193万円の上限」

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