2026年度税制改正大綱をどう読むか― 年収の壁・設備投資減税と「7100億円減収」の意味 ―

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2026年度税制改正大綱が閣議決定されました。
今回の改正では、年収の壁の引き上げや、全業種を対象とする設備投資減税の創設など、家計と企業の双方に影響する項目が数多く盛り込まれています。

一方で、こうした減税措置により、国と地方を合わせた税収は平年度ベースで約7100億円の減収になると見込まれています。
それでもなお政府は、賃上げ促進税制の縮小や高所得層への課税強化によって財源を補う構図を選択しました。

本稿では、2026年度税制改正大綱の全体像を整理しつつ、「誰にとって何が変わるのか」「この改正が示す政策の方向性は何か」をFP・税務の視点から読み解きます。

年収の壁引き上げがもたらす変化

今回の改正の柱の一つが、所得税がかかり始めるいわゆる「年収の壁」を、現行の160万円から178万円へ引き上げる点です。
この改正は、基礎控除の拡充を通じて実現されます。

重要なのは、低所得層だけでなく、中間層にも一定の減税効果が及ぶ点です。
これまで「壁」を意識して就労調整を行っていた人にとっては、働き方の選択肢が広がる可能性があります。

ただし、社会保険料の壁が同時に解消されるわけではありません。
税の壁が動いても、手取り全体で見れば必ずしも単純な改善にならないケースがある点には注意が必要です。

設備投資減税は「賃上げ連動」から「全業種型」へ

企業向け施策として注目されるのが、全業種を対象とした設備投資減税の創設です。
投資額の最大7%を法人税額から控除するか、初年度に一括償却するかを選択できる仕組みとなっています。

これまでの税制では、賃上げ要件や特定分野への誘導が重視されてきましたが、今回の改正はよりシンプルに「投資そのもの」を後押しする設計です。
政府が掲げる「強い経済」の実現に向け、企業の設備更新や生産性向上を優先した姿勢がうかがえます。

一方で、平年度ベースで約4100億円という大きな減収を伴う点からも、この政策に対する政府の本気度が読み取れます。

減収7100億円の内訳と国・地方の温度差

今回の税制改正による減収規模は、国と地方を合わせて約7100億円とされています。
内訳を見ると、地方税の減収幅が特に大きい点が特徴的です。

軽油引取税の旧暫定税率廃止や、自動車税の環境性能割廃止など、地方税を中心に影響が出ます。
地方税だけで見ると、平年度ベースで約7500億円の減収と見込まれています。

一方、国税は賃上げ促進税制の縮小や、いわゆる「1億円の壁」是正強化により、差し引きで増収を見込む構造となっています。
大型減税と同時に、負担の見直しも進めるという、政策のバランスが意識された設計といえます。

住宅ローン減税・NISAの見直し

個人向け施策としては、住宅ローン減税の5年間延長と、中古住宅への支援拡充が盛り込まれました。
減収額自体は限定的ですが、住宅市場の実態を踏まえた方向修正といえます。

また、NISAのつみたて投資枠を18歳未満も利用可能とする改正も行われます。
金額規模は小さいものの、若年層からの資産形成を後押しするメッセージ性の強い改正です。

税収は過去最高、それでも減税を行う理由

注目すべき点として、2026年度の国の一般会計税収は過去最高を更新する見通しです。
消費税、個人住民税、地方消費税などが堅調に伸びると試算されています。

それでも政府が減税を実施する背景には、賃上げと投資を通じた経済の好循環を重視する姿勢があります。
単年度の税収増減ではなく、中長期的な経済成長を優先する判断と見ることができます。

結論

2026年度税制改正大綱は、「減税」と「負担調整」を同時に進める、極めて政策色の濃い内容です。
年収の壁引き上げや設備投資減税は、多くの人や企業に直接影響を与えますが、その効果は一様ではありません。

重要なのは、自身や自社がどの制度の影響を受けるのかを冷静に見極めることです。
税制改正は毎年のように行われますが、その積み重ねが家計や企業経営に与える影響は決して小さくありません。

制度の趣旨と全体像を押さえたうえで、実務やライフプランにどう落とし込むか。
その視点こそが、今回の税制改正を読み解くうえで欠かせないポイントといえるでしょう。

参考

・日本経済新聞「減収規模7100億円に 年収の壁上げや設備投資減税」
・2026年度 税制改正大綱(政府公表資料)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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