銀行は預金者から預かった資金を企業や個人へ貸し出したり、国債や社債などへ投資したりして利益を得ています。しかし、金利が変動すると、預金に支払う利息や融資で受け取る利息、有価証券の価格などが変化し、銀行収益に大きな影響を与えます。
こうした金利変動リスクを管理するために行われるのが「ALM(Asset Liability Management)」です。
日本銀行の利上げが進み、「金利ある世界」が戻った現在、ALMの重要性はこれまで以上に高まっています。
今回は、ALMの基本的な考え方と銀行経営との関係について解説します。
資産負債管理
ALMとは、「Asset Liability Management」の略で、日本語では「資産負債総合管理」と訳されます。
銀行の資産とは、
- 貸出金
- 国債
- 社債
- 外国債券
- 現金
などを指します。
一方、負債とは、
- 普通預金
- 定期預金
- 借入金
- 社債
など、銀行が資金を調達している側を指します。
ALMでは、資産と負債のバランスを総合的に管理し、金利や市場環境が変化しても安定した利益を確保できるようにします。
つまり、「お金を運用する側」と「お金を集める側」を一体として考える経営手法です。
金利変動リスク
ALMで最も重要なのが金利変動リスクの管理です。
例えば、銀行が10年固定金利の住宅ローンを多く貸し出しているとします。
その後、日本銀行が政策金利を引き上げると、預金金利は上昇して資金調達コストが増えます。
しかし、固定金利の住宅ローンから受け取る利息は変わりません。
その結果、利ざやが縮小し、銀行収益が悪化する可能性があります。
逆に、変動金利の融資が多ければ、貸出金利も見直されるため、金利上昇による影響を抑えやすくなります。
ALMでは、このような金利変動による収益への影響を分析し、リスクを適切に管理します。
銀行経営への影響
ALMは銀行経営のさまざまな場面で活用されています。
例えば、
- どのくらい固定金利融資を増やすか
- 長期国債をどれだけ保有するか
- 定期預金をどの程度集めるか
- 市場からどのくらい資金を調達するか
といった経営判断は、ALMの分析結果を参考に行われます。
また、金利だけでなく、
- 為替変動
- 流動性リスク
- 資金繰り
なども総合的に管理する対象となっています。
そのため、ALMは銀行経営の中核を担う重要な機能といえます。
金利ある時代にALMが重要になる理由
超低金利時代には、金利変動が小さかったため、ALMの難しさは比較的限定的でした。
しかし、日本銀行が利上げを進める現在は、金利が短期間で変動する可能性があります。
例えば、
- 預金金利の上昇
- 貸出金利の見直し
- 国債価格の下落
- 資金調達コストの増加
などが同時に発生します。
こうした変化に適切に対応できなければ、銀行収益は大きく悪化する可能性があります。
そのため、ALMは金利ある時代の銀行経営に欠かせない管理手法となっています。
海外で起きた銀行破綻から学ぶALM
ALMの重要性が世界的に注目されたきっかけの一つが、海外で発生した銀行の経営危機です。
低金利時代に購入した長期債券を大量に保有していた銀行では、急速な利上げによって債券価格が大きく下落し、多額の含み損を抱えるケースがありました。
預金流出が重なると、債券を売却せざるを得なくなり、損失が表面化して経営が悪化することがあります。
このような事例は、資産と負債のバランスを適切に管理するALMの重要性を改めて示しました。
私たちにも関係するALM
ALMは銀行内部の専門的な管理手法ですが、預金者にも無関係ではありません。
銀行が適切なALMを行っていれば、
- 安定した経営
- 預金者からの信頼維持
- 継続的な融資
- 健全な金融システム
につながります。
反対に、ALMが十分に機能しなければ、金利変動時に大きな損失を被るリスクが高まります。
銀行の決算やニュースを見る際には、「ALM」という言葉が銀行経営の安定性を支える重要な考え方であることを知っておくと理解が深まります。
結論
ALMとは、銀行の資産と負債を一体的に管理し、金利変動や市場環境の変化によるリスクを抑えながら安定した収益を確保するための経営手法です。
金利ある時代では、預金金利や貸出金利、有価証券価格が大きく変動するため、ALMの重要性はこれまで以上に高まっています。
銀行が健全な経営を続けるためには、資産と負債のバランスを適切に保ち、将来の金利変動を見据えた経営判断が欠かせません。ALMは、その土台となる銀行経営の基本的な考え方といえるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
銀行預金、金利競争に みずほは大口向け1.5%
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
預金金利 日銀の利上げに伴い上昇 きょうのことば