自動車を購入するときには、車両価格だけではなく、さまざまな税金や諸費用がかかります。その中でも、自動車を取得した際に課税される「環境性能割」は、多くの人にとってあまり馴染みのない税金かもしれません。
令和8年度税制改正では、この環境性能割が廃止されることになりました。
一見すると「税金が一つなくなるだけ」と思われるかもしれませんが、その背景には日本の自動車産業を取り巻く大きな環境変化があります。
今回は、環境性能割の廃止が何を意味するのかを考えてみます。
環境性能割とはどのような税金か
環境性能割は、自動車を購入した際に課税される地方税です。
税額は、自動車の取得価格だけではなく、燃費性能や環境性能によって変わります。
燃費性能が優れた車ほど税負担が軽くなり、環境負荷の大きい車ほど税負担が重くなる仕組みです。
制度の目的は、自動車購入時に環境性能の高い車を選びやすくすることにありました。
なぜ廃止されることになったのか
令和8年度税制改正では、環境性能割を令和8年3月31日で廃止することが決まりました。
その理由として、政府は米国の関税措置による日本の自動車産業への影響を緩和するとともに、国内市場を活性化させることを挙げています。
また、自動車取得時の税負担を軽減し、税制をより簡素で分かりやすいものにすることも目的の一つです。
複雑化していた自動車取得時の税制を見直し、購入しやすい環境を整えることが今回の改正の狙いといえるでしょう。
購入時の負担は軽くなるのか
環境性能割が廃止されることで、自動車購入時の負担は一定程度軽くなります。
特に新車購入を検討している人にとっては、初期費用が抑えられる可能性があります。
ただし、「自動車にかかる税金が減る」というわけではありません。
今回の改正では、自動車税制全体を見直す方針も示されています。
つまり、取得時の税負担は軽減されても、保有時や利用時の負担を含めた新しい仕組みが今後検討されることになります。
税制は時代に合わせて変わる
環境性能割が創設された当時は、環境性能の高い車を普及させることが重要な政策課題でした。
しかし現在では、EVやプラグインハイブリッド車が普及し始め、自動車市場そのものが大きく変化しています。
税制も、こうした社会の変化に合わせて見直されます。
一度作られた制度が永遠に続くわけではなく、その時代に合った仕組みへ更新されていくことが税制の特徴でもあります。
購入を考える人が意識したいこと
自動車を購入する際は、車両価格だけで判断する時代ではありません。
税制改正によって、
- 購入時の税金
- 毎年の自動車税
- 車検時の税負担
- 燃料費
- 維持費
などを総合的に考えることが重要になります。
特に今後は、自動車税制全体の見直しが予定されているため、購入時だけではなく長期間保有した場合のコストも確認しておくことが大切です。
税理士も知っておきたい改正
環境性能割は地方税であるため、所得税や法人税ほど相談を受ける機会は多くないかもしれません。
しかし、法人の社用車購入や設備投資の相談では、自動車取得に伴う税負担を質問されることがあります。
今回の改正内容を理解しておけば、
- 法人の車両更新
- 個人事業者の設備投資
- リースと購入の比較
などについても、より適切なアドバイスができるようになります。
税理士にとっても、自動車税制は企業経営を支える重要な知識の一つといえるでしょう。
結論
令和8年度税制改正では、自動車取得時に課税されていた環境性能割が廃止されることになりました。
これは購入時の負担軽減だけを目的としたものではなく、日本の自動車産業の競争力強化や、より公平で分かりやすい税制への転換を目指す改革の一環です。
今後は取得時だけではなく、保有時や利用時を含めた新しい自動車税制の姿が議論されていくでしょう。自動車を購入する際には、目先の税負担だけではなく、税制全体の流れを理解したうえで判断することが大切です。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)