自動車は、多くの人にとって生活や仕事に欠かせない存在です。一方で、自動車には購入時、保有時、利用時など、さまざまな場面で税金が課されています。
しかし、自動車を取り巻く環境は大きく変化しています。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及、自動運転技術の進歩、さらには2050年カーボンニュートラルの実現に向けた政策など、従来の税制では対応しきれない課題が増えてきました。
こうした背景から、令和8年度税制改正では自動車関係諸税の総合的な見直しが打ち出されました。
今回は、その全体像について分かりやすく解説します。
自動車税制は複雑になり過ぎていた
現在、自動車にはさまざまな税金が課されています。
例えば、
- 自動車税
- 軽自動車税
- 自動車重量税
- 環境性能割
- ガソリン税
- 軽油引取税
などがあります。
さらに、エコカー減税や各種特例措置も加わり、購入する車種や燃料の種類によって税負担が大きく異なります。
制度が複雑化した結果、「どの車を買えば税負担が少ないのか分かりにくい」という声も少なくありませんでした。
税制改革の目的は何か
今回の見直しでは、単に税金を増減させることが目的ではありません。
政府は、自動車戦略やインフラ整備の将来像を踏まえながら、公平・中立・簡素な税制を構築する方針を示しています。
また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、環境性能も重要な要素として位置付けられています。
つまり、
「分かりやすく」
「公平で」
「時代に合った」
自動車税制へ転換しようとしているのです。
購入時だけではなく利用時の負担も見直される
これまでの税制では、自動車購入時の税負担が重視されてきました。
しかし、EVの普及が進むにつれて、新たな課題が生まれています。
例えば、ガソリン車は燃料を購入するたびにガソリン税を負担していますが、EVにはその負担がありません。
道路はすべての自動車が利用するため、「利用者全体で公平に負担すべきではないか」という議論が進んでいます。
そのため、今後は購入時だけでなく、保有や利用の段階も含めた税制へと見直しが進められる方向です。
環境政策との両立も重要なテーマ
税制は財源を確保するだけではありません。
社会全体を望ましい方向へ導く役割もあります。
今回の見直しでも、
- EVの普及促進
- 環境性能の向上
- CO₂排出量の削減
といった政策目標が大きく反映されています。
一方で、EVが増えればガソリン税収は減少します。
環境政策を進めながら道路財源も確保するという、難しい課題への対応が今回の税制改革には求められています。
私たちの暮らしにも影響する
自動車税制の見直しは、自動車メーカーだけの問題ではありません。
今後、
- 新車購入のタイミング
- EVへの乗り換え
- 維持費
- 車検費用
などにも影響する可能性があります。
税制が変われば、自動車選びの基準も変わります。
価格だけでなく、長期間保有した場合の総コストを考えることが、これまで以上に重要になるでしょう。
税理士にも幅広い知識が求められる
自動車税制は所得税や法人税ほど相談件数が多い分野ではありません。
しかし、中小企業では営業車や社用車を保有しているケースが多く、設備投資や節税対策とも密接に関係しています。
今後は、
- EV導入の税務
- 減価償却との関係
- 法人の車両購入
- 自動車関連税制の改正
について説明できる知識が求められるでしょう。
税理士にとっても、自動車税制は決して無関係な分野ではありません。
結論
令和8年度税制改正では、自動車関係諸税を抜本的に見直す方向性が示されました。
背景には、EVの普及やカーボンニュートラルの実現、そして公平で分かりやすい税制を構築したいという考えがあります。
今後も環境技術の進歩に合わせて自動車税制は変化していくでしょう。私たちも税金を単なる負担として考えるのではなく、社会や産業の変化を反映する制度として理解することが大切ではないでしょうか。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第4 消費税・自動車税・防衛税・地方税・納税環境整備(税理士・公認会計士 長谷川敏也 講義資料)