「人が足りないから残業が増えるのは仕方がない。」
多くの企業で、このような声を耳にします。確かに、人手不足が深刻化する中では、一人ひとりの業務量が増え、残業が発生しやすくなるのは自然なことです。
しかし、その一方で、人手不足にもかかわらず残業時間を減らし、生産性を高めている企業もあります。その違いは、従業員の努力や根性ではなく、「仕事の進め方」にあります。
今回は、人手不足時代でも残業を減らしている企業に共通する考え方について考えてみます。
残業を前提に仕事を組み立てない
残業が多い会社では、「今日終わらなければ残業すればよい」という考え方が、無意識のうちに定着していることがあります。
この状態では、業務量の見直しや改善が後回しになり、残業が当たり前の働き方になってしまいます。
一方、残業が少ない会社では、「勤務時間内に終わらせるにはどうすればよいか」を前提に業務を設計しています。
働く時間ではなく、仕事の進め方を変えることが、残業削減の第一歩なのです。
業務の見える化を徹底している
残業を減らしている企業には、仕事を「見える化」しているという共通点があります。
誰がどの仕事を担当しているのか。
どの業務に時間がかかっているのか。
どこで仕事が滞っているのか。
こうした情報が共有されていれば、業務の偏りを調整しやすくなります。
仕事が特定の人に集中している状態を放置しないことが、残業を減らす重要なポイントです。
属人化を防いでいる
「あの人しかできない仕事」が多い会社では、その担当者に業務が集中し、残業も増えやすくなります。
残業が少ない企業では、
・業務マニュアルの整備
・複数人で対応できる体制
・定期的なジョブローテーション
・情報共有の徹底
などに取り組み、属人化を防いでいます。
一人に依存しない仕組みをつくることで、休暇も取得しやすくなり、組織全体の柔軟性も高まります。
デジタル化を積極的に進めている
近年では、デジタル技術の活用も残業削減に大きく貢献しています。
例えば、
・クラウドによる情報共有
・電子契約
・AIによる文書作成支援
・会計や給与計算の自動化
・オンライン会議
などを導入することで、これまで手作業だった業務を効率化できます。
デジタル化は、人手不足を補う有力な手段となっています。
会議を短くしている
意外と見落とされがちなのが会議です。
長時間の会議や目的が曖昧な打ち合わせは、多くの時間を消費します。
残業が少ない企業では、
・目的を明確にする
・参加者を必要最小限にする
・終了時間を決める
・資料を事前共有する
など、会議そのものを効率化しています。
会議時間を短縮するだけでも、生産性は大きく向上します。
管理職の役割が変わっている
残業を減らしている会社では、管理職の役割も変化しています。
「頑張れ」と精神論で指導するのではなく、
・業務量を調整する
・優先順位を整理する
・仕事を分担する
・部下の健康状態を把握する
といったマネジメントに力を入れています。
働く時間ではなく、成果を生み出せる環境を整えることが管理職の重要な仕事になっています。
残業削減は企業文化を変える
制度だけ整えても、職場の意識が変わらなければ残業は減りません。
「遅くまで会社にいる人ほど評価される」
「休むことに罪悪感がある」
このような文化が残っていると、働き方改革は進みません。
一方で、残業が少ない企業では、
「時間内に成果を出すことが評価される」
という価値観が浸透しています。
企業文化を変えることが、本当の働き方改革につながります。
人手不足だからこそ働きやすい会社が選ばれる
これからの日本では、人手不足がさらに進むことが予想されています。
その中で優秀な人材を確保するためには、給与だけではなく、働きやすい環境を整えることが重要になります。
残業が少なく、有給休暇を取得しやすく、健康を大切にする企業は、求職者からも高く評価されます。
働きやすい会社づくりは、人材確保と企業成長の両方につながる投資なのです。
結論
人手不足だから残業が増えるのではありません。残業を前提とした仕事の進め方や、業務の属人化、非効率な業務が積み重なることで、長時間労働が常態化してしまうのです。
残業を減らしている企業は、業務改善やデジタル化、情報共有、管理職の意識改革などを継続的に進めています。そして、「長く働く人」ではなく、「限られた時間で成果を出す人」を評価する企業文化を育てています。
人手不足が続くこれからの時代に企業が成長していくためには、人を増やすことだけでなく、仕事のやり方を変えることが欠かせません。残業削減はコスト削減ではなく、企業の競争力を高める経営改革そのものなのです。
参考
日本経済新聞(2026年7月8日夕刊)
「マネー相談 黄金堂パーラー〉労災保険(下)補償の範囲 熱中症や腰痛、業務なら対象」
日本経済新聞(2026年7月8日夕刊)
「判断に迷ったら諦めず申請 弁護士 古川拓さん」