「昨日は終電近くまで働き、翌朝はいつも通り出勤した。」
こうした働き方は、かつて多くの職場で当たり前のように見られました。しかし、十分な休息が取れない状態が続けば、疲労は回復せず、心身の健康や仕事のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
そこで近年注目されているのが「勤務間インターバル制度」です。働き方改革の一環として導入を進める企業も増えており、健康経営の重要な取り組みとして位置付けられています。
今回は、勤務間インターバル制度の仕組みと、その導入が企業にもたらす効果について考えてみます。
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、仕事が終わってから次の勤務を始めるまでの間に、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。
例えば、終業時刻が午後10時で、勤務間インターバルを11時間と定めている場合、翌日の始業時刻は午前9時以降になります。
この制度は、「どれだけ働いたか」だけでなく、「どれだけ休めたか」を重視する考え方に基づいています。
長時間労働の是正だけではなく、十分な休息時間を確保することで、健康を維持しながら働ける環境づくりを目指しています。
なぜ休息時間が重要なのか
人の身体や脳は、睡眠や休息によって疲労を回復します。
しかし、退勤後も通勤や食事、家事などに時間を取られるため、勤務と勤務の間隔が短いと十分な睡眠時間を確保できません。
睡眠不足が続くと、
・集中力の低下
・判断ミスの増加
・事故やけがのリスク上昇
・生活習慣病の悪化
・メンタルヘルス不調
など、さまざまな問題が起こりやすくなります。
休息時間を確保することは、働く人の健康だけでなく、安全な職場づくりにもつながるのです。
長時間労働対策との違い
勤務間インターバル制度は、時間外労働の上限規制とは目的が少し異なります。
上限規制は「働き過ぎ」を防ぐ制度ですが、勤務間インターバル制度は「十分に休む時間を確保する」ことを重視しています。
たとえ時間外労働が法律の範囲内であっても、終業時刻が遅く翌朝早く出勤する生活が続けば、疲労は回復しません。
働く時間だけではなく、休息時間にも目を向けることが、これからの労務管理では重要になります。
企業にとってのメリット
勤務間インターバル制度は、従業員のためだけの制度ではありません。
企業にも、
・生産性の向上
・労働災害の防止
・離職率の低下
・採用力の向上
・企業イメージの向上
といった多くのメリットがあります。
十分な休息を取った従業員は集中力が高まり、仕事の質も向上しやすくなります。
健康を守ることが、企業の競争力向上にもつながるのです。
制度導入には業務改善が欠かせない
勤務間インターバル制度は、制度だけ導入すれば機能するものではありません。
例えば、
・業務量の見直し
・会議時間の短縮
・情報共有の効率化
・デジタルツールの活用
・AIによる定型業務の自動化
など、仕事そのものを効率化する取り組みが必要です。
働き方を変えずに休息時間だけを増やそうとしても、現場に無理が生じてしまいます。
制度と業務改善を一体で進めることが成功のポイントです。
管理職の意識改革が成功を左右する
勤務間インターバル制度を定着させるには、管理職の理解と協力が欠かせません。
管理職が、
「少しぐらいなら大丈夫」
「今日だけだから」
という考え方を続けていては、制度は形だけのものになってしまいます。
部下の勤務状況を把握し、業務量を調整し、無理な働き方を防ぐことも管理職の重要な役割です。
制度を守るだけではなく、「しっかり休んでよい」という職場文化を育てることが求められます。
健康経営との親和性も高い
近年、多くの企業が健康経営に取り組んでいます。
勤務間インターバル制度は、その代表的な施策の一つです。
従業員の健康を守る企業は、人材の定着率が高く、採用活動でも有利になる傾向があります。
健康を大切にする企業文化は、長期的な企業価値の向上にもつながるでしょう。
結論
勤務間インターバル制度は、働く時間を制限するためだけの制度ではありません。十分な休息時間を確保し、心身の健康を守りながら、生産性の高い働き方を実現するための仕組みです。
これからの企業には、労働時間だけではなく「休息の質」にも目を向けた労務管理が求められます。制度の導入とあわせて業務改善やデジタル化を進めることで、働く人も企業も持続的に成長できる環境が生まれます。
「長く働くこと」が評価される時代から、「しっかり休み、高い成果を生み出すこと」が評価される時代へ。その変化を支える重要な取り組みの一つが、勤務間インターバル制度なのです。
参考
日本経済新聞(2026年7月8日夕刊)
「マネー相談 黄金堂パーラー〉労災保険(下)補償の範囲 熱中症や腰痛、業務なら対象」
日本経済新聞(2026年7月8日夕刊)
「判断に迷ったら諦めず申請 弁護士 古川拓さん」