企業グループでは、親会社と子会社、兄弟会社、関連会社などの間でさまざまな取引が行われています。商品の販売、業務委託、システム利用、事務代行、設備の貸し借りなど、その内容は多岐にわたります。
こうした取引では、「社内のことだから価格は自由に決められる」と考えられることがあります。しかし、税務上はグループ会社間の取引であっても、その価格が合理的であることが求められます。
今回は、グループ会社との取引価格をどのような考え方で決めるべきかを解説します。
価格設定が重要視される理由
第三者同士の取引では、市場での競争を通じて価格が決まることが一般的です。
一方、グループ会社間では経営判断によって価格を決めることができるため、利益を意図的に移転しているのではないかという疑問が生じる可能性があります。
例えば、
・利益が出ている会社から赤字会社へ利益を移す
・税負担の軽い会社へ利益を集中させる
・役員個人が関係する会社へ利益を移す
こうした行為が行われていないかを確認するため、税務調査では価格設定の合理性が重視されます。
市場価格を意識することが基本
価格を決める際の基本的な考え方は、市場価格を参考にすることです。
例えば、
・同じ商品を第三者へ販売している価格
・一般的な賃貸相場
・外部業者への委託費用
・同業他社の料金水準
などを参考にすれば、価格設定の合理性を説明しやすくなります。
もちろん、完全に同じ条件の取引が存在しない場合もありますが、市場価格を意識して検討したという記録を残すことが重要です。
価格決定の根拠を文書化する
税務調査では、「なぜその価格になったのか」という説明が求められることがあります。
そのため、価格だけでなく、決定までの過程も記録しておくことが大切です。
例えば、
・相場調査の結果
・複数の見積書
・社内での検討資料
・取締役会や会議の議事録
などを保存しておけば、価格設定の考え方を客観的に示すことができます。
価格そのものだけではなく、意思決定の過程も重要な証拠になります。
利益だけで判断しない
「利益が出ているから適正な価格である」とは限りません。
例えば、高い利益率になっている場合でも、それが高度な技術や専門性によるものであれば合理的なケースがあります。
反対に、利益が少なくても、市場競争が激しい業界であれば妥当な場合もあります。
価格設定は、利益率だけではなく、
・提供するサービスの内容
・業務量
・リスク負担
・必要な人員や設備
なども考慮して判断する必要があります。
毎年同じ価格でよいとは限らない
事業環境は毎年変化しています。
人件費の上昇、原材料価格の高騰、物価上昇などにより、以前は適正だった価格が現在では実態に合わなくなることもあります。
そのため、グループ会社間の取引価格も定期的に見直すことが望まれます。
価格を据え置く場合も、「見直した結果、現状維持と判断した」という記録を残しておけば、後日の説明に役立ちます。
税務だけではなく経営判断にも役立つ
適正な価格設定は、税務対応だけの問題ではありません。
社内で適正な価格を設定することで、
・各会社の収益力を正しく把握できる
・事業ごとの採算性が見える
・経営判断がしやすくなる
という効果も期待できます。
実態に合わない価格では、各会社の業績を正しく評価することが難しくなり、経営判断を誤る原因にもなりかねません。
価格設定は、経営管理の質を高める重要な仕組みでもあるのです。
価格設定は継続的な見直しが重要
一度価格を決めたら終わりではありません。
市場環境や事業内容の変化に応じて、
・価格の妥当性を確認する
・契約内容を見直す
・根拠資料を更新する
というサイクルを繰り返すことが重要です。
こうした積み重ねが、税務調査への備えになるだけでなく、企業グループ全体の経営品質向上にもつながります。
結論
グループ会社との取引価格は、「社内だから自由に決められるもの」ではなく、第三者にも合理的に説明できるものであることが求められます。
市場価格を参考にしながら、価格決定の根拠や検討過程を文書として残し、定期的に見直していくことが大切です。
適正な価格設定は税務リスクを低減するだけではありません。企業グループ全体の経営状況を正確に把握し、より良い経営判断を行うための基盤にもなります。
これからの時代は、「いくらで取引したか」だけでなく、「なぜその価格なのか」を説明できる企業が、より高い信頼を得られるのではないでしょうか。
参考
税のしるべ 2026年7月6日号
関連者間取引の書類保存特例の事務運営指針を公表、記載内容の程度や実地調査時の対応、青色承認取消しの取扱いなど示す