中小企業が関連者間取引で陥りやすい五つの誤解 実務注意編

経営

関連者間取引という言葉を聞くと、「大企業や多国籍企業だけに関係する話」と思われる方も少なくありません。

しかし実際には、中小企業でも親族会社との取引や、社長が所有する不動産の賃貸、グループ会社への業務委託など、関連者間取引は数多く存在します。

こうした取引自体に問題があるわけではありません。しかし、思い込みや慣習によって適切な管理が行われていないと、税務調査で思わぬ指摘を受けることがあります。

今回は、中小企業が陥りやすい五つの誤解について考えてみます。

誤解その一 身内同士の取引だから自由に決められる

最も多い誤解は、「グループ会社や親族会社との取引なのだから、価格は自由に決められる」という考え方です。

確かに契約の相手方を自由に選ぶことはできます。しかし、税務上は取引価格にも合理性が求められます。

市場価格とかけ離れた金額や、根拠が説明できない価格設定では、税務調査でその理由を確認される可能性があります。

「身内だから」という理由だけでは、価格の妥当性を説明することはできません。

誤解その二 契約書があれば十分である

契約書を作成していることで安心している企業もあります。

しかし、税務調査では契約書だけではなく、その契約どおりに業務が行われていたかまで確認されます。

例えば、

・業務報告書

・成果物

・請求書

・メールのやり取り

・会議記録

なども重要な証拠になります。

契約書はスタート地点であり、実際の取引を裏付ける資料とあわせて初めて十分な説明資料となります。

誤解その三 一度決めた価格は変更しなくてもよい

取引価格を何年も変更していない企業も少なくありません。

しかし、物価や人件費、市場環境は常に変化しています。

以前は適正だった価格でも、現在では実態に合わなくなっていることがあります。

毎年大きく変更する必要はありませんが、定期的に価格の妥当性を確認し、その検討結果を記録しておくことが望まれます。

見直しを行ったという事実自体が、適切な管理を行っている証拠になります。

誤解その四 税務調査は経理担当者だけが対応すればよい

関連者間取引では、経理担当者だけでは説明できない事項も多くあります。

例えば、

・価格を決めた理由

・取引先を選定した経緯

・業務内容

・契約締結までの判断

などは、経営者や担当部署でなければ説明できないこともあります。

税務調査では、会社全体で情報を共有し、必要な資料をすぐ提示できる体制づくりが重要です。

誤解その五 問題がなければ資料は不要である

「適正な取引だから問題はない」という考え方も危険です。

税務調査では、「問題があるかどうか」だけではなく、「適正であることを説明できるか」が重視されます。

実態を説明する資料が十分に残されていれば、不要な誤解を防ぐことができます。

逆に、適正な取引であっても証拠が不足していれば、調査が長引く原因になることもあります。

説明できる状態を日頃から整えておくことが、企業を守ることにつながります。

重要なのは説明責任という考え方

近年の税務行政では、「形式」だけではなく「実態」が重視されています。

そのため、

・なぜその会社と取引したのか

・なぜその価格になったのか

・どのような業務を行ったのか

・どのような資料で確認できるのか

これらを客観的に説明できることが重要になります。

この考え方は、税務対応だけでなく、内部統制や企業ガバナンスの向上にもつながります。

日常の管理が将来の安心につながる

関連者間取引は、特別な企業だけの問題ではありません。

中小企業でも日常的に発生する取引だからこそ、普段から契約書や証憑類を整理し、価格決定の根拠を記録し、業務実績を残しておくことが大切です。

こうした地道な管理は、税務調査への備えとなるだけでなく、担当者の交代や経営環境の変化にも対応しやすい企業体質を築くことにつながります。

結論

関連者間取引で最も注意したいのは、「身内同士だから大丈夫」という思い込みです。

価格設定、契約内容、業務実態、証拠書類の保存など、一つ一つを第三者にも説明できるよう管理しておくことが重要になります。

税務調査は企業を疑うためのものではなく、取引の実態を確認するための手続きです。だからこそ、日頃から透明性の高い管理を心掛けることが、企業への信頼を高め、不要な税務リスクを避ける最善の方法といえるでしょう。

参考

税のしるべ 2026年7月6日号

関連者間取引の書類保存特例の事務運営指針を公表、記載内容の程度や実地調査時の対応、青色承認取消しの取扱いなど示す

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