最近、「1ドル170円もあり得る」という見出しを目にする機会が増えました。
為替市場では、日米の金利差や財政政策、金融政策への期待など、さまざまな要因が重なって円安が続いています。しかし、個人にとって本当に重要なのは、「円安が170円になるかどうか」を当てることではありません。
本当に考えるべきなのは、円安が続く時代に、自分や家族の資産をどのように守り、育てていくかです。
円安は一時的なニュースではなく、日本人の資産形成そのものを考え直すきっかけになっています。
円安は生活コストを静かに押し上げる
円安になると、輸入に頼る日本では多くの商品価格が上昇します。
エネルギー、食品、日用品、旅行費用など、私たちの生活に直結する支出が少しずつ増えていきます。
給与が同じでも、実際に購入できるモノやサービスが減れば、実質的には資産が目減りしていることになります。
つまり、円安は預金残高を減らすわけではありませんが、お金の価値を少しずつ下げていく現象ともいえます。
預貯金だけでは資産を守りにくい時代
日本では長年、「預金は安全」という考え方が定着してきました。
もちろん、生活資金や緊急予備資金として預金は欠かせません。
しかし、資産のほとんどを円預金だけで保有していると、円の価値が下がる局面では資産全体の購買力も低下してしまいます。
資産を守るためには、「安全性」と「価値の維持」の両方を考える必要があります。
その視点から見ると、預金だけに偏らない資産配分が重要になってきます。
為替を予想するより分散投資が重要
「これから円高になるのか、それともさらに円安になるのか」
その答えを正確に当てられる人はいません。
プロの為替ディーラーでも長期予測は非常に難しい世界です。
だからこそ、多くの長期投資家は為替を予想することよりも、資産を分散することを重視しています。
例えば、
・円資産
・外国株式
・世界株式
・外国債券
・国内資産
などを組み合わせることで、一つの値動きに資産全体が左右されにくくなります。
分散投資は大きく儲けるためではなく、大きく失わないための知恵でもあります。
円安は企業にも影響を与える
円安は家計だけの問題ではありません。
輸入原材料を使う企業ではコストが増えます。
一方で、輸出企業や海外売上比率の高い企業は利益が増える場合もあります。
つまり、同じ日本企業でも円安の恩恵を受ける会社と、逆風となる会社に分かれるのです。
投資をする際にも、どのような事業構造なのかを理解することが、これまで以上に重要になります。
長期的な資産形成では為替も味方になる
新NISAなどを活用して世界中の企業へ長期投資をしている人にとって、円安は必ずしも悪いことばかりではありません。
海外資産は円換算すると価値が上昇するため、資産全体の評価額が増えることもあります。
もちろん、将来円高になれば逆の動きもあります。
だからこそ、一時的な為替変動に一喜一憂するのではなく、長期的な資産形成を続ける姿勢が大切になります。
短期の相場を追い続けるよりも、時間を味方につける投資の方が、多くの人に適した方法といえるでしょう。
円安時代に経営者が考えるべきこと
中小企業経営者にとっては、円安は経営戦略にも直結します。
仕入価格の見直し、価格転嫁、海外調達先の分散、為替リスク管理など、検討すべきテーマは少なくありません。
また、従業員の生活コスト上昇は賃金にも影響を与えます。
円安を単なる為替ニュースとして見るのではなく、自社経営への影響として考えることが、これからの経営者には求められます。
結論
円安が170円になるかどうかは、誰にも分かりません。
しかし、円だけに資産を集中させるリスクが以前より大きくなっていることは、多くの人が意識し始めています。
資産形成で重要なのは、相場を予測することではなく、変化に耐えられる仕組みをつくることです。
預金、投資、外貨資産、そして長期・分散という考え方を組み合わせることで、不確実な時代にも落ち着いて資産を守ることができます。
円安を恐れるのではなく、円安にも対応できる資産設計を考えることこそ、人生100年時代の資産防衛につながるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年7月7日 朝刊)
「『1ドル170円台』に現実味 『骨太』に財政懸念、売り圧力 米利上げ観測追い打ち」