相続した土地は「手放せない資産」から「流通する資産」へ 相続土地国庫帰属制度の新展開編

税理士
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相続した土地を「使う予定もない」「売れない」「管理だけが負担になっている」と感じる人は少なくありません。人口減少や地方の過疎化が進む日本では、こうした土地が年々増えています。

こうした問題に対応するために創設されたのが相続土地国庫帰属制度です。しかし制度開始後も、国が引き取った土地はほとんど売却されず、新たな課題が見えてきました。

今回、財政制度等審議会では、その改善策として国有地の売却価格を市場の反応に応じて段階的に引き下げる新たな方針が示されました。

これは単なる価格改定ではありません。日本の土地政策が「保有」から「流通」へと大きく方向転換し始めたことを示す出来事ともいえます。

相続土地国庫帰属制度とは何か

相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した不要な土地を一定の条件のもとで国へ引き渡すことができる制度です。

これまで土地は「所有者が最後まで責任を負うもの」という考え方が基本でした。

しかし、

・利用予定がない
・売却先が見つからない
・維持管理費だけがかかる

という土地が全国で増え続け、所有者不明土地問題の原因にもなっていました。

そこで一定の条件を満たした土地については、国が引き取り管理する制度が創設されたのです。

制度が始まっても売却は進まなかった

制度開始後、多くの土地が国へ帰属しました。

しかし現実には、その土地を購入する人はほとんど現れませんでした。

理由は決して単純ではありません。

例えば、

・利用価値が低い
・地方で需要が少ない
・境界確認などの手続きが複雑
・管理リスクが残る

など、多くのハードルが存在していたからです。

国が所有していても、売れなければ管理コストだけが増え続けます。

つまり、「引き取る制度」はできても、「流通する仕組み」が十分ではなかったのです。

今回見直されるポイント

今回示された見直しでは、土地が売れやすくなるよう複数の改善策が導入されます。

代表的なものは次のとおりです。

現状のままで売却できる

これまでは測量や境界確認など多くの手続きが必要でした。

今後は一定の場合、「現状有姿」で売却できる仕組みが導入されます。

手続きが簡素化されることで、売買のハードルは大きく下がります。

隣接地主への売却を進める

もっとも土地を必要としている可能性が高いのは隣接する土地所有者です。

そのため、一般競争入札だけではなく、随意契約も活用しながら売却を進める方向となっています。

土地利用という観点でも合理的な方法といえるでしょう。

市場価格に合わせて価格を下げる

今回もっとも注目されるのが価格設定です。

最初に一定額(30%)を減額し、その後も3か月ごとに市場の反応を見ながら価格を引き下げます。

最終的には当初評価額の約7%まで下がる可能性があります。

これは「売れない価格」より「売れる価格」を重視する考え方へ転換したことを意味しています。

土地の価値は価格だけでは決まらない

今回の制度改正から分かることがあります。

それは、土地には

・評価額
・固定資産税評価額
・相続税評価額
・市場価格

など複数の価格が存在し、最終的な価値は実際に買う人がいるかどうかで決まるということです。

どれほど高い評価額が付いていても、需要がなければ市場では売れません。

逆に、価格を適切に見直せば新たな利用者が現れる可能性があります。

市場の現実を反映した価格形成が重要なのです。

相続対策も「売れる前提」から変わる

これまで相続対策では、

「土地を残す」

ことが前提となるケースが少なくありませんでした。

しかし人口減少が続くこれからは、

「将来売れる土地なのか」

「管理できる土地なのか」

という視点がより重要になります。

資産を増やすことだけでなく、不要な資産を適切に整理することも、これからの相続対策では欠かせません。

人口減少時代の土地政策は新しい段階へ

日本では空き家問題だけでなく、利用されない土地も増え続けています。

土地は所有しているだけでも、

・固定資産税
・除草や管理
・近隣への安全配慮

など、多くの責任を伴います。

そのため、「持つこと」が必ずしも資産になるとは限らない時代になっています。

今回の見直しは、不要な土地を市場へ戻し、新たな利用者へつなぐ仕組みづくりといえます。

今後は行政だけではなく、地域や民間企業との連携も一層重要になるでしょう。

結論

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国が引き取る制度として始まりましたが、今後は「いかに流通させるか」という段階へ進もうとしています。

価格を市場に合わせて柔軟に見直す仕組みは、人口減少社会における土地政策の現実的な対応策といえます。

相続では「資産を残すこと」だけが目的ではありません。管理や活用まで含めて考えることが重要です。

これからの時代は、「所有する価値」と「手放す価値」の両方を見極めながら資産を考えることが、より良い相続と持続可能な土地利用につながっていくでしょう。

参考

税のしるべ
2026年6月29日
財政審に相続土地国庫帰属制度の見直し方針示す、評価額を最大93%引き下げへ

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