NPO法人の決算書を見ると、多くの方が最初に戸惑う書類があります。
それが「活動計算書」です。
株式会社であれば損益計算書が作成されますが、NPO法人では活動計算書が中心的な役割を果たします。
名称が違うだけではありません。
その背景にある考え方も大きく異なります。
今回は、NPO法人会計の中心となる活動計算書について解説します。
活動計算書はNPO法人の成績表
活動計算書は、一年間の活動の結果を表す書類です。
企業の損益計算書に近い役割を持っていますが、目的は少し異なります。
企業では、
どれだけ利益を出したか
が重要です。
一方、NPO法人では、
どれだけ活動を行い
どれだけ資金を活用し
結果として財産がどう変化したか
を示すことが重要になります。
活動計算書は、NPO法人の一年間の活動を数字で説明する成績表といえるでしょう。
収益から費用を引いて計算する
活動計算書の基本構造はシンプルです。
まず経常収益を集計します。
その後、経常費用を差し引きます。
そして、
当期経常増減額
を計算します。
さらに経常外収益や経常外費用があれば加減し、
当期正味財産増減額
を算出します。
考え方としては企業会計の当期純利益と似ています。
しかし利益という言葉を使わず、正味財産の増減として表現するところにNPO法人会計の特徴があります。
収益の種類が企業とは違う
活動計算書の収益欄を見ると、企業会計にはない科目が並びます。
代表的なものは、
受取会費
受取寄付金
受取助成金等
事業収益
その他収益
です。
企業であれば売上高が中心になります。
しかしNPO法人では寄付金や会費が重要な財源になるため、独立した科目として表示されます。
これにより、その団体がどのような資金で運営されているのかが分かるようになっています。
費用は事業費と管理費に分かれる
NPO法人会計で特徴的なのが費用の分類です。
費用は大きく、
事業費
管理費
に区分されます。
事業費とは、目的とする活動に直接使われた費用です。
例えば、
支援活動費
講師謝金
教材費
イベント運営費
などが該当します。
一方で管理費は、
事務所家賃
管理部門人件費
会議費
通信費
など、法人運営のための費用です。
寄付者や会員は、この割合を見ることで資金が適切に使われているかを判断できます。
正味財産増減額とは何か
活動計算書の最終的な結果として表示されるのが、
当期正味財産増減額
です。
企業でいう当期純利益に近いものです。
例えば、
収益1,000万円
費用900万円
であれば、
正味財産増減額100万円
となります。
ただし、その100万円を誰かに配当するわけではありません。
NPO法人では翌年度以降の活動資金として蓄積されます。
ここが企業との大きな違いです。
次期繰越正味財産額が重要
活動計算書では、
前期繰越正味財産額
と
当期正味財産増減額
を合計して、
次期繰越正味財産額
を表示します。
これは翌年度へ引き継がれる財産です。
NPO法人の財務の健全性を見る上で重要な数字になります。
継続的に減少している場合は資金繰りに問題があるかもしれません。
逆に適度な蓄積があれば、安定した運営が可能になります。
寄付者が最も見たい書類
NPO法人の財務諸表の中で、寄付者や会員が最も注目するのが活動計算書です。
なぜなら、
どれだけ寄付が集まったのか
どれだけ事業に使われたのか
管理費は適正なのか
が分かるからです。
活動計算書は単なる会計書類ではありません。
社会からの信頼を得るための説明資料でもあるのです。
税理士に求められる視点
企業会計では利益分析が中心になります。
しかしNPO法人では、
活動内容
事業費割合
寄付金の使途
資金の流れ
などを理解することが重要です。
税理士には数字だけではなく、活動実態を読み取る力が求められます。
その意味で活動計算書は、NPO法人を理解するための最も重要な財務諸表といえるでしょう。
結論
活動計算書は、NPO法人の一年間の活動成果を表す最も重要な財務諸表です。
企業の損益計算書に似ていますが、利益ではなく正味財産の増減を示し、社会的活動の成果を説明する役割を持っています。
また、寄付金や会費の状況、事業費と管理費の割合などを通じて、法人の透明性や信頼性を示す重要な情報源でもあります。
NPO法人会計を理解する第一歩は、活動計算書を正しく読み解くことから始まるのです。
次回は、活動計算書と並ぶ重要書類である「貸借対照表」について解説したいと思います。
参考
東京税理士会目黒支部
「NPO法人の会計について」 税理士 脇坂誠也