マネー・ローンダリング対策について学んでいると、「FATF」という言葉をよく目にします。
犯収法の改正。
本人確認の強化。
実質的支配者の確認。
疑わしい取引の届出。
これらの背景にはFATFの存在があります。
税理士の中には、
「なぜ国際機関の話が自分の業務に関係するのか」
と思う方もいるでしょう。
しかし現在のマネロン対策を理解するためにはFATFの存在を避けて通ることはできません。
今回は国際的なマネロン対策のルールメーカーであるFATFについて考えてみます。
FATFとは何か
FATFは「金融活動作業部会」と呼ばれる国際機関です。
1989年に設立されました。
当初は麻薬取引による犯罪収益対策が目的でしたが、その後はテロ資金供与や大量破壊兵器拡散資金対策なども対象となっています。
現在では世界の主要国や地域機関が参加しており、マネロン対策の国際基準を策定しています。
日本も加盟国の一つです。
FATFは法律を作る機関ではない
意外に思われるかもしれませんが、FATF自体には法律を制定する権限はありません。
各国に命令する権限もありません。
ではなぜ影響力があるのでしょうか。
それは国際基準を作り、その実施状況を評価するからです。
加盟国はFATFの勧告に沿って制度整備を進めます。
その結果、日本の法律や実務にも影響が及ぶのです。
日本の犯収法もFATFの影響を受けている
税理士に関係する本人確認制度や実質的支配者確認制度も、国際基準との整合性を図る中で整備されてきました。
特に近年は、
顧客管理の強化
法人の透明性向上
疑わしい取引の把握
リスクベース・アプローチ
などが重視されています。
これらは全てFATFが示している考え方と深く関係しています。
なぜ税理士が対象になるのか
昔のマネロン対策は金融機関中心でした。
しかし現在では、
税理士
公認会計士
司法書士
行政書士
不動産業者
なども重要な役割を担っています。
FATFは犯罪組織が専門家の知識や社会的信用を利用する可能性を指摘しています。
そのため金融機関だけでなく、専門家にも一定の義務を求めているのです。
日本の税理士が犯収法の対象となっている背景には、この国際的な考え方があります。
FATFの評価は日本経済にも影響する
FATFの評価は単なる成績表ではありません。
もし対策が不十分と評価されれば、日本全体の信用にも影響します。
海外送金。
国際金融取引。
外国企業との取引。
こうした分野で不利益を受ける可能性があります。
つまりマネロン対策は治安の問題だけではなく、経済政策でもあるのです。
リスクベース・アプローチとは何か
近年のFATFで特に重視されている考え方がリスクベース・アプローチです。
全ての顧客を同じように扱うのではなく、リスクに応じて対応を変えるという考え方です。
例えば、
高額現金取引
海外取引
複雑な法人構造
実質的支配者が不明確な法人
などはリスクが高い可能性があります。
一方で一般的な取引については過度な負担を求めません。
合理的な管理を目指す考え方です。
税理士業務は国際化している
昔は国内だけを見ていれば十分な時代もありました。
しかし現在は、
海外資産
海外送金
国際相続
外国法人
暗号資産
など国境を越える案件が増えています。
税理士業務そのものが国際化しているのです。
そのため国際基準への理解も重要になっています。
FATFを知ることは未来を知ること
税理士の中には、
FATFは難しい
国際機関には興味がない
という方もいるかもしれません。
しかしFATFの動向は今後の制度改正の方向性を示しています。
本人確認の強化。
法人の透明化。
デジタル資産への対応。
これらは今後も続いていくでしょう。
FATFを知ることは税理士業界の未来を知ることにもつながるのです。
結論
FATFはマネー・ローンダリング対策の国際基準を策定する重要な機関です。日本の犯収法や税理士に求められる本人確認制度なども、その影響を大きく受けています。
現代の税理士業務は国際的なルールと無関係ではありません。FATFの考え方を理解することは、制度改正の背景を知り、これからの税理士業務の方向性を理解することにもつながるのです。
参考
警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「マネー・ローンダリング対策について」講義資料
警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「疑わしい取引の届出方法について」補助資料