疑わしい取引とはどのような取引なのか 判断基準編

税理士
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マネー・ローンダリング対策の中で、多くの税理士が最も悩むのが「疑わしい取引」の判断です。

明らかな違法行為であれば分かりやすいでしょう。

しかし実際の現場では、

少し違和感がある

説明が曖昧である

何となく不自然である

というケースがほとんどです。

犯罪収益移転防止法では、特定事業者に対して疑わしい取引への対応を求めています。しかし、何をもって「疑わしい」と判断するのでしょうか。

今回は税理士実務の視点から考えてみます。

疑わしい取引とは違法取引ではない

まず理解しておきたいのは、疑わしい取引と違法取引は同じではないということです。

違法取引であることが確定している必要はありません。

むしろ、

説明に不自然な点がある

通常とは異なる行動が見られる

資金の流れが理解しにくい

という段階で注意を払うことが求められています。

税理士に求められているのは犯罪の認定ではなく、合理的な注意義務なのです。

違和感は重要なサイン

実務では違和感が最初のサインになることがあります。

例えば、

事業内容を説明できない

資金源を説明したがらない

契約内容を理解していない

取引の目的が曖昧

過度に急いでいる

こうしたケースです。

一つだけなら問題がない場合もあります。

しかし複数の違和感が重なる場合には慎重な確認が必要になります。

顧客の行動パターンを見る

税理士は数字だけを見る仕事ではありません。

顧客の行動も重要な情報です。

例えば、

質問に答えたがらない

説明内容が頻繁に変わる

必要書類の提出を避ける

本人確認を嫌がる

第三者が常に介入する

こうした行動には注意が必要です。

もちろん正当な理由がある場合もあります。

しかし通常の取引と比較して不自然な点があれば確認を深めるべきでしょう。

資金の流れは説明できるか

税理士が特に注目すべきなのは資金の流れです。

どこから来たお金なのか。

なぜその金額なのか。

どこへ向かうのか。

これが説明できれば多くの疑問は解消されます。

逆に、

現金だから分からない

知人から預かった

昔から持っていた

という説明だけで詳細が不明な場合には慎重な対応が必要になります。

高額取引ほど注意が必要

高額な不動産取引。

多額の現金移動。

短期間での資産売買。

海外との送金。

これらは必ずしも問題ではありません。

しかし資金規模が大きくなるほど社会的な影響も大きくなります。

そのため確認の重要性も高まります。

税理士としては金額だけではなく、取引の背景にも目を向ける必要があります。

長年の顧問先でも油断できない

実務では「昔からの顧問先だから大丈夫」という心理が働くことがあります。

しかし長年の付き合いがある顧客であっても、状況が変化することがあります。

事業内容の変更。

経営者の交代。

資金調達環境の変化。

海外進出。

こうした変化によってリスクが生じることもあります。

信頼関係と確認作業は別の問題として考える必要があります。

判断に迷ったら何を見るか

疑わしい取引かどうか迷うことは珍しくありません。

その場合は、

合理的な説明があるか

資料で裏付けられるか

通常の商慣行と一致するか

取引目的が明確か

を確認します。

重要なのは直感だけで判断しないことです。

事実を積み重ねて総合的に判断する姿勢が求められます。

税理士は社会の安全網の一部

税理士の役割は税務申告だけではありません。

経済活動の入口や途中で関与する専門家として、社会の安全網の一部を担っています。

そのため疑わしい取引への注意は、顧客を疑うためではなく社会の信頼を守るための行動です。

適切な確認を行うことは顧客に対しても社会に対しても責任ある対応といえるでしょう。

結論

疑わしい取引とは、違法性が確定した取引ではなく、不自然な点や説明困難な点が見られる取引を指します。税理士に求められているのは犯罪の認定ではなく、合理的な注意義務を果たすことです。

取引の背景や資金の流れに関心を持ち、違和感を見逃さないことが重要です。税理士は数字を見る専門家であると同時に、社会の信頼を支える専門家でもあるのです。

参考

警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「マネー・ローンダリング対策について」講義資料

警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「疑わしい取引の届出方法について」補助資料

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