外形標準課税の計算方法を理解していても、顧問先へ説明するとなると難しさを感じる税理士は少なくありません。
特に経営者からは次のような質問を受けることがあります。
「赤字なのになぜ税金がかかるのですか」
「人を雇うと税金が増えるのですか」
「設備投資したのに税負担が減らないのですか」
これらの質問に対して、単に制度の説明をするだけでは十分ではありません。
今回は税理士が顧問先へ外形標準課税を説明する際の考え方について解説します。
経営者は税額より理由を知りたい
税理士はつい税額計算から説明しがちです。
しかし経営者が本当に知りたいのは計算式ではありません。
なぜその税金が発生するのかです。
例えば、
付加価値額
資本割
雇用安定控除額
と説明しても、多くの経営者には伝わりません。
むしろ、
「会社の規模に応じた税金です」
という説明の方が理解されやすいことがあります。
制度趣旨を先に説明することが重要です。
赤字でも課税される理由を説明する
外形標準課税で最も多い質問がこれです。
利益が出ていないのに税金が発生する理由です。
このとき税理士は、
「利益に対する税金ではなく、会社の活動規模に対する税金だからです」
と説明する必要があります。
企業は赤字でも、
従業員を雇い
工場を使い
事務所を借り
社会インフラを利用しています。
そのため一定の負担が求められるという考え方です。
ここを理解してもらうことが第一歩になります。
人を雇うと税金が増えるのか
経営者からよく聞かれる質問です。
確かに報酬給与額が増えれば付加価値額も増加します。
しかし実際には雇用安定控除額があります。
つまり制度は単純に雇用を不利に扱っているわけではありません。
むしろ雇用維持への配慮が組み込まれています。
税理士は税額だけを説明するのではなく、制度全体のバランスも伝える必要があります。
設備投資と税負担の関係
設備投資を行った経営者は、
「投資したのに税金が減らない」
と感じることがあります。
法人税だけを見れば減価償却費によって利益が減少し、税負担も軽減される可能性があります。
しかし外形標準課税は利益だけを見ていません。
事業活動全体を見ています。
ここが法人税との大きな違いです。
税理士は国税と地方税の考え方の違いを説明できなければなりません。
経営者が理解しやすい説明方法
実務で効果的なのは難しい税法用語を使わないことです。
例えば、
報酬給与額
→人にかかったコスト
純支払利子
→資金調達コスト
純支払賃借料
→場所を使うコスト
資本割
→会社の財務基盤への課税
と説明すると理解されやすくなります。
税理士の役割は税法を話すことではなく、顧問先に理解してもらうことです。
税理士は経営アドバイザーでもある
外形標準課税を理解している税理士は少なくありません。
しかし制度を経営者へ分かりやすく説明できる税理士は意外に多くありません。
顧問先が求めているのは申告書作成だけではありません。
経営判断への影響です。
設備投資
人材採用
組織再編
グループ経営
こうした判断に税務がどう関係するのかを知りたいのです。
申告書作成だけでは差別化できない時代
会計ソフトやAIの進歩によって、申告書作成の自動化は進んでいます。
しかし制度の背景を説明する仕事は残ります。
なぜその税金が発生するのか。
どのような経営判断が影響するのか。
将来どのようなリスクがあるのか。
こうした説明は今後も税理士の重要な役割です。
外形標準課税は、その力が試される代表的な分野といえるでしょう。
外形標準課税シリーズの総まとめ
本シリーズでは、
制度創設の背景
対象法人判定
第六号様式
報酬給与額
純支払利子
純支払賃借料
付加価値額
雇用安定控除額
資本割
分割基準
法人事業税
特別法人事業税
法人住民税
税務調査
まで解説してきました。
計算技術だけでなく、制度趣旨まで理解することが外形標準課税の本質です。
結論
外形標準課税を顧問先へ説明する際に重要なのは、税額計算ではなく制度の目的を伝えることです。
企業規模に応じた負担という考え方を理解してもらうことで、税額への納得感も高まります。
税理士は申告書を作る専門家であると同時に、制度を翻訳して経営者へ伝える専門家でもあります。
外形標準課税を説明できる力は、これからの税理士に求められる重要な価値の一つといえるでしょう。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」