スマートフォンは、仕事や生活に欠かせない存在になりました。調べ物、連絡、決済、情報収集など、一日中スマホを手放さない人も珍しくありません。
しかし、その便利さの裏側で、私たちの脳は想像以上に疲労しています。
最近では「スマホ認知症」という言葉も広まり、物忘れや集中力の低下、意欲の減退など、認知症に似た症状を訴える人が増えています。正式な病名ではありませんが、脳が休息する時間を失っていることへの警鐘として注目されています。
人生100年時代には、体だけではなく「脳の健康」を守ることも重要な資産になります。
脳は休んでいる時に働いている
人はぼんやりしている時、何もしていないように見えます。
しかし脳の中では「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という神経回路が働き、記憶を整理し、情報を分類し、感情を落ち着かせています。
つまり、ぼんやり過ごす時間は決して無駄ではありません。
むしろ脳にとっては、情報を整理する大切な時間なのです。
ところがスマホを常に見続ける生活では、この時間が失われます。
SNS、動画、ニュース、メール、チャットなど、新しい情報が次々に入ってくるため、脳は整理する暇がありません。
情報が積み重なり続けることで、脳は疲弊していきます。
情報が多すぎる時代の新しい疲労
現代人は肉体よりも脳を酷使しています。
仕事ではパソコン。
移動中はスマホ。
帰宅後も動画やSNS。
寝る直前まで画面を見る生活を送る人も少なくありません。
脳は一日中情報処理を続けることになり、休む時間がありません。
その結果、
・人の名前が思い出せない
・集中力が続かない
・やる気が出ない
・同じことを何度も確認する
・忘れ物が増える
といった症状が現れることがあります。
これらは年齢だけが原因とは限らず、脳疲労による可能性もあります。
スマホ認知症は改善できる
一般的な認知症との大きな違いは、生活習慣を見直すことで改善が期待できることです。
まず重要なのはスマホから離れる時間を作ることです。
通知を切る。
食事中は触らない。
寝室へ持ち込まない。
休日は意識的に使用時間を減らす。
こうした小さな工夫だけでも脳は休息を取り戻していきます。
さらに十分な睡眠を確保することも重要です。
睡眠中には脳内の情報整理が行われ、疲労回復が進みます。
忙しいから睡眠時間を削るという生活は、結果として仕事の効率まで低下させる可能性があります。
経営者や専門職ほど注意が必要
税理士をはじめ、経営者や士業は情報を扱う仕事です。
法改正。
税制改正。
経済ニュース。
顧客からの相談。
AIによる情報収集。
一日に触れる情報量は一般の人よりはるかに多くなっています。
だからこそ意識的に脳を休ませる時間が必要です。
散歩をする。
読書をする。
運動をする。
サウナに入る。
自然を見る。
こうした時間は決して仕事の妨げではなく、脳のパフォーマンスを回復させるための投資になります。
情報を増やす努力だけではなく、情報を整理する時間を確保することが、これからの知的生産性を左右します。
AI時代だからこそ脳を守る習慣が価値になる
AIは今後さらに便利になります。
仕事でも日常生活でも、私たちは今以上に多くの情報へ触れるでしょう。
しかし、人間の脳はAIのように無限の処理能力を持っているわけではありません。
便利な道具を使いこなすためには、使われないことが重要です。
情報を集める力だけではなく、情報を手放す力も必要になります。
人生100年時代では、長く働き、学び続けるためにも、脳を疲れさせない生活習慣そのものが競争力になります。
結論
スマートフォンは現代社会に欠かせない便利な道具ですが、使い方を誤れば脳を疲弊させる原因にもなります。
集中力や記憶力は年齢だけで決まるものではありません。脳に十分な休息を与え、情報を整理する時間を確保することで、本来の能力を維持しやすくなります。
AI時代だからこそ、情報を増やすことと同じくらい、脳を休ませる習慣を持つことが大切です。脳の健康は、人生100年時代を豊かに生き抜くための最も重要な資産の一つになるでしょう。
参考
日本経済新聞 朝刊 2026年6月27日
脳が疲労「スマホ認知症」 記憶障害や集中力低下など
日本経済新聞 朝刊 2026年6月27日
使用時間、10年で2倍に