給与が増えると事業税も増えるのか 報酬給与額の正体編

税理士
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外形標準課税を学び始めると、多くの経営者が驚くことがあります。

それは、

「従業員の給与が増えると事業税も増える」

という事実です。

普通に考えれば、給与は会社の経費です。

利益を減らす要素ですから、税金も減るように思えます。

実際、法人税は利益に課税されるため、給与が増えれば課税所得は減少します。

ところが、外形標準課税では違います。

給与そのものが付加価値額を構成するため、給与が増えるほど課税標準も増えることになります。

なぜそのような仕組みになっているのでしょうか。

今回は、外形標準課税の中心的要素である「報酬給与額」の本質について考えてみます。

報酬給与額とは何か

報酬給与額とは、役員や従業員に対して支払った給与等の総額をいいます。

具体的には、

役員報酬

従業員給与

賞与

退職金

賃金

各種手当

などが含まれます。

さらに、

確定給付企業年金

企業型確定拠出年金

退職金共済掛金

などの事業主負担部分も対象になります。

つまり、単純な給与だけではありません。

会社が人材に対して支出した金額の大部分が報酬給与額として扱われるのです。

なぜ給与が付加価値になるのか

ここで多くの経営者は疑問を持ちます。

「給与は会社から出ていくお金なのに、なぜ付加価値なのか」

ということです。

しかし視点を変えると理解しやすくなります。

企業が生み出した価値は、最終的に誰かに分配されます。

従業員には給与として分配されます。

銀行には利息として分配されます。

大家には家賃として分配されます。

そして残った部分が利益として企業内部に残ります。

つまり給与とは、

企業が生み出した価値の分配先

なのです。

会社から見れば経費ですが、社会全体から見れば価値の分配です。

外形標準課税はこの社会的な視点で企業活動を見ています。

従業員を大切にする会社ほど不利なのか

ここで、

「従業員にたくさん給料を払う会社が損をする制度ではないか」

という意見があります。

確かに表面的にはそう見えます。

しかし実際にはそう単純ではありません。

高い給与を支払える企業は、それだけ高い付加価値を生み出していることが多いからです。

例えば、

年間売上10億円

利益5,000万円

給与総額4億円

という会社と、

年間売上10億円

利益5,000万円

給与総額1億円

という会社があったとします。

どちらも利益は同じですが、社会全体に分配している価値は大きく異なります。

外形標準課税は、その違いを反映しようとしているのです。

パートやアルバイトも対象になる

報酬給与額は正社員だけが対象ではありません。

パートタイマー

アルバイト

非常勤役員

短時間勤務者

なども対象になります。

雇用期間の長短は関係ありません。

つまり、

「雇用形態が違うから対象外」

という考え方は通用しません。

企業が人材を活用して事業活動を行っている以上、その対価は原則として報酬給与額に含まれるのです。

含まれないものもある

一方で、全てが対象になるわけではありません。

例えば、

所得税で非課税となる一定の通勤手当

法定福利費の事業主負担分

賞与引当金繰入額

請負契約の代金

などは報酬給与額に含まれません。

特に重要なのは社会保険料です。

健康保険

厚生年金

介護保険

雇用保険

などの会社負担分は報酬給与額には入りません。

実務では見落としやすいポイントです。

退職金も対象になる理由

意外に感じる方も多いのが退職金です。

退職金も報酬給与額に含まれます。

理由は簡単です。

退職金も長年の労務提供に対する対価だからです。

退職時にまとめて支払われますが、本質的には給与の後払いです。

そのため、外形標準課税でも報酬給与額として扱われます。

大量退職が発生した年度に付加価値額が大きく増えるケースがあるのはこのためです。

AI時代に価値を生むのは人か機械か

近年はAIや自動化が急速に進んでいます。

企業経営者の中には、

「人を減らしてAIに置き換えた方がよいのではないか」

と考える方もいるかもしれません。

しかし興味深いことに、外形標準課税は依然として人への分配を重要視しています。

企業価値の源泉として人材を重視しているとも言えます。

AIが普及しても、

企画する人

判断する人

責任を負う人

顧客と信頼関係を築く人

の価値は残ります。

給与は単なるコストではありません。

企業が生み出した価値の分配そのものなのです。

税理士が説明できるべきこと

経営者から、

「なぜ給与に税金がかかるのですか」

と質問されたとき、

「法律で決まっているからです」

では十分な説明とは言えません。

本当に重要なのは、

給与は企業が生み出した価値の分配だから

という制度の背景を説明できることです。

AIが計算する時代になればなるほど、制度の意味を説明する能力が税理士の付加価値になっていくでしょう。

結論

報酬給与額は外形標準課税における付加価値額の中心的な構成要素です。

役員報酬、給与、賞与、退職金、企業年金掛金など、人材に対する支出の多くが対象になります。

これは給与に課税しているのではなく、企業が生み出した価値の分配を評価しているためです。

外形標準課税を理解するうえでは、給与を単なるコストではなく「企業が社会へ還元した価値」として捉える視点が重要なのです。

参考

近畿税理士会

「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎② 外形標準課税対象法人の付加価値割の基礎」

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