外形標準課税とは何か なぜ赤字でも事業税がかかるのか

税理士
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会社経営者の中には、「今年は赤字だったのに事業税がかかった」という経験を持つ方が少なくありません。

一般的に税金は利益に対して課税されるものというイメージがあります。そのため、赤字であれば税金は発生しないと考えがちです。しかし、一定規模以上の法人には「外形標準課税」という制度が適用され、利益が出ていなくても事業税が発生する場合があります。

この制度は、多くの経営者にとって分かりにくい税制の一つです。しかし、その考え方を理解すると、税金の仕組みだけでなく、国が企業に何を求めているのかも見えてきます。

今回は、外形標準課税の基本的な考え方について整理してみます。

利益課税と外形課税の違い

通常の法人税は利益に対して課税されます。

売上から経費を差し引き、最終的に利益が出れば税金が発生し、赤字であれば原則として税金は発生しません。

これは企業の「儲け」に着目した課税です。

一方、外形標準課税は企業の「活動そのもの」に着目した課税です。

企業が従業員を雇い、事務所を借り、資金を調達しながら事業活動を行っている以上、その活動量に応じて一定の税負担を求めるという考え方です。

つまり、

・利益に課税するのが法人税

・活動量に課税するのが外形標準課税

という違いがあります。

この発想の違いを理解することが重要です。

なぜ赤字企業にも課税するのか

行政サービスは黒字企業だけが利用しているわけではありません。

道路

警察

消防

上下水道

都市インフラ

これらは赤字企業も黒字企業も同じように利用しています。

また、大企業の中には巨額の売上を上げながら、減価償却費や過去の欠損金などによって会計上は赤字になる企業もあります。

もし利益だけを基準に課税すると、大規模な事業活動を行っているにもかかわらず税負担が極端に少なくなる場合があります。

そこで導入されたのが外形標準課税です。

企業が社会インフラを利用しながら活動している以上、その活動量に応じて一定の負担を求めるという考え方なのです。

付加価値額という考え方

外形標準課税の中心となるのが「付加価値額」です。

付加価値額とは、企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値を表すものです。

具体的には、

・従業員への給与

・金融機関への利息

・地主への賃借料

・企業自身の利益

などを合計して計算します。

つまり、企業が生み出した価値は、

従業員に分配された部分

金融機関に分配された部分

不動産所有者に分配された部分

企業内部に残った利益

に分かれるという考え方です。

企業が生み出した価値全体を把握するために、利益だけではなく、給与や家賃なども含めて考えるのです。

経営者が誤解しやすいポイント

経営者の中には、

「利益が出ていないのだから税金は払いたくない」

と感じる方もいます。

気持ちは理解できます。

しかし、外形標準課税の考え方では、

利益がゼロでも

従業員に給与を支払い

銀行に利息を支払い

家主に家賃を支払い

事業活動を続けている

のであれば、企業として一定の価値を生み出していると考えます。

つまり、赤字だから価値を生み出していないとは限らないのです。

この視点は経営分析にも役立ちます。

利益だけを見ていると会社の実態を見誤ることがありますが、給与や設備投資、人材育成なども含めて考えると企業の本当の活動量が見えてきます。

税理士に求められる説明力

外形標準課税は申告書を作成するだけなら難しくありません。

しかし、経営者に制度の趣旨を説明することは意外に難しいものです。

税理士は単に計算するだけではなく、

なぜこの税金が発生するのか

なぜ赤字でも課税されるのか

なぜ給与や利息が関係するのか

を分かりやすく説明できる必要があります。

AIが計算を支援する時代になればなるほど、この説明力の価値は高まっていくでしょう。

経営者が知りたいのは数字そのものではなく、その数字の意味だからです。

外形標準課税から見える企業経営の本質

外形標準課税は単なる税金の制度ではありません。

企業とは何かを考えさせる制度でもあります。

企業は利益を生み出すだけの存在ではありません。

従業員に給与を支払い、

取引先に利益をもたらし、

地域経済を支え、

社会全体に価値を生み出しています。

その活動の大きさを測ろうとした結果が付加価値額という考え方です。

経営者にとっては税負担として映る制度ですが、別の見方をすれば、自社がどれだけ社会に価値を提供しているかを示す指標とも言えるでしょう。

結論

外形標準課税は利益ではなく企業活動そのものに着目した課税制度です。

そのため、赤字であっても給与や利息、賃借料などを支払いながら事業活動を行っている企業には事業税が課される場合があります。

この制度の本質は、「企業が生み出した価値」に応じて負担を求めるという考え方にあります。

税務申告のためだけに理解するのではなく、企業経営の本質を考えるきっかけとして捉えると、外形標準課税は非常に興味深い制度と言えるのではないでしょうか。

参考

近畿税理士会

「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎② 外形標準課税対象法人の付加価値割の基礎」

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