税理士事務所と聞くと、多くの人は職員が何人も働き、会計ソフトへ入力し、申告書を作成する姿を思い浮かべるでしょう。
しかし、その風景は2040年には大きく変わっているかもしれません。
AIの進化、クラウド会計の普及、電子帳簿保存法の定着、電子申告の完全普及によって、税理士事務所の業務構造そのものが変化し始めています。
そこで浮上するのが、「2040年の税理士事務所は職員ゼロになるのか」という問いです。
結論から言えば、すべての事務所が職員ゼロになるわけではありません。しかし、職員ゼロでも十分に成立する税理士事務所が現在よりはるかに増える可能性があります。
今回は未来の税理士事務所の姿を考えてみます。
入力業務はほぼ自動化される
これまで税理士事務所の職員が担ってきた最大の仕事は入力業務でした。
領収書を整理し、
会計ソフトへ入力し、
試算表を作成し、
申告書を作成する。
長年、これが税理士事務所の基本的なビジネスモデルでした。
しかし2040年には、
・銀行口座
・クレジットカード
・請求書システム
・POSレジ
・給与システム
などが自動連携されるようになります。
AIは仕訳を自動生成し、異常な取引だけを人間に確認するようになるでしょう。
入力専門職員の需要は大きく減少すると考えられます。
申告書作成業務も変わる
現在でも法人税や所得税の申告ソフトは高度化しています。
2040年にはAIが税法を理解し、
・別表作成
・消費税計算
・地方税計算
・税額比較
まで自動化する可能性があります。
税理士が行う作業は、
「申告書を作る」
から
「申告内容を確認する」
へ変わるでしょう。
これは税理士業務の大きな転換点になります。
職員ゼロ事務所が増える理由
職員ゼロ事務所が増える最大の理由は固定費の削減です。
職員を雇用すると、
・給与
・社会保険
・教育費
・採用コスト
・管理コスト
が発生します。
一方でAIやクラウドサービスは年々高性能になり、コストは低下しています。
その結果、
「AI+外部専門家ネットワーク」
という形が一般的になる可能性があります。
事務所内部に職員を抱えるよりも、必要に応じて専門家と連携する方が効率的になるからです。
未来の税理士は伴走者になる
2040年の税理士の主な仕事は何でしょうか。
それは入力でも申告書作成でもありません。
顧客の意思決定支援です。
例えば、
・退職金設計
・相続対策
・事業承継
・資産運用
・社会保険
・年金相談
・家族信託
などです。
AIは計算できます。
しかし人生の選択は計算だけでは決まりません。
だからこそ、人間の税理士の価値が残るのです。
大規模事務所と小規模事務所の二極化
2040年には税理士業界の二極化も進むでしょう。
一方には、
数百人規模の職員を抱える大手事務所があります。
AIを活用しながら大量処理を行います。
もう一方には、
税理士1人または夫婦だけで運営する超小規模事務所があります。
こちらは高付加価値相談業務に特化します。
中間層の事務所は競争が厳しくなるかもしれません。
大量処理では大手に勝てず、高付加価値相談では専門特化事務所に勝てないからです。
事務所という場所も不要になる
2040年には事務所の概念そのものが変わります。
クラウド環境が整えば、
・顧客対応
・会議
・書類共有
・契約
・請求
すべてオンラインで完結できます。
税理士は自宅やサテライトオフィスから全国の顧客を支援するようになります。
「駅前の事務所を借りること」が成功の象徴だった時代は終わるかもしれません。
職員ゼロでも信頼は作れるのか
ここで重要な問題があります。
職員ゼロ事務所は本当に顧客から信頼されるのでしょうか。
答えは十分に可能です。
なぜなら顧客が求めているのは人数ではなく成果だからです。
むしろ、
・専門性
・対応速度
・説明力
・発信力
の方が重要になります。
2040年には、
事務所の規模よりも個人ブランドが選ばれる時代になる可能性があります。
人生100年時代の税理士事務所
人生100年時代になると、税理士自身も70歳、80歳まで働くことが珍しくなくなります。
その時に重要なのは、
大きな組織を維持することではなく、
無理なく続けられる仕組みを持つことです。
AIを活用し、
オンラインを活用し、
専門家ネットワークを活用する。
こうした仕組みが整えば、高齢になっても活動を継続できます。
税理士事務所は「人を増やす経営」から「仕組みを強くする経営」へ変わるのです。
結論
2040年の税理士事務所がすべて職員ゼロになるわけではありません。
しかし、AIとクラウドの進化によって、職員を抱えなくても十分に成立する事務所は確実に増えるでしょう。
入力業務や申告書作成業務の価値は低下し、税理士の仕事は人生や経営の意思決定を支援する伴走業務へ移行します。
未来の税理士事務所が競うのは職員数ではありません。
どれだけ深い知識を持ち、どれだけ信頼され、どれだけ顧客の人生に寄り添えるかです。
2040年の税理士事務所の強さは、規模ではなく価値によって決まる時代になっているのかもしれません。
参考
税のしるべ
2026年6月1日
令和8年5月・徴収部長会議、KSK2の徴収システムにマネジメントアプリ