親が亡くなった後、子ども世代を悩ませる問題の一つが「実家じまい」です。
かつては親族が集まり、家財を整理し、家を売却したり引き継いだりすることが一般的でした。しかし少子高齢化や人口減少が進む現在、実家を引き継ぐ人がいないケースが増えています。
さらに、子ども世代が遠方で暮らしていることも珍しくありません。その結果、空き家の管理や売却、遺品整理などの負担が大きな社会問題となっています。
最近では、不動産売却から遺品処分までを一括して引き受ける「実家じまい代行サービス」が広がっています。この動きは何を意味しているのでしょうか。
実家じまいが増えている背景
実家じまいが増えている最大の理由は、家を継ぐという考え方が大きく変化したことです。
高度経済成長期には、多くの人が親元の近くで暮らし、実家を維持することが自然な選択でした。しかし現在は進学や就職によって都市部へ移り住み、そのまま定住する人が増えています。
親が亡くなった後、相続した実家は「思い出の場所」である一方、「管理責任のある不動産」に変わります。
特に地方の住宅は人口減少の影響を受けやすく、売却したくても買い手が見つからない場合があります。
その結果、
・固定資産税の負担
・草刈りや建物管理
・近隣からの苦情対応
・老朽化による修繕費
などが子ども世代に重くのしかかることになります。
空き家放置のリスク
実家をそのまま放置することには大きなリスクがあります。
建物は人が住まなくなると急速に傷み始めます。
雨漏りやシロアリ被害が進み、雑草や樹木が隣地へ越境することもあります。害虫や害獣が発生するケースも少なくありません。
また、空き家が原因で事故が発生した場合、所有者が責任を問われる可能性があります。
2023年の住宅・土地統計調査では全国の空き家は約900万戸に達しました。
今後、高齢化の進展とともに空き家問題はさらに深刻化すると予想されています。
実家じまいは個人の問題であると同時に、地域社会全体の課題でもあるのです。
実家じまい代行サービスとは何か
近年注目されているのが、実家じまいを一括で支援するサービスです。
従来は、
・不動産会社
・遺品整理業者
・司法書士
・解体業者
などに個別に依頼する必要がありました。
しかし最近は、これらをワンストップで対応する事業者が増えています。
利用者から見ると、
・複数業者とのやり取りが不要
・遠方からでも手続きできる
・相続登記や売却相談も可能
というメリットがあります。
特に仕事や子育てで忙しい40代から60代の子ども世代にとっては、大きな負担軽減につながっています。
実家じまいで注意すべきこと
便利なサービスである一方、注意点もあります。
最も重要なのは「複数社に相談すること」です。
実家の評価額は事業者によって大きく異なる場合があります。
また、事業者によって得意分野も異なります。
ある会社はリフォーム再販が得意かもしれませんし、別の会社は投資家向け販売を得意としているかもしれません。
提示された金額だけでなく、
・費用負担の有無
・残置物処分の範囲
・契約条件
・売却後の活用方法
なども確認することが重要です。
さらに、地方では「誰に売るか」が近隣関係や親族関係に影響することもあります。
単なる不動産取引として考えるのではなく、地域との関係も考慮する必要があります。
親が元気なうちに話し合う重要性
実家じまいで最も大切なのは、親が元気なうちから話し合うことです。
多くの家庭では、
「縁起でもない」
「まだ早い」
という理由で先送りされがちです。
しかし実際には、親が亡くなってから初めて問題に直面し、子どもが苦労するケースが少なくありません。
例えば、
・家を残したいのか
・売却してよいのか
・仏壇や墓をどうするのか
・残したい品物は何か
などを事前に確認しておくだけでも負担は大きく変わります。
実家じまいは不動産の処分ではなく、家族の意思を整理する作業でもあるのです。
実家じまいは人生設計の一部
人生100年時代において、実家じまいは特別な出来事ではなくなりつつあります。
親世代が築いた家をどう引き継ぎ、どう整理するかは、多くの家庭が直面する課題です。
空き家を放置すれば管理負担や経済的負担は増え続けます。一方で、早めに準備を進めれば選択肢は広がります。
実家じまいとは家を処分することではありません。
親の人生を整理し、次の世代へ負担を残さないための家族のプロジェクトです。
その第一歩は、親が元気なうちに家族で話し合いを始めることではないでしょうか。
結論
実家じまいは今後ますます増加する社会課題です。人口減少と高齢化が進むなか、空き家を放置するコストは年々大きくなっています。
近年はワンストップ代行サービスの普及により、子ども世代の負担は軽減されつつあります。しかし、最も重要なのはサービスを利用することではなく、親が元気なうちから家族で将来を話し合うことです。
実家じまいは不動産の問題ではなく、家族の未来を考える機会でもあります。早めの準備こそが、親世代と子世代の双方にとって最良の選択につながるのです。
参考
・日本経済新聞 2026年6月6日朝刊「実家じまい、代行広がる 物件買い取りから遺品処分を一括 子世代、負担減で重宝」
・日本経済新聞 2026年6月6日朝刊「空き家、全国で900万戸 売却時、複数事業者に査定依頼を」