令和7年分の所得税確定申告では、e-Tax利用者が1,814万人に達し、申告者全体の77.1%を占めました。確定申告を行う人の約4人に3人が電子申告を利用していることになります。
かつては税務署へ出向き、紙の申告書を提出することが一般的でした。しかし現在は、自宅のパソコンやスマートフォンから申告を完了できる時代になっています。
こうした流れを見ると、「いずれe-Tax利用率は100%になるのではないか」と考える人も少なくありません。
果たして日本は完全電子申告の時代を迎えるのでしょうか。
e-Tax普及は予想以上のスピードで進んだ
e-Taxが開始されたのは平成16年です。
当初は電子証明書やICカードリーダーの準備が必要で、利用率は低迷していました。税理士事務所であっても紙申告が中心であり、多くの納税者にとって電子申告は身近な存在ではありませんでした。
しかし状況は大きく変わりました。
マイナンバーカードの普及、スマートフォン対応、マイナポータル連携の拡大によって利用環境が劇的に改善されたのです。
特に近年は、申告書を紙で作成して郵送するよりも、スマホで送信した方が簡単なケースも増えています。
利用率77%という数字は、日本の税務行政がデジタル化の新しい段階に入ったことを示しているといえるでしょう。
100%を阻む最後の壁
一方で、利用率100%は簡単には実現しません。
最大の理由はデジタル格差です。
高齢者の中にはスマートフォンやパソコンの操作に不安を感じる人もいます。また、インターネット環境が十分でない地域や、電子機器の利用そのものを好まない人も存在します。
さらに、税務手続に対する心理的な不安もあります。
「紙で提出した方が安心」
「税務署で相談しながら申告したい」
「電子データだけでは不安」
という考え方は今後も一定数残るでしょう。
制度面だけでなく、人間の行動や価値観が電子化の限界を決める側面もあります。
企業分野では100%に近づく可能性が高い
個人より先に電子化が進むと考えられるのが法人分野です。
大企業ではすでに電子申告が事実上の標準になっています。
また、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を通じて、会計データの電子化も急速に進みました。
今後は法人税、消費税、地方税の申告から納税までが完全デジタル化される可能性があります。
経理業務全体がクラウド会計と連携することで、申告データの作成から送信まで自動化される企業も増えていくでしょう。
マイナポータル連携が普及の鍵になる
利用率100%に近づくためには、入力作業そのものを減らす必要があります。
その中心にあるのがマイナポータル連携です。
現在でも、
・給与情報
・公的年金情報
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・医療費通知情報
・ふるさと納税情報
などが自動取得できるようになっています。
将来的には金融機関や証券会社、不動産取引などの情報連携も進む可能性があります。
納税者が入力する項目が減れば減るほど、電子申告への抵抗感は小さくなります。
その先にある「申告レス社会」
本当に注目すべきなのは、利用率100%そのものではありません。
むしろその先にある「申告レス社会」です。
会社員や年金受給者の多くは、行政が保有するデータだけで税額計算が可能になるかもしれません。
所得情報、控除情報、金融情報などが適切に連携されれば、納税者自身が申告書を作成する必要はなくなります。
行政側が計算した内容を確認し、承認するだけの仕組みが実現する可能性があります。
北欧諸国ではすでに類似した制度が導入されています。
日本でも長期的には同様の方向へ進むことが予想されます。
税理士の役割はどう変わるのか
電子申告の普及が進むと、「税理士は不要になるのではないか」と言われることがあります。
しかし実際には逆の側面もあります。
申告作業が自動化されるほど、
・税務判断
・節税対策
・相続対策
・事業承継
・資産形成
・税務リスク管理
といった専門的な助言の価値は高まります。
将来の税理士は申告書を作る専門家というよりも、税務・財務・人生設計を支援するアドバイザーとしての役割が強くなるでしょう。
完全電子化は実現するのか
利用率100%という数字だけを見れば、完全達成は難しいかもしれません。
紙を希望する人は一定数残り続ける可能性があります。
しかし実質的には90%台後半まで普及し、多くの納税者にとって電子申告が当たり前になる未来は十分考えられます。
そして本当に重要なのは、紙か電子かではありません。
納税者の負担を減らし、正確で公平な課税を実現することです。
電子申告はそのための手段であり、最終的な目標ではないのです。
結論
e-Tax利用率はすでに77%を超え、日本の税務手続は本格的なデジタル時代へ入りました。
今後もスマートフォン申告やマイナポータル連携の拡大により、利用率はさらに上昇していくでしょう。
ただし、本当の変化は利用率100%ではなく、その先にある申告レス社会の実現にあります。
電子申告の普及は、納税者の手続を簡素化し、行政の効率化を進めるだけではありません。税理士の役割や税務行政そのものを変える可能性を持っています。
e-Tax利用率100%時代を考えることは、日本の税務の未来を考えることでもあるのです。
参考
税のしるべ 2026年6月1日
「7年分所得税申告でe-Taxの利用は1814万人、申告者全体の77.1%がe-Tax」