贈与税はなぜ過去最高になったのか 相続時精算課税と生前贈与の新時代

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

相続税対策として長年活用されてきた生前贈与ですが、近年は制度改正が相次ぎ、贈与を取り巻く環境が大きく変化しています。

国税庁が公表した令和7年分の贈与税の確定申告状況によると、申告人員や納税人員は減少したにもかかわらず、申告納税額は過去最高となりました。また、令和5年度税制改正で注目を集めた相続時精算課税制度は利用者数がわずかに減少した一方で、納税額は過去最高となっています。

今回は、最新の贈与税申告状況を通じて、生前贈与の現状と今後の相続対策について考えてみます。

贈与税収は過去最高を記録

令和7年分の贈与税申告では、申告人員は46万8,000人で前年より減少しました。

しかし、申告納税額は5,038億円となり、平成13年に基礎控除額110万円へ引き上げられて以降、過去最高を更新しました。

特に注目されるのは1人当たりの納税額です。

平均納税額は156万円となり、前年から約32%増加しました。

つまり、贈与税を支払う人の数は減っているものの、1件当たりの贈与額が大きくなっていることを意味しています。

背景には、近年の株価上昇や不動産価格の上昇などによる資産価値の増加があると考えられます。

相続時精算課税制度の利用は一服

令和6年から相続時精算課税制度に新たな110万円の基礎控除が設けられました。

これにより、

・毎年110万円までの贈与は申告不要

・基礎控除部分は相続財産への加算不要

という大きなメリットが生まれました。

制度改正直後の令和6年分では利用者が急増しましたが、令和7年分では7万7,000人となり、前年より1,000人減少しました。

一見すると制度改正の効果が薄れたようにも見えます。

しかし実際には、制度を利用するべき人への普及が一巡した結果と見ることもできます。

利用者数は微減したものの、納税額は823億円と過去最高となっており、高額資産家を中心に積極的な活用が進んでいることがうかがえます。

暦年課税は本当に不利になったのか

令和5年度税制改正では、相続開始前贈与の加算期間が3年から7年へ延長されました。

この改正により、

「暦年贈与は使えなくなった」

という見方も一部で広がりました。

しかし、実際の申告状況を見ると、暦年課税による申告人員は39万1,000人と依然として圧倒的多数を占めています。

納税額も4,215億円と過去最高を記録しました。

これは、多くの家庭においては依然として暦年課税が有効な選択肢であることを示しています。

特に、

・相続まで十分な期間がある

・毎年少額ずつ資産移転したい

・将来の制度変更リスクを抑えたい

といったケースでは、暦年課税の活用価値は依然として高いと考えられます。

住宅取得資金贈与の利用も増加

住宅取得等資金の贈与税非課税制度も利用が増加しています。

申告人員は5万3,000人となり、前年より約17%増加しました。

本制度は本来令和5年末で終了する予定でしたが、税制改正により令和8年末まで延長されています。

住宅価格の上昇や住宅ローン金利の先高観などを背景に、親世代から子世代への住宅取得支援が活発化していることが読み取れます。

少子高齢化が進む中、相続時ではなく生前に資産を移転する流れは今後も続く可能性があります。

生前贈与は「節税」から「資産移転」へ

かつて生前贈与は相続税対策として語られることが多くありました。

しかし現在は考え方が変わりつつあります。

人生100年時代を迎え、相続が発生する年齢は高齢化しています。

その結果、

「親が90歳を超えてから財産を受け継ぐ」

というケースも珍しくありません。

そのため、

・住宅購入資金

・子育て資金

・教育資金

・起業資金

など、必要な時期に資産を移転することの重要性が高まっています。

生前贈与は単なる節税手段ではなく、家族内で資産を有効活用するための仕組みへと変化しているのです。

制度選択が重要な時代へ

今後は、

・暦年課税

・相続時精算課税

・住宅取得等資金贈与

・教育資金一括贈与

・結婚・子育て資金贈与

など複数の制度を比較しながら選択することが求められます。

どの制度が有利かは資産額だけでは決まりません。

相続人の年齢や家族構成、保有資産の種類、将来の相続税負担などによって最適解は変わります。

制度改正が続く現在、生前贈与は「とりあえず毎年110万円贈与する」時代から、「家族全体の資産承継戦略を考える」時代へ移行しているといえるでしょう。

結論

令和7年分の贈与税申告では、申告人員が減少する一方で申告納税額は過去最高となりました。

相続時精算課税制度は利用者数こそ微減したものの、納税額は過去最高を更新し、制度改正の効果が引き続き現れています。また、暦年課税も依然として多くの納税者に利用されており、生前贈与の重要性は変わっていません。

これからの相続対策は、単なる節税ではなく、いつ・誰に・どのように資産を移転するかという「資産承継戦略」が重要になります。制度改正の内容を理解し、自身の家族に合った方法を選択することが求められる時代になったといえるでしょう。

参考

・税のしるべ 2026年6月1日号
「7年分贈与税の確定申告状況、相続時精算課税の適用は微減の7万7000人」

・国税庁「令和7年分贈与税の申告状況について」公表資料

・国税庁「相続時精算課税制度のあらまし」関連資料

・令和5年度税制改正大綱(相続税・贈与税関係)

タイトルとURLをコピーしました