住宅価格の上昇が続くなか、20代でマイホームを購入する人が増えています。
かつては「結婚して子どもが生まれてから住宅を購入する」という流れが一般的でした。しかし近年は、住宅価格の上昇や共働き世帯の増加を背景に、20代のうちに住宅を取得するケースが目立つようになっています。
一方で、住宅価格の高騰に対応するために、ペアローンや50年ローンなどを活用して多額の借り入れを行う事例も増えています。
住宅購入は人生最大の買い物ともいわれます。若いうちに住宅を取得することにはメリットもありますが、同時に見落とされがちなリスクも存在します。
今回は、20代の住宅購入が増えている背景と、そのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。
20代の持ち家率が上昇している背景
総務省の家計調査によると、世帯主が29歳以下の2人以上世帯の持ち家率は近年上昇傾向にあります。
背景には大きく三つの要因があります。
一つ目は住宅価格の上昇です。
首都圏を中心にマンション価格は上昇を続けています。購入を検討している人の中には、「今買わなければさらに高くなる」という心理が働いています。
二つ目は共働き世帯の増加です。
夫婦それぞれが収入を得ることが一般的になり、世帯収入全体では以前より高い借入額を確保しやすくなりました。
三つ目は住宅ローン商品の変化です。
従来の35年返済だけでなく、40年や50年の超長期ローンを取り扱う金融機関が増えています。返済期間を延ばすことで月々の返済額を抑えられるため、高額な住宅でも購入しやすくなっています。
こうした環境変化が、20代の住宅購入を後押ししているのです。
ペアローンと超長期ローンの拡大
近年の住宅購入で特徴的なのが、ペアローンや連帯債務の利用拡大です。
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを借り入れる方法です。
例えば夫が4,000万円、妻が3,000万円を借りれば、合計7,000万円の住宅を購入できます。
また連帯債務型では、夫婦双方の収入を合算して借入額を増やすことができます。
これらの制度は住宅取得の可能性を広げる一方で、住宅購入が「夫婦二人の収入が永続的に続くこと」を前提にしている点には注意が必要です。
さらに返済期間が50年に及ぶ住宅ローンも増えています。
返済期間が長くなれば毎月の返済負担は軽くなります。
しかし、総返済額は大きく増加します。
また返済開始当初は元本がなかなか減らないため、住宅価格が下落すると売却してもローンが残る可能性があります。
住宅ローンは借りられる金額ではなく、無理なく返せる金額で考えることが重要です。
20代特有のリスクとは何か
20代で住宅を購入する場合、30代や40代にはないリスクがあります。
それはライフプランが確定していないことです。
結婚直後の夫婦は、将来の働き方や家族構成が大きく変化する可能性があります。
例えば、
・子どもが生まれる
・育児休業を取得する
・転職する
・親の介護が発生する
・転勤になる
といった出来事は珍しくありません。
購入時には十分な返済能力があったとしても、その後の環境変化によって家計は大きく変わります。
特にペアローンを利用している場合、どちらか一方の収入が減少すると返済計画が狂う可能性があります。
住宅ローンの審査は「現在の収入」で行われますが、実際の返済は「将来の収入」で続けることになります。
だからこそ、現在だけでなく将来を見据えた計画が必要なのです。
資産価値は本当に上がり続けるのか
最近の住宅購入者の中には、
「将来は高く売れる」
という前提で購入を決断する人も少なくありません。
確かに過去数年間は首都圏を中心に住宅価格が上昇しました。
しかし、将来も同じ状況が続くとは限りません。
不動産市場には景気や金利、人口動態など多くの要因が影響します。
特に日本は人口減少社会に入っています。
都心部の一部を除けば、住宅価格が上昇し続ける保証はありません。
住宅は投資商品ではなく、まずは生活の基盤です。
値上がり益を前提とした購入は慎重に考える必要があります。
住宅購入を検討する際には、
「価格が上がらなくても住み続けられるか」
という視点を持つことが大切です。
若いうちに住宅を買うメリット
もちろん、20代で住宅を購入すること自体が悪いわけではありません。
若いうちに購入するメリットもあります。
まず住宅ローン完済時の年齢を若くできます。
35年ローンを30歳で借りれば65歳で完済できます。
また住宅ローン控除などの税制優遇も利用できます。
さらに賃貸住宅と比較して、長期的には住居費を抑えられる可能性もあります。
何より、自分の住まいを持つ安心感を得られることは大きな魅力です。
重要なのは購入時期そのものではなく、無理のない資金計画を立てることです。
結論
20代の住宅購入が増えている背景には、住宅価格の高騰や共働き世帯の増加、住宅ローン商品の多様化があります。
若いうちに住宅を取得することは合理的な選択肢の一つですが、その一方で多額の負債を長期間抱えるリスクもあります。
特にペアローンや50年ローンは、購入可能額を大きく押し上げる反面、将来の収入変化やライフスタイルの変化に弱い側面があります。
住宅購入で大切なのは、「今買えるか」ではなく「将来も無理なく住み続けられるか」という視点です。
住宅は人生を豊かにするための手段であり、家計を圧迫する目的になってはいけません。
住宅価格の上昇に焦るのではなく、自分たちの人生設計に合った選択をすることが、長期的な満足につながるのではないでしょうか。
参考
・日本経済新聞 2026年5月30日朝刊「20代の持ち家、家計に危うさ 『超長期』『ペア』ローン多額に」
・総務省「家計調査」
・住宅金融支援機構「民間住宅ローンの実態に関する調査」
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」