相続した不要な土地は手放せるのか―相続土地国庫帰属制度の仕組みと実務

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相続によって土地を取得したものの、利用予定がなく管理に困るケースは年々増えています。人口減少や地方の過疎化を背景に、売却も難しく、固定資産税や管理負担だけが残る土地は珍しくありません。

こうした問題に対応する制度として、2023年4月に相続土地国庫帰属制度が創設されました。本記事では、この制度の仕組みと利用条件、実務上の注意点について整理します。


制度の概要と背景

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地を一定の条件のもとで国に引き渡すことができる制度です。

従来は、不要な土地であっても所有権を放棄することができず、相続人が管理責任を負い続ける必要がありました。その結果、管理が行き届かない土地の増加や、いわゆる所有者不明土地問題が深刻化していました。

本制度は、こうした問題の解消を目的として創設されたものであり、2025年末時点で帰属件数は2,000件を超えています。宅地や農地を中心に一定の活用が進んでいる点は注目されます。


利用できる人の範囲

本制度を利用できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した人に限られます。

ここで重要なのは、取得の原因が限定されている点です。売買や贈与によって取得した土地は対象外となります。一方で、制度開始前に相続した土地についても申請は可能とされています。

このため、過去に相続したまま放置している土地についても、一定の条件を満たせば活用できる制度です。


帰属が認められる土地の要件

制度の利用には厳格な要件が設けられており、すべての土地が対象となるわけではありません。

主な要件は以下のとおりです。

・建物が存在しない更地であること
・一定基準を超える崖が存在しないこと
・管理や処分を阻害する障害物(車両や資材等)がないこと
・抵当権などの担保権や賃借権などが設定されていないこと
・境界が明確であること

これらの条件は、国が引き取った後の管理負担を考慮して設定されています。つまり、「管理が容易な土地」であることが前提となっています。

この点からも、本制度はすべての不要土地を受け入れる仕組みではなく、一定の選別が行われる制度であることが理解できます。


手続きの流れ

実務上の手続きは大きく3つのステップに分かれます。

第一に、法務局への事前相談です。土地の状況が制度要件を満たしているかを確認するため、登記事項証明書や現地写真などを準備することが望まれます。

第二に、申請書類の作成と提出です。提出後は書面審査や現地調査などが行われ、承認の可否が判断されます。

第三に、承認後の負担金の納付です。負担金の納付が完了した時点で、土地の所有権は国に移転します。

審査期間は標準的には約8カ月とされていますが、個別事情により長期化するケースもあるため、時間的余裕をもった対応が必要です。


費用負担の仕組み

制度の利用には一定の費用が発生します。

申請時には、土地1筆あたり1万4,000円の審査手数料が必要です。また、審査が承認された場合には、原則として1筆あたり20万円の負担金を納付する必要があります。

ただし、この負担金は一律ではなく、土地の種類や面積によって増額される場合があります。

この点は実務上の重要な判断材料となります。売却が難しい土地であっても、負担金を支払ってまで手放すべきかどうかは、個別の状況に応じた検討が必要です。


実務上の注意点

本制度を活用する際には、いくつかの実務上の留意点があります。

第一に、要件のハードルが高い点です。特に境界未確定や権利関係の整理が不十分な土地は、申請が認められない可能性があります。

第二に、費用と時間のバランスです。審査期間が長期に及ぶ可能性があるため、相続手続全体のスケジュールとの整合を意識する必要があります。

第三に、他の選択肢との比較検討です。売却、寄付、隣接地所有者への譲渡など、複数の処分方法を比較した上で判断することが重要です。


結論

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地の処分手段として一定の役割を果たす制度です。ただし、利用には厳格な要件と費用負担が伴い、すべてのケースで有効とは限りません。

重要なのは、相続時点で土地の将来価値や管理負担を見据え、早期に対応方針を検討することです。制度はあくまで選択肢の一つであり、他の処分方法との比較を通じて最適な判断を行うことが求められます。


参考

・法務省 相続土地国庫帰属制度の概要および統計資料(2025年公表)
・日本FP協会 相続土地国庫帰属制度に関する解説資料(2025年)

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