医療費控除の実務に大きな変化が生じています。これまで毎年送付されていた「医療費のお知らせ」が、制度のデジタル化に伴い廃止される方向に動いています。
今後はマイナポータルを通じたデータ取得が基本となり、確定申告の方法や注意点も変わります。
本稿では、医療費のお知らせ廃止の動きと、マイナポータル連携による医療費控除の実務を整理します。
医療費のお知らせ廃止の背景
全国健康保険協会や健康保険組合では、医療費のお知らせの一斉送付を終了する動きが広がっています。
これまで紙で送付されていた医療費のお知らせは、令和8年1月送付分をもって終了予定とされています。今後は、原則としてマイナポータルでの確認に移行し、希望者のみ申請により送付される形になります。
この背景には、以下の要因があります。
・マイナンバーカードの普及
・行政手続のデジタル化
・郵送コストの削減
・リアルタイム性の向上
つまり、制度の本質は「紙からデータへ」の転換です。
マイナポータル連携による医療費控除の仕組み
マイナポータルを活用することで、医療費控除の申告は大きく簡素化されます。
e-Taxで確定申告を行う場合、医療費通知情報(XML形式)を取得し、そのまま申告書に自動反映することが可能です。
この仕組みにより、以下のメリットが生じます。
・医療費の入力作業が不要
・計算ミスの防止
・添付書類としてそのまま送信可能
特に重要なのは、医療費通知情報を使用した場合には領収書の保存が不要となる点です。これは実務上の負担軽減として非常に大きいポイントです。
医療費通知情報と紙のお知らせの違い
ここで注意すべきは、「医療費のお知らせ」と「医療費通知情報」は別物であるという点です。
医療費通知情報は、審査支払機関のデータを基に作成されるため、すべての医療費が含まれるわけではありません。
具体的には、以下のような費用は含まれません。
・高額療養費の還付に関する調整分
・療養費(立替払い)
・はり・きゅう・マッサージ費用
・柔道整復(整骨院など)
・自由診療や差額ベッド代
・一部の保険薬局での支払分
つまり、マイナポータルのデータだけでは医療費控除が完結しないケースがあるということです。
データ利用時の実務上の注意点
マイナポータルを利用する場合でも、いくつか重要な実務上の留意点があります。
1 年間データの取得時期
医療費通知情報は、例年2月頃に前年1年分がまとめて取得可能となります。
そのため、早期申告を行う場合にはデータが未反映の可能性があります。
2 PDFは原本ではない
マイナポータル上の画面やPDFは「原本」ではありません。
これを基に申告する場合は、領収書の保存が必要となります。
3 家族分の取扱い
家族の医療費は自動では表示されません。
マイナポータル上で代理人設定を行う必要があります。
今後の確定申告で求められる対応
今後の医療費控除は、次のような対応が実務上必要になります。
・自分の保険者が紙通知を送付するか確認
・マイナポータル連携の事前設定
・データに含まれない医療費の把握
・領収書保存の要否の判断
これまでのように「送られてきた書類を基に申告する」というスタイルから、「自分でデータを取得・補完する」スタイルへ変化しています。
制度変更の本質
今回の制度変更は単なる手続きの変更ではありません。
本質は、「証明書中心の申告」から「データ連携中心の申告」への転換です。
これにより、
・正確性の向上
・事務負担の軽減
・行政コストの削減
が実現される一方で、納税者側にはデジタル対応力が求められるようになります。
結論
医療費のお知らせの廃止は、確定申告のデジタル化の流れの一環です。
マイナポータル連携により、医療費控除の手続は効率化される一方、データに含まれない医療費の管理や、家族分の取扱いなど、新たな実務上の注意点も生じます。
今後は、
「データを活用する部分」と「自分で補完する部分」
を正しく切り分けることが、医療費控除の適正申告において重要となります。
参考
税のしるべ(2026年3月30日)
医療費のお知らせで一斉送付終了の動き広がる、協会けんぽは申請で送付へ