非上場株式評価見直しで税務調査はどう変わるのか―否認リスクの構造変化(税務調査編)

税理士
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非上場株式の評価見直しは、単に株価や税額に影響を与えるだけではありません。実務上より重要なのは、「税務調査の見方がどう変わるか」という点です。

評価方法が変わるということは、当局のチェックポイントも変わることを意味します。本稿では、改正前後で否認リスクがどのように変化するのかを整理します。


税務調査の本質は「評価の合理性の検証」

まず前提として、税務調査における評価の論点は一貫しています。

・評価方法の選択が合理的か
・評価結果が実態と乖離していないか
・形式と実質が一致しているか

評価通達が存在する以上、原則としては通達に従っていれば問題は生じにくい構造です。

しかし、評価通達の見直し局面では、この前提が揺らぎます。


改正前に高まる否認リスク

制度改正前は、税務調査リスクが一時的に高まる局面といえます。

駆け込み対策への警戒強化

改正が見込まれる場合、納税者側は対策を前倒しで実行する傾向があります。

これに対して当局は、

・短期間で行われた取引
・評価引下げを目的とした操作
・形式的なスキーム

に対して、より厳しい目を向ける可能性があります。


評価通達6項の適用余地の拡大

評価通達6項は、通達に従った評価であっても、著しく不適当な場合に修正できる規定です。

改正前の局面では、

・節税意図が明確な取引
・経済合理性に乏しい行為

に対して、6項適用が検討されるケースが増える可能性があります。


「実質判断」の比重増加

形式的に通達に従っていても、

・実態が伴っていない
・経済合理性が説明できない

場合には否認リスクが高まります。

特に、

・利益操作
・資産移転
・評価時点の調整

といった行為は重点的にチェックされると考えられます。


改正後に変わる調査の視点

評価方法が見直された後は、税務調査の焦点も変化します。

評価方法の適用判断が中心論点に

新しい評価方式が導入されると、

・どの評価方法を適用したか
・適用要件を満たしているか
・計算過程に誤りがないか

といった点が主要なチェックポイントになります。


純資産評価に伴う論点の増加

純資産ベースにシフトした場合、

・資産の時価評価の妥当性
・含み益の認識方法
・評価基準日の適切性

といった新たな論点が増加します。

従来よりも「評価の中身」そのものが問われる場面が増えると考えられます。


6項適用の位置付けの変化

評価方式が実態に近づけば、

・形式的評価と実態の乖離は縮小
・6項適用の必要性は相対的に低下

すると考えられます。

ただし、

・特殊事例
・異常な取引

に対する最終的なセーフティネットとしての役割は維持されます。


改正前後で共通するリスク要因

制度が変わっても、否認リスクの本質は大きくは変わりません。

共通するポイントは以下の通りです。

・経済合理性が説明できるか
・取引の実態があるか
・一貫したロジックで説明できるか

つまり、

・形式だけ整えた対策
・短期的な操作

は、常にリスクを伴います。


実務上のリスクコントロール

否認リスクを抑えるための実務対応は、改正前後で共通しています。

説明可能性の確保

・なぜその取引を行ったのか
・どのような経営判断に基づくのか

を明確に説明できる状態にしておくことが重要です。


証拠の整備

・取締役会議事録
・契約書
・評価資料
・意思決定プロセスの記録

これらの整備が、調査対応の質を左右します。


時間軸の合理性

・取引のタイミングが不自然でないか
・改正を見越した不自然な集中がないか

といった点も重要な判断材料となります。


実務で注意すべき「危険ゾーン」

特に注意が必要な行為として、以下が挙げられます。

・短期間での株価引下げ策の集中実行
・形式的な資産移転
・利益調整のみを目的とした取引
・実態を伴わない組織再編

これらは、

・改正前は6項適用
・改正後は評価否認

の対象となる可能性があります。


結論

非上場株式評価の見直しは、税務調査のあり方にも影響を与えます。

改正前は、

・駆け込み対策への監視強化
・6項適用リスクの上昇

改正後は、

・評価方法の適用判断
・資産評価の妥当性

が主要論点となります。

しかし最も重要なのは、制度が変わっても本質は変わらないという点です。

・実態に基づく判断
・合理的な説明
・一貫したロジック

これらを備えた対応こそが、最も有効なリスク対策となります。

税務調査は制度の変化に応じて形を変えますが、「実質を見る」という基本姿勢は変わりません。この前提を踏まえた対応が、今後の実務において不可欠となります。


参考

・税のしるべ 2026年4月20日
 インタビュー 私が見た 税を巡る 点と線 北本高男氏に非上場株式の相続税評価見直しの行方を聞く

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