物流業界では「2024年問題」が大きな話題となりましたが、2026年はその次の転換点といえる年になります。
これまで物流の課題は「運送会社の問題」と考えられることが多くありました。しかし、法改正によって荷主企業にも責任が及ぶ仕組みが整備され、物流に対する企業の姿勢そのものが問われる時代へと変わりました。
「配送は運送会社に任せているから問題ない」と考えている経営者ほど、今回の制度改正を正しく理解する必要があります。
荷主企業にも法的責任が広がる時代
2026年1月に施行された改正取適法では、「特定運送委託」という新しい考え方が導入されました。
従来は、運送会社同士の取引や下請取引が主な対象でした。しかし改正後は、荷主企業が運送を委託する場合も法律の対象となるケースが大幅に増えています。
つまり、物流トラブルや不適切な取引について、「運送会社だけの問題」とは言えなくなりました。
企業がどのような発注を行い、どのような条件で配送を依頼しているかまで確認される時代になったのです。
問題は現場ではなく経営判断から始まる
物流の問題というと、多くの人は現場を思い浮かべます。
長時間の荷待ち。
積み降ろし作業。
ドライバー不足。
確かに問題は現場で発生しています。
しかし、その原因は現場ではなく、経営や発注の仕組みにあることが少なくありません。
例えば、
・納品時間を短時間に集中させる
・契約にない作業を当然のように依頼する
・運賃交渉に応じない
・急な配送変更を繰り返す
こうした意思決定は現場ではなく、本社や営業部門、購買部門などで行われています。
つまり、現場で起きる問題は経営判断の結果なのです。
契約書だけ直しても問題は解決しない
法改正を受け、多くの企業は契約書の見直しを進めています。
もちろん契約書は重要です。
しかし、それだけでは十分とはいえません。
契約書では車上渡しとなっていても、実際には倉庫担当者がドライバーに積み降ろし作業を依頼していることがあります。
営業担当者が納期を優先して現場へ無理な依頼をしてしまうこともあります。
契約と実際の運用が一致していなければ、法令違反のリスクは残ったままです。
企業は「契約どおりに運用されているか」を継続的に確認する仕組みづくりが必要になります。
部門ごとの判断が物流リスクを生み出す
物流には多くの部署が関係しています。
営業。
購買。
製造。
物流。
倉庫。
それぞれが個別に判断すると、企業全体として整合性が取れなくなります。
営業は売上を優先します。
製造は生産効率を優先します。
物流部門は配送効率を重視します。
それぞれが正しい判断をしていても、全体としてはドライバーへの負担が増え、法令違反につながることがあります。
だからこそ、物流は一部門だけの仕事ではなく、会社全体で取り組む経営課題なのです。
データに基づく物流管理が求められる
これからの物流管理では感覚ではなくデータが重要になります。
例えば、
・荷待ち時間
・積み降ろし時間
・配送回数
・附帯作業時間
・運賃交渉の履歴
・コスト構造
こうしたデータを蓄積し、経営判断に活用することが求められます。
問題が起きてから対応するのではなく、データによって兆候を把握し、改善につなげることが重要になります。
物流DXが進む理由も、まさにここにあります。
税理士も物流コンプライアンスを理解する時代へ
物流と税理士は一見関係がないように思えます。
しかし、実際には深く関係しています。
顧問税理士は毎月の試算表から、
・物流コストの増加
・外注費の変化
・利益率の悪化
・在庫回転率の低下
などを把握できます。
数字の変化から物流上の課題を発見し、経営者へ改善を提案できれば、税理士の付加価値はさらに高まります。
これからは税務だけではなく、企業全体のリスク管理を支援する伴走者としての役割が期待されるでしょう。
結論
物流は運送会社だけが担うものではありません。
法改正によって、荷主企業も物流の責任を負う時代になりました。
重要なのは、現場で起きた問題だけを見るのではなく、その背景にある経営判断や発注方法まで見直すことです。
物流は企業活動を支える重要なインフラです。
法令を守るだけではなく、持続可能な物流を実現することが、企業の信用向上や競争力の強化にもつながります。
これからの経営では、「物流は経営そのもの」であるという視点を持つことが、ますます重要になるでしょう。
参考
企業実務 2026年7月号
その配送委託、実は違反かも? 取適法改正で荷主企業に課される新たな責任