遺留分という制度があることは知っていても、「実際にはどうやって請求するのか」までは知らない人が少なくありません。
以前は、遺留分を侵害された場合、相続した財産そのものを取り戻す仕組みでした。
しかし、この方法では不動産や株式が共有状態となり、新たな相続トラブルを招くこともありました。
そこで相続法の改正により、現在は金銭による請求を基本とする制度へ変更されています。
今回は、「遺留分侵害額請求」の仕組みについて解説します。
遺留分侵害額請求とは金銭で解決する制度
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、その不足分に相当する金銭の支払いを求める制度です。
例えば、
「全財産を長男に相続させる」
という遺言があり、配偶者や他の子どもの遺留分が侵害された場合には、その不足分をお金で請求することができます。
現在は、財産そのものを取り戻すのではなく、金銭債権として請求する点が大きな特徴です。
制度改正で共有トラブルを減らした
以前の制度では、「遺留分減殺請求」と呼ばれていました。
この制度では、不動産や株式などの財産そのものについて権利を取り戻す仕組みだったため、一つの不動産を複数の相続人が共有するケースが多くありました。
共有になると、
- 売却できない
- 管理方法で対立する
- 活用方法が決まらない
といった問題が起こりやすくなります。
そこで現在は、金銭で解決する方式へ改められ、事業承継や不動産管理への影響を小さくする制度へ見直されました。
まずは話し合いで解決を目指す
遺留分侵害額請求は、いきなり裁判を起こさなければならない制度ではありません。
まずは当事者同士で話し合いを行い、支払額や支払方法について合意を目指すことが一般的です。
話し合いでまとまらない場合には、家庭裁判所での調停や、その後の訴訟へ進むことになります。
相続は家族間の問題でもあるため、できるだけ円満な解決を図ることが望まれています。
請求には期限がある
遺留分侵害額請求は、いつまでも請求できるわけではありません。
法律では、遺留分が侵害されていることを知った時から一年以内に権利を行使しなければならないとされています。
また、相続開始から一定期間が経過すると、侵害を知らなかった場合でも請求できなくなります。
そのため、
「あとで考えよう」
と放置してしまうと、大切な権利を失う可能性があります。
相続の内容に疑問を感じた場合には、できるだけ早く確認することが重要です。
遺言を作る側も遺留分を意識する必要がある
遺留分侵害額請求は、請求する側だけが知っておけばよい制度ではありません。
遺言を作成する人にとっても重要な制度です。
例えば、
後継者へ会社を集中して承継させたい。
長年介護してくれた子どもへ多く財産を残したい。
社会貢献のために財産を寄付したい。
このような希望があっても、遺留分を大きく侵害していると、相続後に請求を受ける可能性があります。
そのため、円満な相続を実現するためには、遺言作成の段階から遺留分への配慮が欠かせません。
結論
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、不足する相当額を金銭で請求できる制度です。
相続法の改正によって、従来のような財産の共有状態を避けやすくなり、相続後のトラブルを減らすことが期待されています。
一方で、請求には期限があり、遺言を作成する側も遺留分を十分に考慮する必要があります。
遺言の自由と家族の権利とのバランスを保つために、遺留分侵害額請求は現代の相続制度において重要な役割を果たしているのです。
参考
日本税理士会連合会 令和7年度全国統一研修会「相続法概説」(早川眞一郎)