通勤手当の非課税限度額改正で企業が今すぐ見直すべき実務とは

税理士
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通勤手当は、多くの企業で当たり前のように支給されています。しかし、税制改正によって非課税限度額が見直されると、給与計算や就業規則、通勤経路の管理まで影響が及びます。

2025年には約11年ぶりとなるマイカー通勤の非課税限度額の引き上げが行われ、さらに2026年度税制改正では新たな距離区分や駐車場料金の取扱いが追加されました。

一見すると「金額が変わっただけ」のように見えますが、企業実務では想像以上に確認事項が増えています。今回は通勤手当制度の改正ポイントと、経理・総務担当者が押さえるべき実務対応について解説します。

通勤手当が非課税となる理由

給与として支給されるお金は原則として課税対象です。

しかし通勤手当は、従業員が会社で働くために必要となる費用であり、実費弁償的な性格を持っています。

もし通勤費まで給与として課税してしまえば、従業員の実質的な負担が増えてしまいます。そのため税法では、通常必要と認められる範囲については一定額まで所得税を課さない仕組みとなっています。

つまり、非課税制度は従業員への優遇ではなく、公平な税負担を実現するための制度なのです。

約11年ぶりとなった大きな見直し

近年はガソリン価格の上昇や通勤距離の長距離化など、社会環境が大きく変化しました。

こうした実態を踏まえ、2025年にはマイカー通勤者などの非課税限度額が約11年ぶりに引き上げられました。

さらに2026年度改正では、

・65km以上の新しい距離区分の新設

・一定条件を満たす駐車場料金を月額5,000円まで非課税対象へ追加

など、実務に影響する改正が行われています。

特に地方企業では、自動車通勤が中心となるため影響は決して小さくありません。

金額だけではなく支給根拠が重要になる

通勤手当の実務では、「いくら支給するか」だけではありません。

税務上は

・最も経済的かつ合理的な経路か

・実際の通勤実態に合っているか

・通常必要な範囲か

という点が重要になります。

例えば、最も安い経路だけが合理的とは限りません。

乗換回数や通勤時間、身体的負担なども考慮されるため、企業は従業員ごとの事情を踏まえて判断する必要があります。

駐車場料金も新たな管理対象になる

今回の改正で注目されるのが駐車場料金です。

一定の条件を満たす場合には、月額5,000円まで非課税限度額に加算できるようになりました。

ただし、対象となるのは、

・勤務先周辺

・通勤で利用する駅周辺

など、通勤のために通常必要と認められる駐車場等に限られます。

自宅近くの駐車場などは対象外となるため注意が必要です。

また、複数の駐車場を利用している場合や、コインパーキングを利用している場合など、それぞれ計算方法が異なります。

制度を理解しないまま運用すると、誤った非課税処理を行ってしまう可能性があります。

税務調査では実態が確認される

税務調査では、通勤手当も確認対象になります。

例えば、

・実際と異なる通勤経路

・過大な通勤距離

・利用実態のない定期券

・グリーン料金など合理性のない費用

こうしたケースでは、非課税として認められない可能性があります。

そのため企業では、

通勤経路申請書

住所変更届

駐車場利用の証明資料

などを適切に保管し、定期的に確認する仕組みづくりが重要になります。

給与計算システムだけでは対応は終わらない

制度改正があると、多くの企業は給与ソフトだけを更新して終わりにしがちです。

しかし、本当に重要なのは運用体制です。

例えば、

・通勤手当規程の見直し

・転居時の届出ルール

・通勤経路変更時の申請

・駐車場料金変更時の報告

・証憑書類の保管

こうしたルールが整備されて初めて、正しい運用が実現できます。

経理部門だけでなく、人事・総務部門とも連携した管理体制づくりが求められるでしょう。

結論

通勤手当は毎月支給される身近な制度ですが、税制改正によって実務は着実に複雑化しています。

今回の改正では非課税限度額の変更だけでなく、駐車場料金の取扱いや通勤実態の確認など、新たな管理項目も追加されました。

給与計算を正しく行うことはもちろん重要ですが、それ以上に求められるのは、実態に即した通勤管理と社内ルールの整備です。

制度改正を単なる法令対応として終わらせるのではなく、企業全体の労務・税務管理を見直す機会として活用することが、これからの経営には欠かせない視点になるでしょう。

参考

企業実務 2026年7月号

通勤手当の「非課税限度額」改正の実務対応Q&A

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