自社株評価はなぜ事業承継の最大の課題になるのか 株価対策編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

事業承継を考える際、多くの経営者が最初に気にするのは「相続税はいくらかかるのか」という点です。

しかし、その相続税額を左右する最も重要な要素は、自社株の評価額です。

会社の業績が順調で利益や資産が増えるほど、自社株の価値も高まり、結果として相続税や贈与税の負担も大きくなる可能性があります。

つまり、企業の成長がそのまま事業承継の負担につながるという、一見すると矛盾した状況が生まれることもあるのです。

今回は、自社株評価がなぜ事業承継の最大の課題といわれるのか、その理由を考えてみます。

自社株評価とは何か

上場企業の株式であれば、市場価格によって価値が決まります。

一方、中小企業の株式は市場で自由に売買されていないため、一定の評価方法に基づいて価値を算定します。

会社の利益水準や純資産、配当実績、企業規模など、さまざまな要素を組み合わせて評価額が決まります。

そのため、経営者自身が「そんなに価値があるとは思わなかった」と驚くほど高い評価額になることも珍しくありません。

業績が良い会社ほど負担が大きくなる

企業経営では、利益を増やし、財務基盤を強化することが重要です。

ところが、それによって自社株の評価額が上昇すると、将来の相続税負担も増加する場合があります。

長年にわたって利益を積み重ね、内部留保を厚くしてきた企業ほど、この傾向は強くなります。

経営努力が企業価値を高める一方で、承継時には思わぬ税負担を招くことがあるため、早めの対策が重要になります。

株価が高いと後継者の負担も重くなる

後継者が自社株を相続または贈与で取得する場合、その評価額に応じて税負担が発生します。

現金収入を伴わない株式であっても、税金は現金で納めなければなりません。

そのため、納税資金を準備するために借入れを行ったり、会社資産を処分したりするケースもあります。

こうした状況は、会社の成長資金を圧迫し、事業の継続にも影響を及ぼしかねません。

株価対策は節税だけが目的ではない

自社株対策という言葉を聞くと、「株価を下げること」が目的だと思われがちです。

しかし、本来の目的は円滑な事業承継を実現することです。

適切な組織再編や配当政策、持株会社の活用、資本政策などを検討しながら、会社の将来を見据えた対策を進めることが重要になります。

単なる税負担の軽減ではなく、経営の安定と企業価値の維持を両立させる視点が欠かせません。

早期の準備が最大の対策になる

事業承継対策は、経営者が元気なうちに始めるほど選択肢が広がります。

後継者の育成、株式の移転、組織体制の整備などは、一朝一夕では実現できません。

税制改正によって制度が変わる可能性もあるため、数年単位ではなく、十年程度の長期的な視点で準備を進めることが理想です。

時間を味方につけることが、最も効果的な事業承継対策といえるでしょう。

自社株評価は経営の健康診断でもある

自社株評価は、税金を計算するためだけの数字ではありません。

利益水準や資産構成、財務内容など、企業の経営状況を総合的に映し出す指標でもあります。

評価額が上がった理由を分析することで、自社の強みや課題を客観的に把握できる場合もあります。

事業承継だけでなく、中長期の経営戦略を考える上でも、自社株評価を定期的に確認することには大きな意味があります。

結論

自社株評価は、単なる税務上の計算ではなく、企業価値そのものを表す重要な指標です。

評価額が高くなること自体は企業の成長の証ですが、それに伴う税負担や資金負担にも目を向けなければなりません。

事業承継税制を活用するかどうかにかかわらず、自社株評価を正しく理解し、早い段階から承継計画を進めることが、会社を次世代へ確実に引き継ぐための大きな鍵となるでしょう。

参考

税のしるべ

2026年6月29日

会計士協会が9年度税制改正の意見書を公表、事業承継税制の緩和など求める

タイトルとURLをコピーしました