経理詐欺を防ぐ最後の砦は誰か(経営者編)社長がやるべき“たった1つの対策”

会計
グレーとモスグリーン WEBデザイン 特集 ブログアイキャッチ - 1

企業を狙った詐欺は年々高度化し、経理部門だけで防ぐことは難しくなっています。実際に発生している事例の多くは、経理担当者のミスではなく、「社長の指示に従った結果」として起きています。

つまり、経理詐欺は現場の問題ではなく、経営の問題です。

では、経営者は何をすべきなのでしょうか。結論から言えば、対策は多くありません。むしろ、やるべきことは極めてシンプルです。

本稿では、実務の観点から、社長が取るべき“たった1つの対策”を明確にします。


なぜ経理では防げないのかという構造

経理部門には通常、厳格な承認フローが存在します。

  • 作成者と承認者の分離
  • ダブルチェック
  • システム統制

しかし、詐欺はこの仕組みの外側で起こります。

典型的なのは、

  • 社長を装った緊急指示
  • 「今日中」「極秘」といった圧力
  • 相談を禁じるメッセージ

といったケースです。

このとき、経理担当者の頭の中では「通常フロー」と「社長指示」が衝突します。

そして多くの場合、優先されるのは社長指示です。

つまり、どれだけ統制を整備しても、「社長の一言」で崩れる構造になっています。


社長自身が“最大のリスク要因”になる理由

経営者にとって耳の痛い話ですが、現実として最も悪用されやすい存在は社長です。

理由は明確です。

  • 社長の指示は絶対視されやすい
  • 緊急対応を正当化できる
  • 例外処理の根拠になる

さらに、組織文化として

  • 社長に確認しづらい
  • 忙しそうで遠慮する
  • 判断を仰ぐことをためらう

といった空気があると、リスクは一気に高まります。

詐欺グループはこの構造を熟知しています。

したがって、経理を守るためには、社長自身が「悪用される前提」で動く必要があります。


社長がやるべき“たった1つの対策”

結論はシンプルです。

「金銭に関する例外指示は、必ず直接確認を受ける」ことを自ら宣言することです。

これだけです。

具体的には次のように明確化します。

  • メールやチャットだけで送金指示はしない
  • 例外的な支払は必ず電話または対面で確認させる
  • 昼夜問わず確認を受けることを許容する
  • 確認がない支払は無効とする

重要なのは、「ルールを作ること」ではなく、「社長自身がそれを言い切ること」です。

この一言があるかどうかで、経理担当者の行動は大きく変わります。


なぜこの対策だけで防げるのか

詐欺の多くは「確認できない状況」を作ることで成立します。

  • 今すぐ対応しないといけない
  • 他人に相談できない
  • 本人に確認できない

この3つが揃ったとき、判断ミスが起こります。

逆に言えば、

必ず本人確認をする

というルールが徹底されれば、詐欺は成立しません。

どれだけ巧妙なメールや音声であっても、最終的に本人確認が入る限り、そこで止まります。


ルールを機能させるための前提条件

ただし、この対策には前提があります。

それは「確認しやすい関係性」です。

  • 社長に気軽に連絡できるか
  • 夜間や休日でも遠慮せず確認できるか
  • 確認することが評価されるか

この環境がなければ、ルールは形骸化します。

したがって、社長がやるべきことはもう一つあります。

「確認してくれてありがとう」と言うことです。

この一言が、組織の安全性を大きく高めます。


経営者が見落としがちな本質

多くの経営者は、

  • システムを強化すればよい
  • 経理に注意喚起すればよい

と考えがちです。

しかし、それだけでは不十分です。

なぜなら、詐欺は「仕組み」ではなく「人」を突破してくるからです。

そして、その突破口として最も使われるのが「社長の権威」です。

つまり、経営者が守るべきは資金ではなく、「自分の名前の使われ方」です。


結論

経理詐欺を防ぐために、社長がやるべきことは多くありません。

しかし、その1つは決定的に重要です。

例外的な金銭指示は、必ず直接確認させることを自ら宣言すること

このルールがあるだけで、詐欺の大半は防ぐことができます。

経理担当者に責任を求める前に、まず経営者自身が“突破されない仕組み”を作ることが必要です。

それが、結果として会社全体を守る最もシンプルで強力な対策になります。


参考

企業実務 2026年5月号
実際に起きた経理にまつわる詐欺被害と実務防衛策

タイトルとURLをコピーしました