税務調査で帳簿を預けるときに知っておくべきこと 実務対応編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

税務調査では、税務職員から「この帳簿をお預かりします」と言われることがあります。

経営者の中には、「帳簿を持ち帰られてしまった」「返してもらえるのだろうか」「断ることはできるのだろうか」と不安を感じる方も少なくありません。

しかし、税務署が帳簿や資料を預かる行為にも、国税通則法による明確なルールがあります。

税務署が自由に帳簿を持ち帰れるわけではなく、納税者にも知っておくべき権利があります。

今回は、提出物件の留置き制度について、税理士実務の視点から分かりやすく解説します。

提出物件の留置きとは何か

国税通則法では、税務調査のために提出された帳簿や書類について、必要がある場合には税務署が留め置くことができると定められています。

「留置き」という言葉は難しく聞こえますが、簡単に言えば、

一定期間、税務署が資料を預かること

です。

例えば、

総勘定元帳

契約書

請求書

領収書

売上資料

電子媒体

などが対象になることがあります。

これらを税務署内で詳しく確認する必要がある場合、一時的に預かることが認められています。

留置きは任意提出が前提

重要なのは、留置きは強制的な差押えではないということです。

税務調査は行政調査であり、刑事事件の捜査ではありません。

そのため、帳簿を預けることも、納税者が任意に提出したことが前提となります。

つまり、

「提出してください」

という依頼に応じて初めて留置きが成立します。

税務署が一方的に帳簿を持ち去る制度ではありません。

この点は、犯罪捜査における差押えとは大きく異なる点です。

税務署には適切に管理する義務がある

税務署が資料を預かった場合には、その管理についても法律上の責任があります。

講義資料でも説明されているように、税務署は預かった資料について善良な管理者として適切に保管しなければなりません。

当然ながら、

紛失

破損

情報漏えい

などが起きないよう十分な注意義務があります。

企業の重要な契約書や個人情報を含む資料も多いため、税務署には高い管理責任が求められています。

必要がなくなれば返還される

留置きは永久に続くものではありません。

調査が終了した場合や、資料を保管しておく必要がなくなった場合には、速やかに返還しなければならないとされています。

また、提出した側から返還を求めた場合にも、調査に支障がなければ返還されます。

そのため、

何を提出したのか

いつ提出したのか

返還を受けたか

を記録しておくことが大切です。

税理士は提出資料の一覧を作成し、返還漏れがないよう管理することが実務上の重要な仕事になります。

コピーで対応できる場合もある

実務では、必ずしも原本を提出しなければならないとは限りません。

税務署が内容確認だけを目的としている場合には、

コピー

電子データ

PDF

などで足りるケースもあります。

原本が会社の日常業務に必要である場合には、その事情を説明し、コピーで対応できないか相談することも実務では珍しくありません。

税理士が間に入ることで、会社への影響を最小限に抑えながら調査を進めることができます。

日頃の帳簿管理が調査を左右する

帳簿を預ける場面になると、日頃の管理状態がそのまま表れます。

資料が整理されていれば、

必要書類をすぐ提出できる

不足資料が分かる

返還確認もしやすい

というメリットがあります。

一方、帳簿や契約書が散在していると、提出漏れや返還漏れが発生しやすくなります。

税務調査対策は、調査当日に始まるものではありません。

毎日の帳簿整理こそが、最も効果的な備えなのです。

結論

税務調査で帳簿や資料を税務署へ預ける「提出物件の留置き」は、国税通則法に基づいて認められた制度です。しかし、それは納税者が任意に提出した資料を一定期間預かる制度であり、犯罪捜査における差押えとは性格が大きく異なります。

税務署には預かった資料を適切に管理し、必要がなくなれば速やかに返還する義務があります。税理士は提出資料を適切に管理し、経営者は日頃から帳簿を整理しておくことが、円滑な税務調査への最良の備えとなるでしょう。

参考

近畿税理士会「税法実務講座 税理士目線の国税通則法 No.3」講義資料

国税通則法第74条の7(提出物件の留置き)

タイトルとURLをコピーしました