かつて日本人の資産運用といえば、預金や国内株式が中心でした。しかし近年は状況が大きく変わっています。
新NISAの普及によって、多くの人が米国株や全世界株へ投資するようになりました。投資信託を通じて海外資産を保有することも一般的になっています。
円安の進行や日本経済の成熟化を背景に、「資産を世界に分散する」という考え方は特別なものではなくなりました。
こうした変化は投資家だけでなく、税理士の仕事にも大きな影響を与えています。
これからの税理士は何を学び、どのような価値を提供する存在になっていくのでしょうか。
税理士の仕事は国内税務中心だった
これまで多くの税理士業務は国内完結型でした。
法人税
所得税
消費税
相続税
いずれも日本国内の取引や資産を前提としていました。
顧問先の銀行口座も国内金融機関が中心であり、株式投資も日本株が主流でした。
そのため税理士に求められる知識も、日本国内の税法や実務運用が中心でした。
しかし今後はその前提が大きく変わります。
顧客の資産は国境を越えていく
現在では一般の会社員や年金生活者でも、
米国ETF
海外株式
外国債券
海外不動産投資信託
海外証券口座
などを保有する時代になっています。
さらに富裕層になると、
海外法人
海外信託
海外生命保険
国外財産
なども資産管理の対象になります。
顧客の資産が国境を越える以上、税理士も国際的な視点を持たなければ十分な助言ができなくなります。
税務申告より税務アドバイスの価値が高まる
AIやクラウド会計の進歩によって、税務申告そのものは効率化が進んでいます。
将来的には申告書作成だけで差別化することは難しくなるでしょう。
一方で、
海外ETFの税務はどうなるのか
外国税額控除は使えるのか
為替差益はいつ課税されるのか
国外財産調書は必要なのか
といった相談は増え続けています。
顧客が本当に求めているのは入力作業ではなく判断です。
税理士の価値は「計算する人」から「判断を支援する人」へ移行していくと考えられます。
国際相続への対応が重要になる
今後特に増えると考えられるのが国際相続です。
例えば、
子どもが海外在住
親が海外資産を保有
海外証券口座がある
海外不動産を持っている
というケースは珍しくなくなっています。
この場合、
相続税
贈与税
現地法
為替換算
海外金融機関の手続き
など複数の問題が発生します。
従来の相続税申告だけでは対応できない場面が増えていくでしょう。
税理士は資産管理の総合アドバイザーになる
海外投資の拡大によって、税理士に求められる役割も変化します。
税務だけではなく、
資産形成
資産防衛
資産承継
家族信託
年金
相続
海外資産管理
を総合的に考える必要があります。
顧客は税金だけを相談したいのではありません。
人生後半の資産をどう守り、どう引き継ぐのかを相談したいのです。
その意味では税理士は「税金の専門家」から「人生設計の専門家」へ進化する可能性があります。
オンライン化で活躍の場は全国へ広がる
海外投資の相談は必ずしも対面を必要としません。
メール
Web会議
クラウド共有
電子契約
などの普及によって、税理士は所在地に縛られなくなっています。
地方にいても全国の顧客にサービスを提供できる時代です。
特に国際税務や資産税に強い税理士は、全国から相談を受ける可能性があります。
専門性が高いほど地域の壁は小さくなります。
AI時代だからこそ専門家が必要になる
生成AIの進化によって、税務情報そのものは簡単に入手できるようになりました。
しかし、
どの情報が正しいのか
自分の場合はどうなるのか
何を選択すべきなのか
を判断することは容易ではありません。
情報が増えるほど判断の価値は高まります。
AI時代だからこそ、実務経験と総合判断力を持つ税理士の存在意義はむしろ大きくなると考えられます。
人生100年時代の税理士像
人生100年時代では、
働き方
年金
医療
介護
相続
資産運用
が複雑に絡み合います。
海外投資もその一部に過ぎません。
税理士は単なる税務申告の専門家ではなく、
人生後半の資産戦略を支援する伴走者
としての役割を担うようになるでしょう。
特に高齢化が進む日本では、この需要は今後さらに拡大していくと考えられます。
結論
海外投資が当たり前になる時代には、税理士の仕事も大きく変わります。
重要になるのは申告書作成の技術だけではなく、国際税務、資産運用、相続、信託、年金などを横断的に理解し、顧客の人生設計を支援する力です。
顧客の資産が世界に広がるほど、税理士にはより高度な判断力と助言力が求められます。
これからの税理士は「税金を計算する専門家」ではなく、「人生100年時代の資産戦略アドバイザー」へ進化していくのではないでしょうか。
参考
税のしるべ 2026年6月19日
投資一任契約に基づく外貨間取引等に係る為替差損益の所得巡り最高裁が上告棄却で納税者敗訴、3人の裁判官から補足意見