日経平均株価が6万円台に到達し、日本株は再び注目の中心にあります。その一方で、市場ではいまだに「日本株は割安」という見方が根強く残っています。
しかし、この割安論は現在も成立しているのでしょうか。単純な指標だけで判断すると、むしろ状況は変わりつつあります。本稿では、日本株のバリュエーションを多角的に検証します。
従来の割安論 PBR1倍割れという象徴
日本株が割安とされてきた最大の根拠は、PBR(株価純資産倍率)の低さです。
長年、日本企業の多くは
・PBR1倍割れ
・内部留保の積み上げ
・資本効率の低さ
という特徴を持っていました。
これは
「企業価値 < 解散価値」
という状態を意味し、理論上は極めて割安とされます。
実際、海外投資家にとって日本株は「資産に対して安い市場」として認識されてきました。
変化① PBRは是正されつつある
現在、この前提は大きく変わりつつあります。
東京証券取引所の要請を背景に
・PBR1倍割れ企業の削減
・自社株買いの増加
・資本効率改善
が進んでいます。
結果として、日本株全体のPBRは上昇傾向にあり、「極端な割安状態」は徐々に解消されています。
つまり、「PBRが低いから割安」という単純なロジックは通用しなくなりつつあります。
変化② PERはむしろ上昇している
次に重要なのがPER(株価収益率)です。
足元では
・日経平均のPERは20倍前後
・米国市場と同水準、あるいは上回る局面もある
という状況です。
これは何を意味するかというと
・利益成長への期待が織り込まれている
・将来価値に対してすでにプレミアムが付いている
ということです。
つまり、日本株は「利益に対して安い市場」とは必ずしも言えなくなっています。
変化③ インフレが評価軸を変えた
バリュエーションを考える上で見落とせないのが、インフレ環境への転換です。
デフレ時代は
・利益成長が限定的
・低PERが常態
でした。
しかしインフレ環境では
・売上と利益が伸びやすい
・将来キャッシュフローの期待が高まる
ため、PERは構造的に切り上がりやすくなります。
つまり、現在のPER上昇は「割高化」ではなく、「評価基準の変化」である可能性があります。
重要視点① ROEとの関係で見るべき
バリュエーションは単独で判断するものではなく、ROE(自己資本利益率)とセットで見る必要があります。
一般的に
・ROEが高い → 高PERは正当化される
・ROEが低い → 低PERでも割安とは言えない
という関係があります。
日本企業はROEが改善しているとはいえ、依然として米国企業より低い水準にあります。
したがって
・ROE改善が継続するか
・それに見合ったPERか
が、割安性を判断する上での核心となります。
重要視点② 市場全体ではなく“分断”が進んでいる
現在の日本株市場の特徴は、「一律割安」ではなく「分断」です。
具体的には
・グローバル企業・半導体関連 → 高評価
・内需企業・低成長企業 → 低評価
という二極化が進んでいます。
この結果
・日経平均は割高に見える
・TOPIXは依然として割安に見える
という現象が起きています。
つまり、「日本株は割安か」という問い自体が、すでに単純ではなくなっています。
重要視点③ 海外投資家の視点
海外投資家が日本株を評価する際のポイントは、単なるバリュエーションではありません。
重視されるのは
・ガバナンスの改善
・資本効率
・株主還元
・成長ストーリー
です。
現在、日本株に資金が流入しているのは
「割安だから」ではなく
「変化しているから」
という側面が強くなっています。
結論 日本株は“条件付きで割安”である
以上を踏まえると、日本株の評価は次のように整理できます。
・単純な指標ではもはや割安とは言えない
・しかし構造変化を考慮すれば魅力は残る
つまり、日本株は
「無条件に割安な市場」ではなく
「変化が続く限り評価される市場」
へと変わっています。
今後の焦点は明確です。
・ROEはさらに改善するのか
・利益成長は持続するのか
・ガバナンス改革は定着するのか
これらが崩れれば、現在のバリュエーションは正当化されなくなります。
逆に言えば、これらが維持される限り、日本株は必ずしも割高ではありません。
投資判断において重要なのは、「割安かどうか」ではなく、「何が織り込まれているか」を見極めることです。
参考
・日本経済新聞 2026年4月28日 朝刊
日経平均、初の6万円
・日本経済新聞 2026年4月28日 朝刊
日経平均6万円、日本株に海外マネー定着
・日本経済新聞 2026年4月28日 朝刊
日経平均6万円、市場の見方割れる