日本の預金金利が低かった時代、多くの金融機関が外貨預金を積極的に販売してきました。
「米ドルなら年5%」
「豪ドルなら年4%」
「円預金より何十倍も高い金利」
こうした説明を聞くと、外貨預金の方が圧倒的に有利に見えるかもしれません。
実際に、日本の超低金利時代には多くの人が外貨預金に関心を持ちました。
しかし外貨預金は、単純に高金利を受け取れる商品ではありません。
そこには円預金には存在しない大きなリスクがあります。
それが為替リスクです。
今回は外貨預金の仕組みと、なぜ高金利だけで判断してはいけないのかについて考えてみます。
外貨預金とは何か
外貨預金とは、円を外国通貨に交換して預ける預金です。
代表的な通貨には、
・米ドル
・ユーロ
・豪ドル
・ニュージーランドドル
などがあります。
銀行は預かった外貨を運用し、その国の金利に応じた利息を預金者に支払います。
例えば日本の預金金利が年0.5%で、米国の預金金利が年4%であれば、米ドル預金の方が高い利息を受け取れます。
ここだけを見ると非常に魅力的に見えます。
しかし外貨預金の本当の損益は、金利だけでは決まりません。
外貨預金の最大の特徴は為替である
外貨預金で最も重要なのは金利ではなく為替です。
例えば100万円を1ドル100円の時に米ドルへ交換したとします。
すると1万ドルになります。
その後、金利を受け取りながら運用し、満期時に円へ戻します。
もしその時の為替レートが1ドル120円になっていれば、
1万ドル×120円=120万円
となり、為替差益を得ることができます。
ところが逆に1ドル80円になっていた場合、
1万ドル×80円=80万円
となり、大きな損失が発生します。
このように外貨預金の結果を左右する最大の要因は金利よりも為替変動なのです。
金利が高くても損をする理由
多くの人が誤解しやすいのはここです。
例えば年5%の金利が付く外貨預金があったとします。
一見すると魅力的です。
しかし為替が10%円高になればどうでしょうか。
金利で5%増えても、為替で10%下落すれば全体では5%の損失になります。
つまり、
高金利=利益
ではありません。
実際には、
金利収入+為替差損益
で最終的な結果が決まります。
外貨預金は預金という名前が付いていますが、その実態は為替投資の要素を強く持つ商品なのです。
円安の時ほど注意が必要
外貨預金への関心は円安局面で高まる傾向があります。
ニュースで円安が続くと、
「今後も円安が進むかもしれない」
と考える人が増えるからです。
しかし投資の世界では、多くの人が注目し始めた時には既に相場が大きく動いていることも少なくありません。
過去を振り返ると、
・1ドル80円台
・1ドル100円台
・1ドル150円台
など、大きな変動が繰り返されてきました。
将来の為替相場を正確に予測することは、専門家でも困難です。
だからこそ、円安だから買う、円高だから売るという単純な判断は危険なのです。
見落とされやすい為替手数料
外貨預金にはもう一つ注意点があります。
それが為替手数料です。
円を外貨へ交換する時と、外貨を円へ戻す時には手数料が発生します。
例えば、
買う時に1ドルあたり1円
売る時に1ドルあたり1円
の手数料がかかれば、往復で2円のコストになります。
短期間で運用した場合、せっかく受け取った利息が手数料で消えてしまうこともあります。
高金利ばかりが注目されますが、実際には手数料も重要な判断材料です。
預金保険制度の対象外である
円預金と大きく異なる点として、外貨預金は預金保険制度の対象外です。
通常の円預金であれば、金融機関が破綻した場合でも一定額までは保護されます。
しかし外貨預金はその対象ではありません。
つまり、
・為替リスク
・金融機関リスク
の両方を負うことになります。
「預金」という名称から安全な商品だと考えてしまう人もいますが、円預金とは性格が大きく異なる商品です。
外貨預金は悪い商品なのか
もちろん外貨預金そのものが悪い商品というわけではありません。
例えば、
・将来海外旅行で使う予定がある
・海外留学資金を準備している
・資産を複数通貨に分散したい
といった目的がある場合には有効な選択肢になり得ます。
問題なのは、
「高金利だから」
という理由だけで契約することです。
金融商品の本質を理解せずに購入すると、思わぬ損失に驚くことになります。
人生100年時代の外貨との付き合い方
人生100年時代では資産を長期間にわたり管理していかなければなりません。
そのためには、
・円資産
・外貨資産
・株式
・債券
をバランス良く保有する考え方も重要になります。
外貨預金は資産全体の一部として利用するのであれば有効な場合があります。
しかし老後資金の大半を外貨預金に集中させることは慎重に考えるべきでしょう。
高金利に魅力を感じる気持ちは自然ですが、まず理解すべきは為替リスクです。
結論
外貨預金は高い金利が魅力ですが、その実態は金利商品というより為替商品の側面を強く持っています。
最終的な利益を左右するのは金利ではなく、為替変動であることも少なくありません。
また、為替手数料や預金保険制度の対象外であることなど、円預金にはない特徴もあります。
人生100年時代の資産形成では、「金利が高いから得」という単純な判断ではなく、「どのようなリスクを負うのか」を理解することが大切です。
高金利の魅力を見る前に、その裏にある為替リスクを見ることこそが、金融商品と上手に付き合う第一歩なのではないでしょうか。
参考
金融庁「外貨預金に関する注意喚起」
全国銀行協会「外貨預金の基礎知識」
日本銀行「為替相場と金融市場に関する公表資料」
日本経済新聞 各種金融商品関連記事