企業では日々多くの書類が作成されます。
帳簿、請求書、契約書、労務書類、会議資料など、その種類は非常に多く、保存年限も法律によって異なります。
しかし実務では「どの書類を何年保存すればよいのか」が曖昧なまま管理されているケースも少なくありません。
保存年限を正しく理解していないと、必要な書類を誤って廃棄してしまう可能性があります。また逆に、不要な書類を長期間保管し続けることで、保管コストや情報管理リスクが高まることもあります。
そこで本稿では、企業の文書保存年限を実務的な視点から整理します。
文書保存は三つの分野に分けて考える
企業の文書保存は、大きく次の三つの分野に分類すると整理しやすくなります。
経理・税務関係
人事・労務関係
総務・会社法関係
それぞれ保存年限の根拠となる法律が異なるため、保存期間にも違いがあります。
経理・税務関係の保存年限
経理・税務関係の書類は、企業の文書の中でも最も重要なものの一つです。
主な保存期間は次のとおりです。
10年保存
計算書類
会計帳簿
株式台帳など
これらは会社法に基づき保存が求められる重要な書類です。企業の財務状況を示す基本資料であるため、長期間の保存が必要とされています。
7年保存
仕訳帳
現金出納帳
固定資産台帳
請求書
領収書
契約書
注文書
見積書
これらは税務申告の根拠となる帳簿や証憑書類です。法人税法では原則として7年間保存することが求められています。
なお、欠損金が生じた事業年度については、帳簿書類の保存期間が10年になる場合があります。
人事・労務関係の保存年限
労務関係の書類にも保存義務があります。
労働基準法などの法律に基づき保存年限が定められています。
代表的なものは次のとおりです。
5年保存
労働者名簿
賃金台帳
雇入れ・解雇に関する書類
労働時間記録
これらは労働条件や賃金の支払い状況を確認するための重要な書類です。
また労務関係の書類は、労働トラブルが発生した場合の証拠資料にもなります。そのため企業によっては法定期間より長く保存することもあります。
総務・会社法関係の保存年限
総務関係の書類には、会社の基本情報や意思決定に関する重要な資料が含まれます。
主な保存期間は次のとおりです。
永久保存
定款
株主名簿
登記関係書類
知的財産関係書類
社内規程
これらは企業の基本情報を示す重要文書であるため、永久保存とされることが一般的です。
10年保存
株主総会議事録
取締役会議事録
重要会議の記録
満期または解約された契約書
これらは企業の意思決定の記録として重要な資料です。
保存年限は企業ルールとして整理する
実務では、個々の法律を確認しながら書類を管理することは容易ではありません。
そのため多くの企業では、文書保存を次のような区分で整理しています。
永久保存
10年保存
7年保存
5年保存
3年保存
このような保存区分を社内ルールとして定めることで、文書管理が整理されます。
また保存期間を設定する際には、次のような視点も重要です。
訴訟リスク
製品責任
内部監査
経営資料としての価値
法定保存期間は最低限の基準であるため、企業の判断で保存期間を延長することもあります。
文書廃棄のルールも重要
文書管理では保存だけでなく、廃棄のルールも重要です。
保存期間が終了した文書をそのまま保管し続けると、次のような問題が生じます。
保管スペースの増加
管理コストの増大
情報漏えいリスク
そのため企業では、保存期間が終了した文書を定期的に廃棄する仕組みを整備する必要があります。
廃棄の際には次の点に注意します。
廃棄対象の再確認
機密情報の漏えい防止
適切な処理方法の選択
シュレッダー処理や溶解処理など、文書の内容に応じた方法を選択することが重要になります。
結論
企業の文書保存は、法令遵守とリスク管理の観点から非常に重要な業務です。
文書保存の実務では
経理・税務関係
人事・労務関係
総務・会社法関係
の三つの分野に分けて整理すると理解しやすくなります。
また保存年限は
永久
10年
7年
5年
といった区分で社内ルールを整備することで、文書管理を効率化することができます。
適切な保存ルールと廃棄ルールを整備することが、企業の文書管理の基盤となります。
次回は、企業の文書管理を実務でどのように設計するかについて整理します。
参考
日本実業出版社
企業実務2026年3月号付録
安田大
2026年版 帳票・書類の法定保存年限と電子保存の実務