格差という言葉を聞くと、多くの人は所得格差や資産格差を思い浮かべます。
確かにお金の差は人生に大きな影響を与えます。
しかし人生100年時代を迎えるこれからの日本では、別の格差が深刻化する可能性があります。
それが「移動格差」です。
移動できる人と移動できない人。
自由に外出できる人と外出できない人。
この差は単なる交通の問題ではなく、医療、介護、買い物、就労、人間関係など人生全体に影響を及ぼします。
今回は、移動格差という新しい社会課題について考えてみたいと思います。
移動は生活の土台である
私たちは普段、移動を当たり前のものと考えています。
病院へ行く。
買い物をする。
仕事へ通う。
友人と会う。
趣味を楽しむ。
これらはすべて移動によって支えられています。
移動できなくなると、生活の選択肢そのものが失われます。
人生100年時代では、移動能力が生活の質を左右する重要な要素になるのです。
地方で進む交通インフラの縮小
人口減少が進む地域では、公共交通機関の維持が難しくなっています。
利用者の減少により、
・路線バスの廃止
・鉄道の減便
・タクシー事業者の撤退
が各地で起きています。
一方で高齢者人口は増えています。
車を運転できなくなったとき、代替手段がない地域も少なくありません。
移動手段を失うことは、その地域で暮らし続けることが難しくなることを意味します。
医療格差の背景にある移動格差
医療サービスそのものは全国に存在しています。
しかし利用できるかどうかは別問題です。
通院手段がなければ病院へ行けません。
専門医が遠方にしかいなければ受診も困難になります。
結果として、
受診を控える。
治療を中断する。
重症化する。
という問題が生じます。
医療格差の一部は、実は移動格差によって生まれているのです。
買い物難民の増加
高齢者の生活を考えるうえで、買い物の問題も重要です。
地方ではスーパーの閉店が相次いでいます。
近くに店舗がなくても、車があれば問題ありません。
しかし運転できなくなると状況は変わります。
食料品や日用品を購入すること自体が困難になります。
いわゆる「買い物難民」の問題です。
これは単なる利便性の問題ではなく、生活そのものに関わる課題です。
社会的孤立を生み出す移動格差
移動できなくなると、人との交流も減少します。
地域活動への参加。
趣味の集まり。
友人との再会。
家族との交流。
こうした機会が少なくなると孤立が進みます。
高齢社会では孤独や孤立が大きな課題となっていますが、その背景には移動手段の不足が存在しています。
移動格差は人間関係の格差にもつながるのです。
デジタル格差との関係
今後はオンライン化がさらに進むでしょう。
行政手続き。
買い物。
医療相談。
金融取引。
多くのことが自宅でできるようになります。
しかし、すべてをオンラインで完結できるわけではありません。
また、デジタル技術を使いこなせる人とそうでない人の差もあります。
将来は、
移動格差
と
デジタル格差
が重なり合う可能性があります。
自動運転は解決策になるのか
近年期待されているのが自動運転です。
高齢者が運転能力に依存せず移動できるようになれば、
・通院
・買い物
・交流
を維持しやすくなります。
また地域交通の運転手不足解消にも役立つ可能性があります。
ただし技術だけで問題は解決しません。
利用料金や地域インフラ、制度整備も必要になります。
共生社会に必要な視点
共生社会とは、誰もが地域で暮らし続けられる社会です。
そのためには、
医療があること
介護があること
だけでは十分ではありません。
それらへアクセスできることが重要です。
つまり共生社会の実現には移動の自由が欠かせないのです。
移動は社会参加の前提条件ともいえます。
2040年の格差は何か
これまでの格差は、
学歴格差
所得格差
資産格差
が中心でした。
しかし2040年には、
「自由に移動できるかどうか」
が人生の選択肢を大きく左右する可能性があります。
どこに住むか。
どこで医療を受けるか。
どのような人間関係を築くか。
そのすべてが移動能力と関係しています。
結論
人生100年時代において、移動格差は新しい社会課題になる可能性があります。
移動できる人は医療や買い物、人との交流など多くの機会を維持できます。
一方で移動できない人は、生活の選択肢そのものが狭まっていきます。
今後の社会保障は、年金や医療、介護だけではなく、「移動をどう支えるか」という視点が重要になるでしょう。
人生100年時代に必要なのは長寿社会を実現することだけではありません。
誰もが自由に移動し、社会とのつながりを持ちながら暮らせる地域社会を実現することです。
移動格差の解消は、これからの共生社会を考えるうえで避けて通れないテーマなのではないでしょうか。
参考
内閣府 高齢社会白書
国土交通省 地域公共交通政策資料
総務省 地域社会に関する統計資料
厚生労働省 地域共生社会に関する検討会資料
日本経済新聞 高齢社会・地域交通・地方創生関連特集記事各種