事業承継税制100%猶予の落とし穴とは何か 制度活用編

税理士
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事業承継税制の特例措置では、一定の要件を満たすことで非上場株式に係る贈与税や相続税の納税が100%猶予されます。

この数字だけを見ると、多くの経営者は「使わない理由がない」と考えるかもしれません。

しかし、税理士として実務に携わる立場から見ると、事業承継税制は決して万能な制度ではありません。

確かに税負担を大幅に軽減できる制度ですが、その一方で長期間にわたり守らなければならない条件も存在します。

制度のメリットだけでなく、リスクや注意点も理解したうえで判断することが重要です。

100%猶予は免除ではない

まず誤解されやすい点があります。

それは「100%猶予」と「100%免除」は違うということです。

事業承継税制は税金がなくなる制度ではありません。

あくまでも納税を猶予する制度です。

一定の要件を満たし続ければ結果的に納税が不要になる場合もありますが、途中で要件を満たせなくなれば猶予が打ち切られ、税額の納付が必要になることがあります。

制度を利用した瞬間に安心できるわけではありません。

むしろ利用後の管理が重要になります。

後継者選びが最大のポイント

事業承継税制の成否は後継者で決まります。

制度そのものは優れていても、後継者が経営者として成長できなければ意味がありません。

経営者の中には、

「息子だから」

「親族だから」

という理由だけで後継者を決めるケースがあります。

しかし会社経営は血縁だけでは成り立ちません。

従業員や取引先から信頼される人物であることが重要です。

税制よりも後継者選びの方がはるかに難しく、重要なテーマなのです。

長期管理という負担

事業承継税制を利用すると、税務署や都道府県への報告義務が継続します。

制度利用後も継続的な管理が必要になります。

経営者の中には、

「申告が終われば完了」

と思っている方もいます。

しかし実際にはそこからがスタートです。

長期間にわたる管理体制がなければ制度を維持することはできません。

将来の担当税理士が変わることもあります。

後継者自身が制度を理解しておくことも必要です。

株価上昇という意外なリスク

会社の業績が伸びることは本来喜ばしいことです。

しかし事業承継の場面では別の側面もあります。

株価が大幅に上昇すると、将来の相続税負担も大きくなります。

事業承継税制を利用していない場合はもちろん、利用している場合でも承継計画全体を見直す必要が出てくることがあります。

承継は一度決めたら終わりではありません。

会社の成長に合わせて見直し続けることが大切です。

制度ありきで考えない

事業承継税制を検討する際に陥りやすいのが、

「制度を使うこと」

が目的になってしまうことです。

本来の目的は会社を存続させることです。

制度はそのための手段にすぎません。

会社によっては、

自社株対策を行う

種類株式を活用する

持株会社を活用する

M&Aを検討する

など、他の選択肢が適している場合もあります。

事業承継税制だけが正解とは限らないのです。

税理士が確認すべき視点

税理士が経営者から相談を受けた際には、

税額がいくら減るか

だけを説明してはいけません。

むしろ重要なのは、

後継者は決まっているか

経営権は安定しているか

金融機関は納得しているか

家族間の合意はあるか

将来の経営計画はあるか

という点です。

事業承継税制は税務制度ですが、実際には経営そのものを考える制度でもあります。

税理士には経営的視点からの助言が求められる時代になっています。

成功する会社の共通点

事業承継に成功する会社には共通点があります。

それは準備が早いことです。

成功する経営者ほど、

60代で考え始め、

70代で引き継ぎ、

その後も後見役として支援する

という流れを作っています。

一方で失敗するケースの多くは、

「まだ大丈夫」

という先送りです。

事業承継は準備期間が長いほど成功確率が高くなります。

結論

事業承継税制の100%猶予は非常に魅力的な制度です。

しかし、その数字だけを見て判断するのは危険です。

本当に重要なのは税金ではなく、会社の未来です。

後継者育成、経営権の承継、家族の合意、取引先との信頼関係など、多くの要素がそろって初めて事業承継は成功します。

事業承継税制は強力な支援制度ですが、それを活かせるかどうかは経営者の準備と決断にかかっています。

制度を使うことを目的にするのではなく、会社を次世代へつなぐための経営戦略として活用することが重要なのです。

参考

令和8年度税制改正(中小企業・小規模事業者関係)の主な内容 中小企業庁財務課 令和8年5月29日

所長のミカタ 2026年6月20日閲覧

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