税務調査は、調査官が会社を訪問して帳簿を確認する時代から、オンラインツールを活用して必要な資料を確認する時代へと変わり始めています。
国税庁では、インターネットメールやWeb会議システム、オンラインストレージなどを活用した税務調査を順次拡大しています。
この変化は、単に調査方法が変わるというだけではありません。企業の情報管理体制や内部統制そのものを見直すきっかけにもなります。
今回は、オンライン税務調査時代に企業が見直すべき情報管理体制について考えてみます。
情報管理は経営管理そのものである
企業には日々、多くの情報が蓄積されています。
会計データ
請求書
契約書
見積書
領収書
メール
社内稟議書
取引先とのやり取り
以前は紙で保管されることが多かったこれらの情報も、現在ではほとんどが電子データとなっています。
つまり、情報管理とは単なる書類整理ではなく、会社の経営基盤を支える重要な業務になっているのです。
オンライン税務調査では、その管理状況が企業の信頼性にも直結します。
必要な資料をすぐに取り出せる仕組みをつくる
税務調査では、調査官からさまざまな資料の提出を求められます。
その際、
「どこに保存したか分からない」
「担当者しか探せない」
「最新版が見つからない」
という状態では、調査への対応が遅れるだけでなく、社内管理体制そのものに疑問を持たれる可能性があります。
重要なのは、誰が担当しても必要な資料を迅速に取り出せる仕組みを整備することです。
フォルダ構成やファイル名の付け方を統一し、検索しやすい環境を整えることは、日常業務の効率化にもつながります。
属人化をなくすことが内部統制の第一歩
中小企業では、
「この資料は○○さんしか分からない」
というケースが少なくありません。
しかし、担当者が休職や退職をした場合、その情報が失われてしまう危険があります。
オンライン税務調査では、限られた時間で資料を提出する必要があるため、属人化は大きなリスクになります。
資料の保管場所や管理方法を標準化し、複数の担当者が対応できる体制を整えることが重要です。
これは税務調査だけでなく、事業継続計画(BCP)の観点からも有効な取り組みです。
メールも重要な管理対象になる
オンライン税務調査では、メールによる資料提出や連絡が行われる場面が増えていきます。
そのため、
重要なメールを削除してしまう
担当者だけが保存している
退職者のメールが確認できない
といった状況は避けなければなりません。
メールは単なる連絡手段ではなく、取引内容や契約経緯を示す重要な証拠となる場合があります。
保存期間や管理方法を社内ルールとして明確にし、必要なときに確認できる体制を整えることが求められます。
クラウド活用で情報共有を進める
クラウドサービスを活用することで、資料の共有や管理は格段に効率化できます。
最新の資料を一元管理できるため、重複保存や古いデータの使用を防ぐことができます。
また、税理士との情報共有もスムーズになり、税務調査への対応力が向上します。
ただし、クラウドを利用する際には、アクセス権限の設定やパスワード管理、多要素認証などのセキュリティ対策も欠かせません。
利便性と安全性の両立が、これからの情報管理には必要です。
日頃の整理が調査対応力を高める
税務調査は、突然始まるものではありません。
しかし、通知を受けてから慌てて資料を整理しても十分な対応はできません。
日頃から情報を整理し、必要な資料をすぐに提示できる状態を維持することが最も重要です。
毎月の試算表を確認する習慣や、電子データの整理を定期的に行うことで、税務調査だけでなく経営判断のスピードも向上します。
情報整理は、企業の競争力を高める投資でもあるのです。
税理士と一緒に情報管理体制を見直す
税理士は税務申告だけを支援する存在ではありません。
近年では、電子帳簿保存法への対応やクラウド会計の導入支援、情報管理体制の整備など、企業のDXを支援する役割も期待されています。
オンライン税務調査が一般化する時代だからこそ、税理士と定期的に情報管理体制を見直し、改善を重ねることが重要になります。
「調査に対応できる会社」を目指すことは、「経営の見える化」ができる会社を目指すことでもあります。
結論
オンライン税務調査の普及は、企業に新たな情報管理のあり方を求めています。
資料を電子化するだけでは十分ではありません。
必要な情報を迅速に取り出せる仕組み、属人化を防ぐ管理体制、クラウドを活用した安全な情報共有など、内部統制の強化がこれまで以上に重要になります。
税務調査への備えは、企業経営の基盤づくりでもあります。
この機会に、自社の情報管理体制を見直し、変化する時代に対応できる強い組織づくりを進めてみてはいかがでしょうか。
参考
税理士界 令和8年6月15日号
税務調査等におけるオンラインツールの利用について 特別寄稿 国税庁課税総括課